保健所薬剤師の仕事とは?年収やなり方、メリットデメリットと合わせて解説

保健所 薬剤師

「保健所薬剤師ってどんな仕事?」
「なるには、どうしたらよい?」

と考えていませんか。

保健所薬剤師は、医薬品などの品質や安全性の確保を目的とした薬事衛生や、食の安全を確保する食品衛生、住民から健康相談を受けるなど、幅広く地域貢献をする業務を担います。

ただ、保健所薬剤師は公務員であるため、勤務時間や休日の制度がしっかりしている反面、公務員試験に合格しても保健所配属にならない場合や、臨床現場での経験を積めないというデメリットもあるのです。

そこでこの記事では、元薬剤師で転職コンサルタントとして多くの薬剤師転職に携わってきた私が、以下の流れで解説します。

  1. 保健所で働く薬剤師の仕事
  2. 保健所薬剤師の年収幅は約314万円~820万円!
  3. 保健所の薬剤師になるには、約20倍の試験突破が必須!
  4. 保健所の薬剤師として働くメリット・デメリット

全て読めば、保健所薬剤師の仕事やなるための方法が分かり、最適なキャリアに近づくことができます。

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1. 保健所で働く薬剤師の仕事

この章では、保健所で働く薬剤師の仕事についてお伝えします。保健所薬剤師の仕事は配属先によって異なり、以下のように仕事内容は多岐に渡ります。

早速ご紹介します。

1-1. 薬事衛生|薬局や店舗への許可や監視・指導をおこなう

薬事衛生は、医薬品や医療機器などの品質、有効性や安全性の確保を目的として、薬局や店舗を含む販売業に対して許可・監視・指導などの対応をおこなう仕事です。医薬部外品、健康食品、化粧品、サプリメントもその対象に含まれます。

また、地域住民が医薬品などを安全に使用するための注意喚起や情報発信、麻薬・覚せい剤・危険ドラッグなどの薬物乱用防止の啓発活動など、仕事内容は幅広いです。

薬局の開設や許可更新などの際の立ち入り検査で接したことがある薬剤師さんもいらっしゃるかもしれません。保健所の薬剤師の仕事の中では、最も認知度が高い業務と言えるでしょう。

1-2. 食品衛生|食に関する全ての安全確保が目的

食品衛生は、食品製造業者や飲食店などへの許可・監視・指導などの対応をおこなうことが仕事です。

食品が製造開始されてから製品となり、消費者の手に届くまで、また届いた後に有害事象が起こった際の把握や対応など、食に関する全ての安全確保を目的としています。

また、食中毒予防のために、食品取扱事業所や地域住民に向けた啓発活動の推進も仕事の一つです。

1-3. 生活衛生|衛生水準を維持・向上するための対応をおこなう

生活衛生は、旅館やホテルなどの宿泊施設、温泉や銭湯などの公衆浴場、クリーニング店や美容室・利用室などの業務に関わる管理指導や開設許可・管理指導を担当します。

適切な消毒がされているか、清潔かどうか、施設に従事する方が適当な資格を持っているかなど、幅広く衛生と安全を守る業務を担います。

一定以上の衛生水準を維持し、向上するための対応を行う仕事です。

1-4. 水道衛生|水道水を地域住民に安全に供給する

水道衛生は、地域住民の生活に不可欠である水道水を安全に供給するため、水道事業者や関連施設への監視・指導などをおこないます。

水道法に関連する通知や届出、プールの維持管理、旅館などの宿泊施設の水道水の衛生管理をおこなうことも保健所薬剤師の仕事です。

他にも、雨水・再生水、生活排水などに関する業務を対象としている場合もあります。

1-5. 試験検査|幅広い化学検査を担当する

試験検査は、食品に含まれる添加物などの規格基準検査や、放射性物質などの化学検査全般を行います。

自治体によっては、新型コロナウイルスやインフルエンザなどのパンデミックに備えた健康危機管理、医療供給体制整備、廃棄物衛生、創薬研究と治験、住民の健康相談など、幅広い業務を担当します。

このため、どの検査業務を担当するかによって、勤務先が大きく異なりますが、薬剤師の専門性が必要とされやすい仕事の一つです。

【注意】保健所薬剤師の仕事で調剤経験は役に立ちにくい

保健所の薬剤師として仕事をする場合、調剤薬局や病院とは業務内容が全く異なるため、調剤経験は役に立ちにくいでしょう。

よって、中途採用で入職しても、今までの経験が全く役に立たず、新卒職員と同様に一から仕事を覚えることはとても多いです。また、数年に一度異動があるため、せっかく覚えた業務が、次の職場では活かされないことも少なくありません。

このように、経験を積み続けたとしても、次の職場でその知識が役に立たないことが多いため、継続的な勉強が必要となる可能性があります。

2.保健所薬剤師の年収幅は約314万円~820万円!

保健所薬剤師の年収幅は約314万円~820万円です。

保健所薬剤師の給与は、条例に規定する給料表における「級」と「号給」の組み合わせで決定され、支給額が決まります。自治体によって詳細は異なりますが、埼玉県の場合、以下の内容でした。

1級25 190,800円
8級37号(最高値) 496,500円
賞与(期末手当・勤勉手当) 4.5ヶ月分

調剤薬局やドラッグストアなど、その他の薬剤師職種とくらべると初任給は低めに設定されているものの、勤続年数に比例して確実に給与が上がっていきます

薬剤師の平均年収は約540万円ですから、長期的に勤務することで、公務員以外薬剤師の給与を上回ることもあるでしょう。

また、退職金に関しても公務員は手厚く設定されている場合が多いため、結果として高い給与を得やすい傾向にあります。

3.保健所の薬剤師になるには、約20倍の試験突破が必須!

保健所の薬剤師になるには、自治体によって異なるものの、高いところでは約20倍という倍率の公務員試験を突破する必要があります。

この章では、その過程である「求人募集を探す」「採用試験を受ける」の2つについてお伝えします。

3-1.求人募集を探す

保健所の薬剤師になるためには、求人募集を探すことが先決です。

保健所は各都道府県、政令指定都市、中核市、特例市、保健所指定都市、特別区に設置されており、薬剤師などの職員募集は、各自治体がおこなっています。

主な求人募集を探す方法は、以下の4つです。

  1. 自治体公式サイト内の職員募集ページ・採用ページから探す
  2. 自治体が発行する機関紙である「公報」に掲載される職員募集を探す
  3. 自治体に直接問い合わせる
  4. 薬剤師転職サイトで求人を探す

保健所薬剤師として働くためには、次にお話する採用試験を受ける必要がありますが、各自治体によって募集要項が異なるため、事前にチェックしてから行動するようにしましょう。

3-2.採用試験を受ける

保健所薬剤師になるための採用試験には「地方公務員試験上級(Ⅰ類)」「社会時経験者向けの各自治体による試験」の2種類があります。

それぞれ年齢制限や受験資格があるため、確認してご自身に最適な方を受験するようにしましょう。

方法1.地方公務員試験「上級(Ⅰ類)」に合格する

地方公務員試験「上級(Ⅰ類)」は、大卒のかたを対象とした資格です。28・29歳までなどの年齢制限が設けられています。

保健所薬剤師になるためには、自治体によってはこの試験に合格する必要があります。年齢制限は自治体ごとに異なっており、6年制の薬学部を卒業した場合、ストレートでも24歳であるため、早めの決断が必要でしょう。

方法2.社会人経験者向けの各自治体による試験を受ける

社会人経験者向けにおこなわれている、各自治体による試験を受けることも、公務員薬剤師になるための一つの手段です。

「社会人枠」「社会人体験枠」と呼ばれることもあり、地方公務員試験を受けなくても求人に応募できる点が特徴です。薬剤師としての勤務経験があれば、キャリア枠として採用する自治体が増えています。

社会人枠の年齢制限は、40歳以上も可など引き上げ傾向にあるものの、自治体によっては30~35歳など低めの年齢制限を設定しているところもありますので、早めに確認しておきましょう。

地域によって条件は異なりますが、小論文や面接などによって合否を決定するところが多いです。

【注意】採用後、必ず保健所勤務になるとは限らない

保健所薬剤師になりたいと思って試験を受験・合格しても、あくまで自治体の職員になったということになるため、必ずしも保健所勤務になるとは限らないことは認識しておきましょう。

ピンポイントで保健所薬剤師の募集に応募した場合は、この限りではありませんが、自治体の職員として採用された場合、他の部署に配属となる可能性もあるのです。

また、公務員は定期的に異動があるため、保健所配属になった数年後に、異動となり別の業務に携わる可能性もあります。

4.保健所の薬剤師として働くメリット・デメリット

この章では、保健所薬剤師として働くメリット・デメリットを紹介します。事前にメリットとデメリットの両方を把握し、ご自身の希望と合うか、確認しておきましょう。

メリット

保健所薬剤師として働くメリットは、以下5つです。

地方公務員であることで、安定性が高く、幅広い業務内容から地域貢献ができる点は、大きなメリットと言えるでしょう。

  • 地方公務員として採用されるため、雇用が安定する
  • 残業が少なく、働きやすい場合が多い
  • 休日・有給休暇・勤務時間・福利厚生・各種手当がきっちりしている
  • 地域の公衆衛生に携わる幅広い業務に携わることができる
  • 地域貢献に対するやりがいを感じることが出来る

薬剤師として地域や多くの人へ貢献したいと考えている人に、保健所薬剤師は向いていると言えます。

デメリット

保健所薬剤師になるデメリットは、以下5つです。

公務員試験を受けても、そもそも保健所薬剤師になれない場合もあることや、保健所薬剤師になることで臨床現場から離れてしまうことは大きなデメリットとなり得ます。

  • 公務員試験に受かっても、希望する地域の保健所に求人がない応募できない
  • 研究所や病院などの施設に配属される可能性もある
  • 3年周期で異動を課せられてしまうパターンが多い
  • 保健師としての知識を求められることが多く、薬剤師の知識を活かしきれない場合も
  • 調剤業務から離れるため、臨床現場での経験が積みにくい

ご自身がどのようなキャリアを積みたいのかと合わせて事前に検討しておく必要があるでしょう。

さいごに

保健所薬剤師について解説しました。

薬剤師として保健所で働くことで、地域社会への貢献度が高く、大きなやりがいを得ることができます。

しかし、保健所薬剤師になるためには、公務員試験の受験、社会人向けの試験の受験という2つの方法がありますが、その門戸は狭い傾向があります。

このため、メリット・デメリットを把握し、ご自身のキャリアプランと合わせてしっかりと検討するようにしましょう。

あなたが保健所薬剤師としてご活躍されることを応援しています。