「派遣先から直接雇用を提案されたら、受けても良いのだろうか?」と考えていませんか?
直接雇用を提案されたら、雇用条件を詳細に把握しなければなりません。
また、直接雇用のメリット・デメリットを把握していないと、「直接雇用に変更した結果、余計に働きづらくなる」ことも考えられます。
そこでこの記事では、派遣会社の営業担当として働いていた私が、「直接雇用を視野に入れている派遣社員の方が知っておくべき知識」を解説します。
- 派遣先から直接雇用を提案されたら?知っておくべき注意点
- 派遣から直接雇用のメリット
- 派遣から直接雇用のデメリット
- 直接雇用の提案を受けるべき人の特徴
- 派遣から直接雇用への手続きの流れ
- 【FAQ】直接雇用に関してよくある質問と回答
すべて読めば、 派遣から直接雇用への切り替えの際、知っておくべき内容と注意点について理解できるでしょう。
目次
1.派遣先から直接雇用を提案されたら?知っておくべきこと
この章では、実際に派遣先から直接雇用を提案された場合に、困ることがないよう知っておくべきことを解説していきます。
具体的には以下の3点です。
では、それぞれ見ていきましょう。
1-1.正社員での雇用とは限らない
派遣先から直接雇用を提案された場合でも、正社員での雇用とは限りません。
事実、直接雇用後の雇用形態で、もっとも多いのは契約社員です。
出典:厚生労働省
もしも「正社員として働きたい」という希望がある方で、契約社員やパートでの直接雇用打診をされた場合は、「正社員登用制度があるかどうか」をチェックしておきましょう。
もし詳しく知りたいのであれば、過去に契約社員から正社員になった人の数を調べておくのも良いでしょう。
1-2.派遣会社への相談はしなくてもOK!紹介料も不要
派遣先企業(直接雇用予定の会社)から直接雇用への変更を依頼された場合、派遣元会社への相談、及び紹介料を支払う必要はありません。
実際に、労働者派遣法第33条でも「派遣先と派遣労働者が派遣期間終了後に雇用契約を締結することを派遣元が禁止してはならない」と定められています。
ただし、これは派遣期間満了後であることが前提です。
1-3.申し出を承諾する人は半数以下
直接雇用を打診されても、実際に承諾する人の割合は半数以下です。
ここで、業界別の「正社員として直接雇用を打診された時の対応」に関する調査結果を見てみましょう。
上記の結果から、クリエイティブ系以外の業界では「直接雇用の打診を積極的に受け入れる」と回答した人の割合が半数以下であることがわかります。
というのも、直接雇用を受け入れることには必ずしもメリットだけとは限らないからです。
実際にネット上では、直接雇用により「希望条件に合わせた自由な働きができない」「固定給により収入が減った」という声も見られます。
また、上記以外の直接雇用のメリット・デメリットは以下の通りです。
派遣から直接雇用のメリット | 派遣から直接雇用のデメリット |
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そこで次の章からは、『派遣から直接雇用のメリット・デメリット』について詳しく解説していきたいと思います。
2. 派遣から直接雇用のメリット
この章では、直接雇用のメリットについて大きく4点紹介していきます。
順に紹介します。
2-1. 月給制のため給与が安定しやすい
派遣から直接雇用に変わるメリットの1つに、月給制のため給与が安定しやすいことが挙げられます。
というのも、派遣社員は働いた分だけ増える時給制に対して、直接雇用の場合は固定月給制だからです。
また、業績悪化による派遣契約打ち止めの心配が少ないこともメリットでしょう。
ただし、月給制になった結果、労働時間があまり制限されなくなり、残業が増えることで自由な時間の確保が難しくなる場合もあります。
2-2. 給与や待遇が良くなるケースも多い
派遣から直接雇用に変わることで、給与や待遇が良くなるケースも多いです。
また、直接雇用になると月収は変わらなくても、ボーナスや手当がつき、年収が高くなることも少なくありません。
直接雇用の話をもらい、面談。所長との面談時、給与などの具体的な話を聞いてびっくり。今まで貰っていた金額と全然違って(いい意味で)かなりいいように使われていたとしみじみ実感。雇用形態が違うとこんなに違うのかと現実味が溢れました。今月から切替しました。派遣期間終了。担当の人へ感謝。
出典:Twitter
このように派遣の時と比べて大幅に給料が上がるケースもあるようです。
2-3. 福利厚生が充実する
直接雇用になると、会社の家賃補助や資格取得の補助、子育て支援などの福利厚生を受けられるようになります。
また、スキルアップのための自主学習教材や、スポーツ施設などの割引も受けられることがあります。
安心して働ける体制が整っているため、手厚い福利厚生を受けたい人は正社員が合っているでしょう。
派遣先、直接雇用社員のみインフル予防接種を会社が負担しますだと。派遣社員のほうが出社してるんだが。なんなら私毎日出社、出社、出社。もう心が疲れた。
出典:Twitter
2-4. 仕事の幅が広がる
直接雇用になると、仕事の幅が広がるケースが多いです。
これまで挑戦したことのない仕事に携わることができたり、より責任感のある仕事を任されたりすることもあります。
派遣だと契約期間の満期(3年)があるから、派遣先も長いスパンの仕事は社員にさせるようにしている。そういった仕事にも携われるようになり、仕事の幅も増え、より責任ある仕事ができるようになると思う。
出典:エン派遣
キャリアアップを考えるのであれば、直接雇用の打診を受けておくことが賢明です。
ここまで直接雇用のメリットについて説明してきました。
次の章ではデメリットについて説明していきます。
3.派遣から直接雇用のデメリット
ここでは直接雇用のデメリットについて紹介します。
直接雇用のデメリットは、大きく以下の3つです。
順に紹介します。
3-1. 勤務条件の自由度が下がる
直接雇用の場合は基本的にフルタイムになるので、派遣と比較して勤務の自由度が下がります。
例えば、「上司からの残業命令に応じる必要があること」「社内異動や転勤などの辞令も拒否できないこと」が挙げられます。
その他にも、繁忙期は自分の好きなタイミングで有給休暇を取ることは難しく、周りの社員との調整が随時必要になる場合があるでしょう。
3-2. 仕事内容が大幅に変わる
直接雇用になると、仕事内容が大幅に変わることが多いです。
そのため、失敗したときのリスクや責任は大きくなり、精神的な負担も増加する側面があります。
その他にも、任される仕事も派遣社員の業務と比べて責任が重いため、仕事を辞めづらいというデメリットもあります。
直接雇用になると、今まではやらなくてもよかった仕事をやらなければならなかったり、今までと変わる部分もあるようです。
3-3. 収入が下がってしまうこともある
直接雇用になった結果、派遣の頃よりも収入が下がってしまうことがあります。
特に、基本給に残業代があらかじめ組み込まれている場合(固定残業代込)、残業しても支給額が変わらず、働いている時間に対しての収入が見合わなってしまうでしょう。
また、そもそも直接雇用への切り替えの段階で提示される給与が、派遣の頃より低いこともあります。
そのため、直接雇用になったからといって必ずしも収入が上がるわけではないと覚えておきましょう。
3年超えたから派遣会社の直接雇用になって交通費が出るようになったけど、代わりに時給下げられて月の手取りは一緒くらい、残業したり休出したらちょっと損、ってひどくない?
出典:Twitter
このように、人によっては直接雇用に切り替えたことで、給料が下がり待遇が悪くなることもあります。
4.直接雇用の提案を受けるべき人の特徴
結論として、以下に該当する人は直接雇用の提案を受けることをおすすめします。
- 生活を安定させたい
- 今の職場環境が合っていて、できるだけ長く仕事を続けたい
- 今の職場でレベルの高い業務に挑戦したい
また、「いずれは正社員として働きたい」という方は、紹介予定派遣での就労を視野に入れておくと良いでしょう。
参考:紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、最長6ヶ月の派遣契約期間を経て、企業と労働者がお互い納得・合意すれば社員になれる、という雇用形態です。
紹介予定派遣については、『紹介予定派遣とは?メリットデメリットや普通派遣との違いを徹底解説』で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
5.派遣から直接雇用への手続きの流れ
この章では実際の手順について説明します。
実際の手順は以下のように行います。
では、それぞれ見ていきましょう。
5-1.雇用形態の切り替えは、派遣契約終了時
雇用形態の切り替えは、派遣契約終了時になります。
というのも、派遣期間中だと、派遣元事業主から債務不履行、不法行為による損害賠償を請求される恐れがあるからです。
一般的に、直接雇用の提案は派遣契約が切れる1〜3か月前にされることが多いようです。
派遣先で3年を超えて働きたい場合は自分から直接雇用への切り替えの希望を申し出ることもできます。
また、紹介予定派遣に関しては、派遣期間中でも雇用契約の締結が法律上認められています。
5-2.雇用形態、労働条件などの確認
次に雇用形態や労働条件などを確認をする必要があります。
具体的には以下の7点を重点的に確認しましょう。
- 給与
- 就業条件
- 仕事内容
- 勤務時間
- 雇用形態
- 賞与の有無
- 契約社員の場合は契約期間
特に、勤務時間、雇用形態は派遣社員だった時と大きく変わることが多いので注意しましょう。
仕事内容や福利厚生に関しても同様で、これらは基本的に契約締結後の変更ができないため、入念に確認する必要があります。
5-3. 雇用契約の締結と社会保険・雇用保険の切り替え
雇用契約の締結は口頭ではなく、書面上で契約し、契約書は必ず貰っておく必要があります。
というのも、契約期間や賃金、仕事内容に問題が合った場合、雇用契約書が無いと対処できない場合があるからです。
また、派遣期間中であっても、派遣先と契約を結ぶことは法律上問題ありません。
そのため、空白期間を作らないためにも契約期間終了までに交渉を進めておくことをおすすめします。
6.【FAQ】直接雇用に関してよくある質問と回答
直接雇用に関してよくある疑問をQ&A方式にしてまとめました。
- Q1. 直接雇用にはどのような働き方がありますか?
- Q2. 直接雇用を派遣会社には伝えるべきですか?
- Q3. キャリアアップ助成金とは何ですか?
- Q4. 派遣社員と契約社員、正社員の違いは何ですか?
- Q5. 同一労働同一賃金とは何ですか?
Q1. 直接雇用にはどのような働き方がありますか?
正社員、契約社員・嘱託社員、パートタイマー、アルバイトがあります。
雇用形態 | 定義 | 一般的な区分(1) | 一般的な区分(2) |
正社員 | 労働契約に期間の定めがない。フルタイム | 正規雇用 | 直接雇用 |
契約社員/嘱託社員 | 期間が定められている雇用契約 | 非正規雇用 | 直接雇用 |
パートタイマー | 勤務時間が正社員より短時間勤務
(主な対象:主婦層) |
非正規雇用 | 直接雇用 |
アルバイト | 曜日時間共にテンポラリーに勤務
(主な対象:学生) |
非正規雇用 | 直接雇用 |
派遣 | 派遣会社から派遣され、派遣先で就労 | 非正規雇用 | 間接雇用 |
雇用形態によってそれぞれ特徴があるので自分に適した雇用形態を選ぶようにしましょう。
Q2. 直接雇用を派遣会社には伝えるべきですか?
派遣先から直接雇用の提案を受けていることを派遣会社に伝えなくても問題はありません。
なぜなら、派遣会社を通さずに直接雇用の提案を受けることは法律上問題ないからです。
また、派遣元の企業が派遣労働者の就業を妨害することは禁止されています。
しかし、派遣元の企業と派遣先の企業は信頼によって成り立っているものなので、派遣元の企業に隠して提案を行ってくる場合、その企業や提案内容に注意する必要があります。
Q3. キャリアアップ助成金とは何ですか?
これは派遣労働者のキャリアアップを促進するために国によって作られた制度です。
派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合、企業に助成金が支給されます。
具体的には以下の通りです。
有期雇用 → 正規雇用 | 1人当たり 85.5万円<108万円>
(71.25万円<90万円>) |
無期雇用 → 正規雇用 | 1人当たり 57万円<72万円>
(49.875万円<63万円>) |
*派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用した場合
*< >内は生産性の向上が認められる場合の額( )内は大企業の額
Q4. 派遣社員と契約社員、正社員の違いは何ですか?
それぞれの雇用形態の特徴を以下にまとめました。
正社員 | 契約社員 | 派遣社員 | |
賃金 | 年給 | 月給 | 時給 |
雇用主 | 就業先 | 就業先 | 派遣社員 |
雇用形態 | 直接雇用 | 直接雇用 | 間接雇用 |
期間の定め | なし | あり(最長5年) | あり(最長3年) |
賞与 | 出る | 出る | 出ない |
サービス残業 | あり | あり | なし |
Q5. 同一労働同一賃金とは何ですか?
同一労働同一賃金とは2020年11月から施行された法令です。
正社員と非正規雇用労働者(派遣社員やパートなど)の不合理な待遇格差の解消のために厚生労働省によって出されました。
派遣社員については以下の2つのどちらかが確保されます。
- 派遣先の労働者との均等・均衡待遇
- 一定の要件※を満たす労使協定による待遇
※同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金と比べ、派遣労働者の賃金が同等以上であることなど。
同一労働同一賃金
さいごに
派遣から直接雇用についてメリット・デメリット、注意点などについて説明してきましたがいかがだったでしょうか。
この記事を読み、直接雇用の特徴を理解したうえで決定することで、あなたにとって最善の選択を行うことができます。
あなたの転職後の人生がより明るいものである事を心から祈っています。
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