営業で身につく、顧客の要望を聞き取って提案する力は、業界を問わず通用します。そのため、別の業界へ移る転職も比較的決まりやすいといえるでしょう。一方、営業以外の職種へ移る場合は、新しい仕事の知識を覚える準備が要ります。ここでは、営業経験者の主な転職先と会社の選び方、転職理由や自己PRの伝え方を解説します。
営業からの転職は厳しい?
営業は多くの企業が募集しているため、他社や他業界の営業へ移る転職や、未経験から営業を目指す転職は比較的決まりやすいです。一方、営業から営業以外の職種へ移る場合は一から知識を覚えるなどの準備が必要です。企業が見る評価基準は、営業経験の有無や年代によって変わります。
営業が転職しやすい理由
営業は会社の売上をつくる部門のため、多くの会社は景気がよいときは営業を増やし、景気が悪いときも抜けた人を補います。顧客の要望を聞き取って提案し、目標に向けて動く力は業界を越えて使えるため、営業経験者は他社でも評価されます。
営業の仕事には就くために要る資格がほとんどなく、商品や業界の知識は入社後に覚えられるため、企業は営業が未経験の人も採用の対象にします。ただし、応募が集まる求人では業界や商品の知識を持つ営業経験者が優先され、未経験の人が競り負ける場面もあります。
年代別に求められること
営業の募集は幅広い年代に出ていて、年齢だけを理由に応募できなくなるわけではありません。
20代の応募者は、企業からスキルよりも伸びしろや意欲を見られ、営業が未経験の人も面接での受け答えで評価されます。
30代以降の営業経験者は、具体的な実績と別の会社でも同じ成果を出せるかを見られます。特定業界の知識や部下を持った経験があれば高く評価され、年収アップにつながりやすいです。一方、30代の未経験者は、人と交渉や調整をしてきた経験を求められます。40代以上の応募者は、人と交渉してきた経験に加えて、マネジメントの経験を求められることが多く、20〜30代より採用のハードルが上がります。
営業経験者の主な転職先
営業経験者の転職先は、同業他社の営業、他業界の営業、営業以外の職種という3つの方向に分けられます。どの方向へ移るかによって、選考の面接で説明を求められる点やアピールすべき強みが変わります。
同業他社・他業界の営業へ移る場合
同業他社の営業へ移る場合は、同じ種類の商品を扱う中で、なぜ現在の会社を辞めるのか、そして応募先の企業と何が違うのかを面接で説明することが求められます。
他業界の営業へ移る場合は、営業職のまま扱う商材や顧客の業界を変えることになります。面接では、業界が変わっても使える強みを言葉にして伝えます。顧客の要望や課題を引き出すヒアリング、関係部署との社内の調整、複数の案件を並行して進める管理といった経験が強みになります。また、応募先の商材・顧客・営業手法が現在の仕事と近い企業を選ぶほど、営業経験者としてのこれまでの実績やスキルがそのまま評価されやすくなります。
営業から事務など営業以外の職種へ
営業の経験を生かしやすい職種には、次のような選択肢があります。
- 営業事務は、見積書や受発注書類の作成、電話やメールの対応で営業担当者を支える仕事です。商品の知識や顧客とのやり取りの経験が生きます
- 営業企画やマーケティングは、市場や顧客を分析して売れる仕組みや営業の戦略を考える仕事です。売るために工夫してきた経験と、顧客や市場の感覚が生きます
- カスタマーサクセスは、商品を買った顧客が使いこなして使い続けられるよう支える仕事で、IT(SaaS)の会社に多く見られます。営業での提案と顧客とのやり取りの経験が生きます
- 人事の採用担当は、応募者に自社のよさを伝え、社内の各部署と調整しながら採用を進める仕事です。会社を売り込む力と社内の調整の経験が生きます
- 広報は、自社や自社の商品の魅力を社内外へ発信する仕事です。商品への理解と人との信頼づくりの経験が生きます
- コンサルタントは、顧客の課題に対して解決策を提案し助言する仕事です。ヒアリングと提案の経験が生きます
営業以外の職種へ移る際は、これまで働いてきた業界の中で職種を変えると、培った業界知識を強みとして面接でアピールできます。ただし、マーケティングなら基礎知識、採用なら採用実務、カスタマーサクセスなら商品の具体的な使い方など、新しい業務知識を一から覚える必要があります。
事務職へ移ればノルマこそなくなりますが、書類を正確に仕上げるといった別の成果を求められます。顧客とのやり取りに疲れて営業以外の職種へ移った場合でも、移った先では社内の調整や合意づくりのように人とのやり取りが多く求められます。また、営業以外の職種では売上のような数字で成果が見えにくいため、努力が評価や昇給に表れにくいと感じることがあります。未経験の職種へ移ると、会社によっては年収が下がる場合がある点も理解しておきましょう。
営業の種類と会社の選び方
営業の仕事は、扱う商材、相手にする顧客、営業の手法によって仕事の中身が大きく違います。
商材・顧客・営業手法による違い
| 区分 | 種類 | 仕事の特徴 |
|---|---|---|
| 商材 | 有形商材 | 自動車や家電など形のある商品を扱い、実物を見せながら提案する |
| 商材 | 無形商材 | 保険やITなど形のないサービスを扱い、顧客の課題を聞き出して解決策を提案する |
| 顧客 | 法人営業 | 企業や団体を相手にし、取引額が大きく契約までに時間をかけて関係を築く |
| 顧客 | 個人営業 | 一般消費者を相手にし、意思決定が早く短期間で成果を求められやすい |
| 営業手法 | 新規開拓 | 取引のない顧客へ電話や訪問で働きかけ、関係を自ら切り開く |
| 営業手法 | ルート営業 | すでに取引のある顧客を担当し、関係を保ちながら追加提案やフォローを行う |
| 営業手法 | 反響営業 | 広告や資料請求をきっかけに問い合わせてきた顧客に対応する |
| 営業手法 | インサイドセールス | 電話やメールで見込み客に働きかけて商談の約束を取り付ける |
| 営業手法 | フィールドセールス | インサイドセールスから引き継いだ見込み客を訪問し、商談を進める |
自分の好みや得意なことと合わない商材や営業手法の会社に入ると、商品の魅力を伝えにくく、成果を出しにくくなります。一般に、自ら相手を切り開くのが得意な人には新規開拓が合い、時間をかけて関係を築くのが得意な人にはルート営業が合います。
同じ営業であっても、社風や仕事の進め方、働く時間は会社や業界によって違います。顧客の都合に合わせて夕方以降や土日の対応が必要になる会社もあります。応募する人は、その会社の社員や知人の話、口コミを調べるほか、選考の場で人事担当者に質問して実態をつかめます。
未経験から営業に転職しやすい業界
未経験の採用が多い業界には、人材、保険、不動産、IT、広告があります。人材業界の営業は企業へ求人や派遣を提案する仕事で、商材が絞られており仕事を覚えやすいとされます。保険業界の営業は主に個人へ無形商材を提案し、多くの会社が研修や資格取得の支援を用意しています。不動産業界の営業は住宅の売買や仲介といった有形商材を扱い、成果が給与に反映されやすいです。IT業界の営業はソフトウェアなどを提案し、専門知識は入社後の研修で身につけられる会社が多いです。広告業界の営業は広告の提案に加え、制作の進行管理も担います。
なお、宅地建物取引士は不動産の営業で、ファイナンシャルプランナー(FP)は金融や保険の営業で、知識の証明になります。
営業の転職理由と自己PR・職務経歴書
営業経験者の選考では、誰を相手に何をどう売り、どれだけの成果を出したかを書類や面接で確認されます。
営業の転職理由の伝え方
営業経験者が転職を考えるきっかけには、ノルマや売ることへの違和感、将来への不安があります。不満をそのまま面接で伝えると、面接官に早期退職を懸念されるため、次の会社で何をしたいかに言い換えます。「営業をやりたくない」と感じる人は、やってみたい仕事や理想とする働き方を書き出してみると、面接で伝える転職理由とともに、応募先を選ぶ基準が定まります。
未経験から営業を目指す人は、応募先のサービスを使った経験など、自分の体験から志望理由を話すと伝わりやすくなります。
営業経験の自己PRと職務経歴書
営業経験者の職務経歴書には、法人営業か個人営業か、新規開拓かルート営業か、有形商材か無形商材かを明記します。実績は契約件数や達成率、順位を数字で示し、成果を出す工夫まで書くと再現性を伝えられます。営業以外の職種へ移る人は、マーケティングなら顧客の声を分析に生かせるなど、営業の経験がどう生きるかを具体的な場面とともに記載します。
未経験から営業を目指す人は、販売での要望把握や事務でのミス削減など、前の仕事の経験を営業の力に読み替えて伝えます。応募する業界の知識は、営業が未経験でも強みとして伝えられます。






























