
ドラッグストアのランキングや企業ごとの競争力、業界の動向が気になっていませんか?
2019年度のドラッグストア業界の市場規模は約7兆6,859億円で、2007年以降右肩上がりが続いています。
また、2020年は新型コロナウイルスの影響でマスクや消毒液、トイレットペーパーが売れたこともあり、好調に推移しています。
企業ごとのランキング上位5位は以下の通りです。
本記事では、ドラッグストアの売上ランキングや各社の事業戦略、また平均年収や店舗数などのランキングについて解説します。
- ドラッグストア売上高ランキング|業界1位はウエルシア
- ドラッグストア店舗数ランキング
- ドラッグストア平均年収ランキング
- ドラッグストア平均年齢ランキング
- ドラッグストア従業員数ランキング
- ドラッグストア業界の今後の動向・最新ニュース
全て読めば、ドラッグストアのランキングや業界の動きについて詳しく理解できるでしょう。
1.ドラッグストア売上高ランキング|業界1位はウエルシア
まず初めに、ドラッグストアの売上高を、主要23社に絞ってランキング形式にまとめました。
ランキングは以下の通りです。
企業名 | 売上高(億円) | シェア | |
1位 | ウエルシアHD | 8,682 | 12.64% |
2位 | ツルハHD | 8,410 | 12.25% |
3位 | コスモス薬品 | 6,844 | 9.97% |
4位 | サンドラッグ | 6,177 | 8.99% |
5位 | マツモトキヨシHD | 5,905 | 8.60% |
6位 | スギHD | 5,419 | 7.89% |
7位 | ココカラファイン | 4,038 | 5.88% |
8位 | クリエイトSDHD | 3,195 | 4.65% |
9位 | クスリのアオキHD | 3,001 | 4.37% |
10位 | アインHD | 2,926 | 4.26% |
11位 | カワチ薬品 | 2,703 | 3.94% |
12位 | 日本調剤 | 2,685 | 3.91% |
13位 | クオールHD | 1,654 | 2.41% |
14位 | キリン堂HD | 1,332 | 1.94% |
15位 | GenkyDrugStores | 1,236 | 1.80% |
16位 | 薬王堂HD | 1,020 | 1.49% |
17位 | メディカルシステムネットワーク ※ | 996 | 1.45% |
18位 | サツドラHD | 893 | 1.30% |
19位 | ファーマライズHD | 510 | 0.74% |
20位 | トーカイ ※ | 450 | 0.66% |
21位 | メディカル一光 | 320 | 0.47% |
22位 | ファルコHD ※ | 170 | 0.25% |
23位 | 札幌臨床検査センター ※ | 108 | 0.16% |
※メディカルシステムネットワークは医薬品ネットワーク事業、トーカイは調剤サービス事業、ファルコHDは調剤薬局事業、札幌臨床検査センターは調剤薬局事業の売上高を表しています。
上位5社の売上の詳細や動向を個別でまとめたので、気になる会社があればご確認ください。
順に解説します。
1位 ウエルシアホールディングス
ウエルシアホールディングスは、調剤薬局併設型ドラッグストアチェーンの運営を行う企業の持株会社です。
傘下にはウエルシア薬局・シミズ薬品・丸大サクラヰ薬局・金光薬品などがあります。
2019年度の品目別売上は、新型コロナウイルスの影響による医薬品(マスク・消毒品関連)が大幅に伸びただけでなく、増税度対策の強化や巣ごもり策によって食品が前期比111.0%の成長を見せました。
今後の取り組みとしては、毎期120店前後の新規出店や調剤併設型の推進、ストーリー性のあるプライベートブランドの商品開発があげられます。
また、ウエルシアホールディングスはESG(環境・社会・企業統治)活動にも力を入れており、2020年9月からコカ・コーラボトラーズジャパンと連携してペットボトルの店頭回収やリサイクルのプロジェクトを開始しています。
2位 ツルハホールディングス
ツルハホールディングスは、ツルハドラッグ・レデイ薬局、くすりの福太郎・ドラッグストアウォンツなどを傘下に持つ持株会社です。
2020年5月期の総売上は約8,410億円にのぼり、2019年5月期末時点からの店舗増加数は68店舗です。
新型コロナウイルスの影響では、マスクや消毒剤、ハンドソープの売上増加や巣ごもり需要といったプラスの影響が見られる一方で、インバウンド売上の消失や、外出自粛による化粧品や季節品の売上低下も発生しています。
今後の取り組みとしては、プライベートブランド「くらしリズム」の展開や、スマートフォンアプリの活用・デジタル推進があげられます。
なお、現時点でも「くらしリズム」シリーズの商品は前期比575.6%の成長を遂げており、15億円以上の売上を出しています。
3位 コスモス薬品
コスモス薬品は、九州に地盤を置いてチェーンドラッグストアの「ディスカウント ドラッグコスモス」を運営する会社です。
2020年5月期の総売上は6,844億円にのぼり、合計80店舗の新規出店をしています。
店舗数は1,058店舗と、上位2社の半分程度であるものの、小さな商圏に大きな店舗を出店して高いシェアを獲得する戦略をとっています。
新型コロナウイルスの影響で、インバウンドの売上が消失するといった問題があったものの、前年比112.0%の成長です。
今後の見通しとしては、ドミナント戦略を踏まえた新規出店があり、すでに茨城県内での初出店などを進めています。(出典:茨城新聞)
ドミナント戦略とは
小売業がチェーン展開する場合に、特定の地域に集中して出店することで、経営効率のアップや地域内のシェア拡大を狙う戦略をドミナント戦略と呼びます。
4位 サンドラッグ
サンドラッグはドラッグストアチェーン「サンドラッグ」を展開する企業で、首都圏中心ではあるものの、全国に展開しています。
2020年3月期時点で、ドラッグストア876店舗を出店しており、総売上は6,177億円です。
今後の取り組みとしては、高齢化に伴う健康志向の普及を踏まえた調剤併設店舗の拡充や健康に関する事業への挑戦があります。
その他にも、新型コロナウイルスの影響に伴う生活様式の変化を意識した、通信販売の強化・免税専門店の見合わせなどを行う予定です。
すでに自社通信販売e-shop本店で新型コロナウイルスPCR検査キットの販売を行っています。(出典:流通ニュース)
5位 マツモトキヨシホールディングス
マツモトキヨシホールディングスは関東を中心として、全国に展開するドラッグストア「マツモトキヨシ」の持株会社です。
都市部への出店が多いため、業界全体の平均と比べると化粧品の比重が大きい特徴があります。
2020年3月期の売り上げは5,905億円で、前期末と比較して出店数が63店舗増加しています。
今後の重点戦略としては、デジタル化・グローバル化の更なる推進や専門領域での事業拡大が掲げられています。
実際に、デジタル化によるデータ分析を活用したプライベートブランドの拡充を進めており、2020年3月期時点でプライベートブランド商品の売上高構成比は11.4%となっています。
出典:決算説明会資料(2020年3月期)|マツモトキヨシHD
【補足】2021年10月にココカラファインと経営統合予定
マツモトキヨシは2021年10月に予定するココカラファイン(売上高7位)との経営統合に伴い、商品開発から販売戦略まで考えるMD(マーチャンダイザー)の統合を進め、両者の業績改善を見込んでいます。
具体的な改善内容は、以下の3点です。
- 仕入・契約
商品・備品・契約の優位条件の相互反映 - PB(プライベートブランド)開発
相互データの活用によるPB開発の高度化 - 販売促進
販売促進のノウハウの共有と統合によるコスト抑制
経営統合を通じて、美と健康の分野でのアジアNo.1を目指していくと発表されています。
2.ドラッグストア店舗数ランキング
ドラッグストアの店舗数をランキング形式で以下にまとめました。
1位のツルハホールディングスと2位のウエルシアホールディングスが2,000店以上出店しており接戦です。
なお、ウエルシアホールディングスは今後も新規店舗を増やす展望を示しているため、どちらが首位となるか今後に注目です。
企業名 | 店舗数 | |
1位 | ツルハHD | 2,150 |
2位 | ウエルシアHD | 2,012 |
3位 | マツモトキヨシHD | 1,717 |
4位 | ココカラファイン | 1,354 |
5位 | スギHD | 1,287 |
6位 | コスモス薬品 | 1,058 |
7位 | サンドラッグ | 876 |
8位 | クリエイトSDHD | 855 |
9位 | クスリのアオキHD | 630 |
10位 | カワチ薬品 | 339 |
3.ドラッグストア平均年収ランキング
ドラッグストアの平均年収を以下にまとめました。
企業名 | 平均年収(万円) | |
1位 | クリエイトSDHD | 1,001 |
2位 | ウエルシアHD | 796 |
3位 | クオールHD | 746 |
4位 | ファルコHD | 734 |
5位 | キリン堂HD | 734 |
6位 | マツモトキヨシHD | 703 |
7位 | ツルハHD | 666 |
8位 | ファーマライズHD | 657 |
9位 | アインHD | 652 |
10位 | ココカラファイン | 641 |
11位 | スギHD | 621 |
12位 | メディカル一光 | 568 |
13位 | メディカルシステムネットワーク | 561 |
14位 | カワチ薬品 | 548 |
15位 | 日本調剤 | 539 |
16位 | サンドラッグ | 535 |
17位 | クスリのアオキHD | 520 |
18位 | トーカイ | 510 |
19位 | コスモス薬品 | 412 |
20位 | 札幌臨床検査センター | 401 |
ホールディングスの年収はあくまでも持株会社に所属している上層部員の年収から算出された値のため注意が必要です。
例えば、クリエイトSDHDは年収1,000万円を超えていますが、これは10人に満たない役員陣の報酬にすぎません。
連結の従業員数約3,400人の平均年収が1,000万円というわけではないのです。
同様に、ウエルシアHDの平均年収は796万円ですが、これはウエルシア薬局で働いている薬剤師や販売スタッフの方々の平均年収ではありません。
4.ドラッグストア平均年齢ランキング
ドラッグストア各社の平均年齢が高い順にランキング形式でまとめました。
企業名 | 平均年齢 | |
1位 | ウエルシアHD | 57.9 |
2位 | ファルコHD | 53 |
3位 | クリエイトSDHD | 49.7 |
4位 | キリン堂HD | 47.3 |
5位 | ココカラファイン | 46.9 |
6位 | マツモトキヨシHD | 45.3 |
7位 | ファーマライズHD | 45.3 |
8位 | ツルハHD | 44.5 |
9位 | クオールHD | 44.5 |
10位 | スギHD | 43.9 |
11位 | メディカルシステムネットワーク | 40.8 |
12位 | アインHD | 40.7 |
13位 | メディカル一光 | 40.5 |
14位 | 札幌臨床検査センター | 39.7 |
15位 | トーカイ | 38.4 |
16位 | 日本調剤 | 34.9 |
17位 | クスリのアオキHD | 34.8 |
18位 | カワチ薬品 | 34.7 |
19位 | サンドラッグ | 33.9 |
20位 | コスモス薬品 | 30.1 |
従業員数が少ないホールディングスは、年配の上層部員の平均年齢を強く反映しているため、高くなっています。
5.ドラッグストア従業員数ランキング
ドラッグストアの従業員数を以下の表にまとめました。
左側が各社の従業員数で、右側が子会社も全て含めた連結の従業員数です。
企業名 | 従業員数 | 従業員数(連結) | |
1位 | コスモス薬品 | 4,345 | 4,353 |
2位 | 日本調剤 | 3,750 | 4,904 |
3位 | サンドラッグ | 3,112 | 5,241 |
4位 | カワチ薬品 | 2,381 | 2,616 |
5位 | トーカイ | 1,446 | 3,583 |
6位 | 札幌臨床検査センター | 752 | 788 |
7位 | マツモトキヨシHD | 498 | 6,431 |
8位 | メディカルシステムネットワーク | 262 | 4,387 |
9位 | ココカラファイン | 257 | 6,429 |
10位 | ツルハHD | 229 | 8,834 |
11位 | アインHD | 151 | 4,429 |
12位 | クオールHD | 50 | 5,366 |
13位 | ファーマライズHD | 35 | 1,951 |
14位 | ウエルシアHD | 24 | 10,094 |
15位 | メディカル一光 | 17 | 965 |
16位 | クスリのアオキHD | 15 | 2,417 |
17位 | クリエイトSDHD | 8 | 3,423 |
18位 | スギHD | 7 | 6,182 |
19位 | キリン堂HD | 7 | 1,754 |
20位 | ファルコHD | 2 | 1,402 |
連結の従業員数だと、売上高業界トップのウエルシアHDが10,000人以上の社員を抱えており、最大となります。
6.ドラッグストア業界の今後の動向・最新ニュース
ドラッグストア業界は、新型コロナウイルスの影響により、売上が上がった数少ない業界です。
本章では、ドラッグストア業界の今後の動向や最新ニュースについて解説します。
順に解説します。
6-1.コロナ禍のマツモトキヨシ、上位5社の中で唯一前年割れ
新型コロナウイルスによるマスクや消毒液の需要増や、巣ごもり需要などの恩恵を受けているドラッグストアですが、マツモトキヨシは減収減益となっています。
なお、売上高上位5社の中で、前年割れしているのはマツモトキヨシのみです。
前年割れの要因は、コロナウイルスの影響によるインバウンド・都市型店舗の売上低下だけでなく、前年の増税特需による相対的な売上低下も含まれています。
他の大手ドラッグストアと比べると、インバウンドの比率を戦略的に高めてきたことが裏目に出たといえます。
出典:決算説明会資料(2021年3月期第2四半期)|マツモトキヨシHD
6-2.ドラッグストア系アプリの利用増加
フラー株式会社が手掛けるアプリ分析ツール「AppApe(アップ・エイプ)」でアプリの平均利用者数を算出した結果、ドラッグストア系のアプリの利用が増加していることがわかりました。
21年1月の午前9時~午後5時の平均利用者数の増加率上位50アプリのジャンルを見ると、店舗系のアプリが7アプリと最も多い。
店舗系の増加率上位3アプリは「ウエルシアグループアプリ」(前年同月同曜日比で約4倍)、「スギ薬局」(83%増)、「ココカラファイン」(67%増)といずれもドラッグストア系だ。
マスクや衛生用品の需要が増えたことが背景にあるのだろう。
引用:日経MJ
ドラッグストア3社のアプリ利用が前年比で60%以上も増加しています。
6-3.米国では、アマゾンの参入による株価急落
米アマゾン・ドット・コムは2020年11月にオンラインで処方箋薬の注文を受け付け、自宅に配送するサービス「アマゾン・ファーマシー」を開始しました。
アマゾンプライム会員であれば、注文から二日間で無料配達を受けることが可能です。
サービスの開始に伴い、競合の激化を見越したドラッグストア株の売りが広がっています。
日本で普及したら薬局は生き残れない
出典:Twitter
なお、アマゾン・ドット・コムは2018年にオンライン薬局のピルパックを10億ドルで買収していて、その頃から処方薬販売の本格化を目指していました。
まとめ
ここまでドラッグストアのランキングや動向について解説しましたが、いかがでしたか?
ドラッグストア業界は2007年以降順調に拡大している市場で、新型コロナウイルスによる売上増加が見込まれた数少ない業界でもあります。
また、マツモトキヨシとココカラファインの経営統合やアマゾンの参入など、最新情報も多数あります。
そのため、ドラッグストアの業界動向に関心がある方は、今後の動きも注意深く確認しておくといいでしょう。