精神科看護師の仕事内容とは│一般科との違いは?奥が深い精神科看護を経験者が解説

「精神科の仕事って一般科の看護師とどう違うの?」
「患者さんとのコミュニケーション以外にどんな関わりをしているの?」と考えていませんか?

精神科看護師に興味はあるけれど、仕事内容のイメージがつかない方も多いでしょう。

精神科は一般科と比べると医療行為が少ない代わりに、コミュニケーションが重視されます。また、精神科ならではの業務も多々あります。

今回は経験者である筆者が、精神科病棟での仕事内容や一般科との違いを解説します。

  1. 精神科の特徴!疾患や一般科との違い、急性期・慢性期の特徴も
  2. 【一般科と共通】看護師の仕事内容
  3. 【精神科独自】看護師の仕事内容
  4. 精神科看護師の1日のスケジュール
  5. 精神科で働くメリット
  6. 精神科で働くデメリット
  7. 精神科に向いている人

精神科での働き方にも触れているので、精神科への転職に興味がある方はぜひ参考にしてください。

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1. 精神科の特徴!疾患や一般科との違い、急性期・慢性期の特徴も

まずはじめに、精神科で看護する疾患や、一般科との違いを解説します。

1-1. 精神科で看護する疾患

以下が精神科で看護する疾患です。

  • 統合失調症
  • うつ病
  • 双極性障害(躁うつ病)
  • パーソナリティー障害
  • 強迫性障害
  • 不安障害
  • 依存症(アルコール、薬物など)
  • てんかん
  • 摂食障害
  • 睡眠障害
  • 解離性障害
  • 認知症
  • 発達障害

1つの疾患のみの患者さんもいれば、複数の疾患を持つ患者さんもいます。

1-2. 一般病棟との違いは?

精神科が一般病棟と大きく異なる特徴は以下です。

  • 入院形態が多様にある..
    一般科は患者さんが治療を希望して入院する「任意入院」のみ。精神科は、治療が必要だが患者さん本人が同意しない場合家族の同意で入院できる「医療保護入院」や、自傷他害の危険がある場合都道府県知事の命で入院できる「措置入院」もある。
  • 行動制限がある
    患者さんの病状によっては、外出できる範囲や電話、面会に制限がある。隔離室や身体拘束もこれに入る。
  • 開放病棟と閉鎖病棟がある
    日中の出入りが自由にできる開放病棟と鍵で管理されておりスタッフが開閉する閉鎖病棟がある。
  • 長期入院の患者さんも多い
    慢性的な経過をたどる患者さんや退院先がなく何十年も社会的入院を余儀なくされている患者さんもいる

では早速次章から、精神科看護師の仕事内容を解説していきます。まずは一般科と共通する仕事から見ていきましょう。

2. 【一般科と共通】看護師の仕事内容

以下は、一般科と共通する看護師の仕事内容です。

仕事内容自体は一般科と同じですが、精神科ならではの看護のポイントがあります。それらを交えて1つずつ解説していきます。

2-1. 医師の診療の補助

1つ目は、医師の診療の補助です。

一般科のような処置や診察時の介助もありますが、精神科の場合は診察時に患者さんの病棟での様子や病状を看護師としてどうとらえているかを伝えるという意味合いが強いです。

夜間睡眠が取れていないので睡眠薬を追加してほしい、精神状態が落ち着いてきたので徐々に行動制限を緩めていきたいなど、診察のタイミングで相談しながら医師と治療方針を決定していきます。

また、精神科の患者さんはコミュニケーションを苦手とする方も多いので患者さんの要望を代わりに医師に伝えることもあります。

2-2. 患者さんとのコミュニケーションをとる

2つ目は、患者さんとコミュニケーションをとることです。

精神科の看護師の仕事というと1番に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。

精神科は患者さんの心を診るため、コミュニケーションの中での精神状態の観察とアセスメントが看護師の重要な役割です。

病状によってコミュニケーションがスムーズに取れない患者さんも多いため、看護師には患者さんの思いやニーズを汲み取るような関わりが求められます。

また、患者さんの中には、隔離・拘束や無理やり薬を飲まされたなど過去の治療体験から医療者に不信感を抱いているケースや、病識がなく「入院させられた」と感じており治療に協力的でない方も少なくありません。

こうした患者さんが適切な治療を受けられるように、信頼関係を築く一歩としてコミュニケーションは非常に重要なのです。

コミュニケーションといっても患者さんと2人でじっくり話し合うことだけではありません。まずは、検温時の挨拶や声掛け、患者さんのしていることや持ち物に興味を持つなど何気ないことから始め、徐々に距離を縮めていきます。

何気ないコミュニケーションの中で、患者さんが得意なこと・好きなことを見つけて強みとしてケアに活かしていく方法を考えるのも看護師の重要な役割です。

2-3. 身体状態の観察

3つ目は、身体状態の観察です。

精神科は心を診る科ではありますが、採血や検査結果、フィジカルアセスメントから身体状態をきちんと把握することも大切です。

精神科の患者さんの中には、病状により身体の不調を看護師に適切に伝えられない方も多くいます。また、精神科薬を長期に服用していることで痛みの閾値が上がり、健康な人なら耐えられないほどの痛みでも動けてしまう患者さんもいるのです。

筆者が精神科に勤務していた頃、精神科薬を長期に服用している患者さんが、夜間に転倒してしまったことがありました。
医師に診察してもらい、痛みと歩行時の跛行は診られるものの車椅子で対応し経過観察となっていましたが、数日間のうちに患者さんの状態が悪化し移乗も困難になったため整形外科を受診することに。
レントゲンの結果、大腿骨頸部骨折が判明したということがありました。
このように、健康な人なら痛みに耐え切れないものでも精神科の患者さんは薬の服用で痛みの閾値が上がっていることにより我慢出来てしまい、疾患に気づけないというケースもあるため、普段からの身体状態の観察・アセスメントは非常に大切なのです。

患者さんの身体の不調の訴えが精神症状によるものなのか、それとも身体的な疾患が原因なのか、治療が必要なのかを客観的にアセスメントしていかなければなりません。

精神科というと精神状態にばかり目が行きがちですが、患者さんの身体状態をきちんと把握していないと重大な疾患を見逃してしまうともあります。

2-4. 与薬

4つ目は、与薬です。

精神疾患の治療において最も重要なものの1つが薬物療法なので、看護師は患者さんが確実に薬を内服できるように支援していく必要があります。

精神科の患者さんは、病識の欠如・副作用が辛い・妄想など理由は多様ですが薬を飲みたがらない患者さんも少なくありません。

薬を口にいれても吐き出してしまったり、自己管理している薬をトイレに流していたというケースもよくあるので、看護師は患者さんが薬を口に入れてから飲み込んで口腔内に残っていないかまで確認します。

内服をあまりしたがらない患者さんに対して、持続性注射剤という1回の筋肉注射で効果が2~4週持続する薬剤を導入することもあります。

また、精神科薬は病気の再発予防のためにも長期間内服し続ける必要があるので、退院後も患者さんが内服を続けられるように入院中から薬の自己管理の練習を患者さんにしてもらい指導していきます。

薬剤師と連携して指導をおこなったり、集団で指導を受ける服薬教室を開催したりしている病院もあります。

2-5. 精神科薬の副作用への対応

5つ目は精神科薬の副作用への対応です。

以下に精神科薬の代表的な副作用と看護師がおこなう対応をまとめました。

  • 便秘…
    下剤の調整、浣腸、イレウス予防のための腹部の観察
  • ふらつき…
    歩行介助、必要時車椅子や歩行器を使用してもらう、薬剤調整を依頼
  • 嚥下機能の低下…
    食形態の変更、食事時の観察、患者さんへよく噛むよう指導
  • パーキンソン様症状…
    頓服薬の与薬、医師への薬剤調整を依頼
  • 高血糖…
    血糖値のモニタリング、処方変更の依頼
  • 食欲増進・体重増加…
    食事量の調整、処方変更の依頼、体重を毎日図ってもらい意識付けをする
  • 日中の眠気…
    作業療法への参加を促し規則正しい生活リズムがつくよう関わる、夜間休息が取れるように薬剤調整を依頼する
  • 口渇感…
    うがいや口腔ケアをおこなう、よく噛んで食べ唾液分泌を促すよう指導、過飲水の(水中毒)の患者さんには体重測定をおこない飲む量を意識づける
  • 排尿障害…
    患者さんに泌尿器科を受診してもらう
  • 悪性症候群…
    原因薬の中止、発熱への対応、輸液、筋弛緩剤の投与

精神科の患者さんにとって服薬は欠かせないものであると同時に、副作用とも上手く付き合っていかなければなりません。

これらの副作用が辛いため、薬を飲みたくないと訴える患者さんも多いです。看護師は副作用への対応や患者さんの辛い気持ちに寄り添いながら、治療を進めていきます。

2-6. セルフケア援助

6つ目はセルフケア援助です。

一般科でのセルフケア援助は、疾患によって活動が制限されている場合におこないます。

精神科の患者さんの場合は、幻覚・妄想や意欲の低下など精神症状によってセルフケア行動が十分に取れないケースが多いため、看護師の援助が必要となります。

以下が、精神科の患者さんに看護師がおこなうセルフケア援助です。

  • 食事が取れない…
    患者さんが食べられるものや形態で食事を用意する。食事介助をおこなう。栄養状態や精神状態によっては点滴や捕食も検討。
  • 睡眠・休息が思うように取れない…
    日中の活動を促し生活リズムをつける、睡眠薬の与薬、患者さんが落ち着けるよう環境調整をおこなう。
  • 入浴など保清行動が取れない…
    患者さんと相談し入浴日を決めて入ってもらう、身体を洗うなど介助もおこなう、入浴前に頓服を与薬する。
  • 洗濯ができない…
    洗濯日を決めて患者さんと一緒におこない徐々に自立を促す、外部業者に依頼する。
  • 浪費があり金銭管理ができない…
    通帳や現金を病院の事務に管理してもらい、日を決めて降ろす「小遣い制度」を導入する。
  • 意欲低下があり日中活動がない…
    作業療法への参加を促す。

精神科の患者さんにおこなうセルフケア援助は、看護師がすべてをおこなうのではなく自立を促していくケアであるというのも大きな特徴です。

看護師は、患者さんが退院時に必要な能力や、患者さん自身がどこまで自分でできるようになりたいかをきちんと話し合いながら目標を決めて援助していきます。

2-7. 社会復帰のための支援

7つ目は社会復帰のための支援です。

精神科は入退院を繰り返す患者さん、長期入院の患者さんも多く生活の中心が病院となっており、社会生活への参加が困難となっているケースも少なくありません。

中には、10年単位で入院しているため公共交通機関の使い方がわからず外出できないという方もいます。

このような病院での生活が中心となっている患者さんを、再び社会で生活できるように支援していくのも看護師の仕事の1つです。

具体的には以下のようなことをします。

  • 作業療法への参加を促し、患者さんの対人関係能力・作業能力の向上を図る
  • レクリエーション、行事への参加を促し、患者さんの社会性の向上や体力維持を図る
  • 退院支援プログラムに一緒に参加し、患者さんが退院に必要な能力を身に着けられるよう援助する
筆者が担当していた患者さんで、不安が強く病棟の外に1人で出られない患者さんがいました。
まずは、病棟内でのレクへ参加することから声掛けを始め、作業療法室へ付き添いで行き活動するなど段階を経て少しずつ患者さんの活動性が高まるように関わっていくことで、最終的には病院の近くであれば1人で外出できるようになった方がいました。
このような精神科の患者さんが再び社会で生活できる能力を身に着けられるような関わりは、急に大きな成果が出るものではありません。
しかし、患者さんが少しずつでも出来ることが増えていく過程を見られるのは看護師として大きな喜びを感じることでもあります。

3. 【精神科独自】看護師の仕事内容

以下は、精神科独自の看護師の仕事内容です。

それでは1つずつ詳しく解説していきます。

3-1. 患者さんの行動制限の把握

1つ目は、患者さんの行動制限の把握です。

精神科は、面会や外出できる範囲、電話の制限などの行動制限が患者さんの病状によって医師の指示のもと決められています。

治療を効果的におこなうため、事故防止のためにも看護師一人ひとりが患者さんの行動制限常に把握し、その指示が守られているか確認していく必要があります。

また、これらの行動制限をかけることは患者さんの人権問題にかかわることなので、むやみに行動の制限をすることはできません。

患者さんの病状をアセスメントしながら行動制限を緩和していく方法を医師に進言していくことも看護師の仕事です。

3-2. 危険物の管理

2つ目は危険物の管理です。

精神科の患者さんは、自傷・他害のリスクがある方もいるため患者さんが持参したり買ってきたものを看護師がナースステーションで管理することがあります。

特に、ハサミや剃刀、爪切りなどの刃物やライターは危険物として預かり、貸出の台帳をつけ常に所在が明確になるようにします。

病院によって危険物の定義は異なりますが、コード類や洗剤、除光液、ガラス・陶器類、爪楊枝なども自傷・他害のリスクがあるという観点から看護師が預かることになります。

入院時の持ち込み以外にも、患者さんが外出先で購入し看護師に預けずに隠して持っているというケースもあるので、買い物から帰ってきた患者さんの購入品を確認させてもらうこともあります。

危険物の管理は患者さん以外にも、病棟の備品に関しても厳しくチェックをおこないます。勤務帯ごとにハサミやカッターの定数が所定の場所にあるか確認し、紛失がないように注意します。

3-3. 隔離・拘束患者への対応

3つ目は、隔離・拘束患者への対応です。

一般科と異なり、精神科には隔離室があります。

隔離室は、自傷・他害の恐れがある患者さんや周囲の刺激を遮断した方がいいと判断した場合に使用します。身体拘束は一般科でもおこないますが、精神科の方が頻度は高いと言えます。

隔離・拘束は患者さんの治療のためにおこなう行為ですが、同時に患者さんの自由や尊厳を奪う行為でもあります。看護師は、患者さんの人権に配慮しながら隔離・拘束が最小限で済むよう常に査定しながらおこなわなければなりません。

また、身体拘束は血流障害やすり抜けなど事故が起きやすいため最低15分ごとのこまめなラウンドをしなければなりません。

3-4. 不穏患者への対応

4つ目は不穏患者への対応です。

精神科の患者さんは、興奮状態にあったり病状の悪化によって攻撃性・衝動性が高まり、大声や暴力行為に至ることがあります。

これらの不穏状態にある患者さんへの対応も看護師の重要な仕事です。

不穏患者さんには、頓服の内服を促したり、鎮静のための注射をおこなったりします。看護師が暴力を受けるリスクもあるため、1人ではなく集団で対応すること、適切な距離をとることが重要です。

また、患者さんを力で押さえつけようとする行為は逆効果となるため注意が必要です。

3-5. 無断離院をした患者への対応

5つ目は、無断離院をした患者への対応です。

精神科の患者さんの中には、治療の必要性が理解できずに外出・外泊から病棟に戻ってこない無断離院をしてしまう方がいます。

患者さんの治療を継続するため、自傷・他害などの事故防止のためにも病棟に戻ってきてもらうよう働きかけなければなりません。

そこで看護師は、患者さんの無断離院がわかったら、病院内・外の探索、家族への連絡、警察への届け出をおこないます。

精神症状が悪化している時や退院についての話が大きく進むなど患者さんにストレスがかかっている時は特に注意しなければなりません。

無断離院防止のための対策として、看護師は病棟から外出する患者さんに行き先や帰宅時間を記入してもらう、離院リスクのある患者さんの場合は閉鎖病棟への転棟も検討していきます。

3-6. 自殺企図・自傷行為のある患者への対応

6つ目は、自殺企図・自傷行為のある患者への対応です。

精神科の患者さんは希死念慮が強い方もおり、自殺企図・自傷には十分注意しなければなりません。

これらを予防するため、看護師は以下のことをします。

  • リスクの高い患者さんの頻回訪室・精神状態の観察
  • 頓服の使用
  • 医師への薬剤調整
  • 自殺企図・自傷に使えてしまうものを預かる
  • 必要時隔離室の使用
  • 過去のエピソードや精神症状から患者さんのリスクアセスメントをする

また、これらを徹底していても、予期しない形・タイミングで自殺企図・自傷をしてしまう患者さんもいるのが事実です。

そのため、看護師は突然の自殺企図・自傷行為への対応できるように訓練やマニュアルの読み込みを徹底しておく必要があります。

3-7. 専門病院の場合、他科受診の付き添い

7つ目は、患者さんの他科受診の付き添いです。

専門病院の場合、内科や外科を持っておらず自身の病院だけでは患者さんの身体疾患に対応できないことがあるため、外部の病院を受診に同伴することがあります。

患者さんの家族の来院ができない場合は、身体疾患治療のための転院の手続きや緊急時の救急車の同乗もおこないます。

3-8. 患者同士のトラブルへの介入

8つ目は、患者同士のトラブルへの介入です。

精神科疾患の症状は患者さんの対人関係スキルにも大きな影響を与えるため、入院中の患者さん同士のトラブルもよく起こります。

以下がその一例です。

  • 金銭トラブル…
    金銭の貸し借り、病状からお金を他者にあげてしまう
  • 暴力…
    妄想の対象となり暴力を振るわれる
  • 物を盗まれる…
    病状により他の患者さんの部屋に入って勝手に物を使う、盗む
  • 男女関係にまつわるトラブル…
    患者さん同士が恋愛関係になり(一方的な場合も)病状が悪化する
  • 病棟の設備・備品にまつわるトラブル…
    トイレや洗面台など共有設備の使い方をめぐりトラブルになる
  • 患者さん間で上下関係ができる…
    他の患者さんに物を買ってこさせる

急性期の場合は、患者さんが興奮状態にあることや幻覚・妄想が活発なことからトラブルが起きやすく、慢性期の場合は病院が生活の場となっている患者さんも多く、患者さん同士の距離が近くなりトラブルに発展してしまうケースが多いです。

患者さん間でトラブルが起きた場合は、本人・主治医や時に家族も含めて話し合い、必要であれば病室・病棟など環境調整することもあります。

また、病棟内で患者さん同士が話し合う「懇談会」や「自治会」を定期的に開く病院もあり、看護師は話のまとめ役として参加します。

4. 精神科看護師の1日のスケジュール

以下は、精神科病棟の看護師のある1日の日勤のスケジュールです。

時間 業務内容
8:30 夜勤者から申し送りを受ける.
9:00 ラウンド… 与薬、検温、点滴などケアやその日の患者さんの状態確認
セルフケアへの援助…トイレ介助など、小遣いの管理など
作業療法への参加を促す
看護記録
11:30 昼食時の介助、観察… 誤嚥・窒息に注意しながらラウンドする
12:00 昼休憩
13:00 看護師間で情報共有…その日の患者さんの状態や看護ケアで相談したいことを話し合う
ラウンド. . 与薬やケアをおこなう
14:00 清潔ケア…入浴の介助、声掛け
15:00 ラウンド… 看護計画に沿って患者さんと話し合う、点滴や注射などのケア
セルフケアへの援助
看護記録
16:00 看護記録… ケア計画の作成・修正も
16:30 夜勤者への申し送り
17:00 退勤

大まかな流れは、一般科と変わりませんが、医療処置が少ない代わりに患者さんとコミュニケーションを取る時間をしっかり確保していることが多いです。

また、隔離・拘束中の患者さんの担当をしている場合は、これに加えて頻回なラウンドや記録など業務量が増える傾向にあります。

ここまでのまとめ

以下がここまでのまとめとなります。

  • 精神科は一般科病棟と比べ医療処置は少ないが、隔離・拘束や行動制限など精神科ならではの業務や看護の視点がある
  • コミュニケーションだけに重点をおかれがちであるが、身体状態の把握や薬の副作用への対処も重要な仕事
  • 看護師は、患者さんの自立や社会復帰を見据えて入院中から介入をおこなっている
  • 自殺企図・自傷や無断離院など、一般科ではあまり起こらない事故への対応もある

コミュニケーションだけではない、精神科ならではの業務に興味を持った方、「働いてみたい。」と思った方もいるのではないでしょうか。

ただ、精神科での働き方のイメージが湧かないという方もいると思います。

そこで次章では、精神科で働くメリット・デメリットにも触れていきます。

5. 精神科で働くメリット

以下が精神科で働くメリットです。

それでは1つずつ詳しく解説していきます。

5-1. コミュニケーション能力が高くなる

1つ目は、コミュニケーション能力が高くなることです。

精神科では一般科と比べて患者さんとコミュニケーションを取る機会が多く、コミュニケーションから病状を観察・アセスメントし、信頼関係を築いて治療をスムーズに進めていくことが重視されています。

そのため、患者さんとの適切な距離感や、患者さんの思い・ニーズを読み取る能力が身に着けられやすいのです。

5-2. 残業が少なくプライベートな時間を充実させられる

2つ目は、残業が少なくプライベートな時間を充実させられることです。

精神科は、一般科と比べて医療処置が少ないこともあり比較的ゆとりを持って業務がおこなえる傾向にあります。

残業が少ない病院が多く、その分プライベートの時間を確保できます。

5-3. 職員同士の人間関係が良好な職場が多い

3つ目は、職員同士の人間関係が良好な職場が多いことです。

コミュニケーション能力が高い看護師が多いこと、残業が少なく業務にゆとりがあるなどの理由から、人間関係が良好な職場が多いのもメリットです。

また、一般科よりも男性スタッフが多く男女の割合が半々ぐらいの病棟もあるため女性が多い職場特有の人間関係に疲れてしまった方にもおすすめです。

6. 精神科で働くデメリット

以下は、精神科で働くデメリットです。

それでは、1つずつ詳しく解説してきます。

6-1. 医療行為が少なく看護スキルが身につきにくい

1つ目は、医療行為が少なく看護スキルが身につきにくいことです。

医療行為が少ないことで、業務にゆとりは生まれますが看護師として様々なスキルを身に着けたい方にとってはデメリットとなります。

精神科で働きながら看護スキルもある程度身に着けたいという方は、内科を併設している病院を探すのが良いでしょう。

6-2. 暴力・セクハラのリスクがある

2つ目は、暴力・セクハラのリスクがあることです。

一般科でもこれらのリスクはありますが、精神科の方が看護師が暴力・セクハラの被害に合うリスクは高いでしょう。

患者さんの妄想の対象となり暴言・暴力の被害にあう、認知機能が低下している患者さんからセクハラを受けるなど、患者さんの病状によって看護師自身が傷つく場面があります。

暴力・セクハラの被害から自身を守るために、患者さんと適切な距離を取る・危ないと感じたら集団で対応するなどのスキルを身に着けながら働いていかなければなりません。

6-3. 自傷・自殺企図などショッキングな場面に遭遇することも

3つ目は、自傷・自殺企図などショッキングな場面に遭遇することもある点です。

自傷・自殺企図は患者さん自身はもちろん、対応した看護師の精神面にもダメージを与えます。これらを予防するために日々リスクアセスメントをおこないケアをしているのですが、予測できないことももちろんあります。

起こってしまった事故に対してはスタッフ同士で共有し振り返りをおこないますが、自傷・自殺企図の兆候に気づけず止められなかったことを1人で抱え込んでしまい、心を病んでしまう看護師がいるのも事実です。

7. 精神科に向いている人

精神科看護師の仕事内容やメリット・デメリットを踏まえた、向いている人の特徴は以下になります。

  • 患者さんと根気よく向き合える人…
    精神科の治療は長期に及ぶことも多い。患者さんが退院に向かって少しずつでも進めるように根気よく付き合っていかなければならない。
  • 患者さんの強みを見つけるのが得意な人…
    日々の関わりの中で患者さんが得意なこと・好きなことを「強み」ととらえてケアに活かしその人らしい生活が送れるように支援が求められる。
  • 物事を柔軟に考えられる人…
    患者さんによってはどうしても譲れないこだわりが強い人もいる。看護師がケア方法を提案してもそのまま受け入れてもらえるとは限らないため、柔軟な対応が求められる。
  • 気持ちの切り替えができる人…
    仕事中に患者さんから暴言・暴力の被害にあうこともある。予防のための振り返りは必要だが、引きずりすぎず気持ちの切り替えをしながら働いていかなければならない。

8. まとめ

今回は、精神科看護師の仕事内容や働き方について解説しました。

精神科は医療行為こそ少ないものの、独自の業務や精神科ならではの看護の視点が求められ、
やりがいを感じながら働ける領域です。また、精神科で身に着けるコミュニケーション能力は仕事だけでなくプライベートにも活かせるでしょう。

この記事を読んで仕事内容に興味が湧いた方や向いていると感じた方は、精神科への転職もキャリアの選択肢に入れてみてください。