「薬剤師も自衛隊で働けるって本当…?」
「どんな仕事をするの?」
と疑問に感じていませんか。
自衛隊で働く薬剤師は「薬剤官」と呼ばれ、自衛隊で働く方の健康を支える役割を担っています。
国家公務員であるため安定性が高い仕事であるものの、薬剤官になるためには狭き門を突破する必要がある点も特徴の一つです。
そこでこの記事では、転職コンサルタントとして自衛隊への転職を支援したことがある私が、以下の流れで解説します。
- 自衛隊薬剤師(薬剤官)の仕事は自衛隊で働く方を体調面から支えること
- 自衛隊薬剤師(薬剤官)の年収は約400万〜820万円!
- 自衛隊薬剤師(薬剤官)は手厚い福利厚生を受けることができる
- 自衛隊薬剤師(薬剤官)のなり方【狭き門を突破する必要あり】
この記事を読めば、自衛隊薬剤師(薬剤官)の全てが分かります。
目次
1.自衛隊薬剤師(薬剤官)の仕事は自衛隊で働く方を体調面から支えること
自衛隊薬剤師(薬剤官)の仕事は、自衛隊で働くかたを体調面から支えることです。
具体的には「派遣先での自衛隊員の健康管理と医薬品の管理」「自衛隊病院への勤務」の大きく2点が挙げられます。
派遣先で自衛隊員の健康管理と医薬品の管理をおこなう
薬剤官の仕事として、自衛隊員の派遣先に帯同し、健康管理と医薬品の管理をおこなうことがあります。
その多くは日本国内や海外への支援活動時に、自衛隊員が体調を崩した際やけがをしたときに用いられるものです。
慣れない環境で体調を崩した際に、日本から持ち込んだ医薬品を提供したり、在庫を切らさないように管理する役割を担います。また、寄港地で補給する際の水質検査や食料品の衛生管理なども業務の一つです。
自衛隊は集団で活動することから、集団感染が起きた際の医薬品管理も重要です。同じ薬を処方し続けて在庫切れとなることがないよう、非常事態下における薬剤官の手腕が求められます。
自衛隊病院に勤務する
自衛隊病院に勤務することも、薬剤官の仕事です。一般の病院薬剤師と同じように病院内の調剤業務や、病棟業務にあたります。
病院としての機能については、民間とそれほど大きく変わることはありませんが、自衛隊病院と言う特性から、具体的な有事や災害を見据えている点は民間病院との違いと言えるでしょう。
実際に、2020年に新型コロナウイルスが蔓延した際には、集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に自衛隊病院の医官や看護官、薬剤官が派遣されています。
出典:iza
このような有事の対応もあるものの、自衛隊病院では一般の患者さんの受け入れもおこなっており、日々の仕事で自衛隊員以外と接することができる点は大きな特徴の一つです。
2.自衛隊薬剤師(薬剤官)の年収は約400万〜820万円!
自衛隊薬剤師(薬剤官)の年収は、階級に応じて約400万〜820万円と言われています。
薬剤官を含む自衛隊員の給与は、「防衛省の職員の給与等に関する法律」で規定され、隊員の区分・階級・職務に応じて支給されます。初任給は令和3年1月1日時点で247,500円です。(出典:防衛省)
薬剤官も自衛隊として階級が与えられており、賞与は年2回、昇給は年1回で、個々の経験や実績などが加味されます。よって、努力して階級を上げることで、より高い待遇を受けられる仕組みとなっているのです。
尚、薬剤師の平均年収は500万円前後と言われています。自衛隊として長く勤務し階級を上げていくことで、結果として薬剤師全体の平均年収を上回り、薬剤師の中では高水準となる給与を得られる可能性は多いにあり得るでしょう。
また、一般企業にあるような住宅手当や扶養手当に加え、職務や職域に応じた航空手当・航海手当・乗り組み手当など、自衛隊員ならではの手当がある点も特徴です。
3.自衛隊薬剤師(薬剤官)は手厚い福利厚生を受けることができる
自衛隊で働く薬剤師は、「特別職国家公務員」として地位が保証されており、手厚い福利厚生を受けることができます。
自衛隊薬剤師の福利厚生(一部)
- 健康保険や年金、各種貯金、貸付などの制度の充実
- 駐屯地内にある食堂や売店、理容室などの施設を利用可能
- 住宅手当や扶養手当など、各種手当の充実
- (駐屯地内に住んだ場合)家賃・光熱費・食費などは無料
他にも、防衛省共済組合直営施設(宿泊施設・野球場・テニスコート、提携している保養施設など)を割引価格で利用することができるなど、福利厚生は一般企業と比べてかなり手厚いと言えるでしょう。
注意!自衛隊薬剤師にはデメリットも存在する
福利厚生が手厚く、メリットが多いと感じられる薬剤官ですが、実はデメリットも存在します。
自衛隊薬剤師のデメリット
- プライベートとの両立が難しい
配属先によって異なるが、自衛隊病院で勤務する場合、日中の業務が忙しくなりがちなことに加え、当直や夜勤も求められる - 状況によっては、土日出勤がある
振替休日は取れるものの、不規則な生活になる可能性は高い - 転勤が多く生活が落ち着きにくい
定期的に転勤があることや、海外派遣で数か月間も日本を離れることも
また、国内の被災地や海外の治安が悪い地域などに派遣されることや、一刻を争う事態の場合は急に派遣が決まることもあります。
このように、自衛隊薬剤師として働きたい場合、生活が安定しにくくなることは認識しておく必要があるでしょう。
4.自衛隊薬剤師(薬剤官)のなり方【狭き門を突破する必要あり】
自衛隊薬剤師(薬剤官)は例年採用人数が非常に少なく、約15名の狭き門を突破する必要があります。
この章では、自衛隊薬剤師(薬剤官)になるまでの流れをお話しますので、興味のあるかたはぜひチェックしてみてください。
薬剤官になるためには、「自衛隊幹部候補生」の試験に応募し、晴れて合格・入隊となった後に「初級幹部」として1年間の訓練を受けることになります。
自衛隊幹部候補生の試験に応募する
自衛隊薬剤師(薬剤官)になりたいと思ったら、自衛隊幹部候補生の試験に応募します。
自衛隊幹部候補生とは、自衛隊の幹部自衛官となる人を養成する制度で、薬剤師の場合はその中の「薬剤科幹部候補生」を目指すことになります。
なお、自衛隊幹部候補生の試験には、年齢条件などの応募資格があるため、注意が必要です。
薬剤科幹部候補生の応募資格
自衛隊幹部候補生に応募するためには、以下の2点を満たしていることが条件です。
- 試験実施年度の翌4月1日時点で20歳以上28歳未満で、大学で薬学の6年制課程を修めて卒業(見込含)した者
- 日本国籍を有する者
自衛隊法第38条第1項の規定により自衛隊員となることができない者を除き、上記の2つの条件を満たしていれば、自衛隊幹部候補生に応募可能です。
現在の薬学部は6年制であることから、最長で受験資格がある人でも24歳~27歳の4年間しかチャレンジすることができません。このため、薬剤官に興味があるかたは、早めに動き出すことが必要でしょう。
薬剤科幹部候補生の試験内容
薬剤科幹部候補生の試験は、第1次の筆記試験と第2次の小論文試験・口述試験・身体検査に分かれており、第1次試験合格者のみ第2次試験に進むことができます。(参考:防衛省)
第1次の筆記試験は、一般教養と専門の区分に分かれており、一般教養は人文科学、社会科学、自然科学及び英語に関する大学修了程度の問題、専門は薬学に関する問題が出題されます。
また、第2次試験の身体検査には細かな合格基準が定められており、それまでの試験がどんなに優秀でも、身体検査で不合格となる場合もあります。
身体検査の合格基準は幹部候補生採用要項に記載されているため、事前にチェックしておきましょう。
入隊後「初級幹部」として、2年間の訓練と実務研修を受ける
薬剤科幹部候補生試験に合格した場合、晴れて入隊となり、入隊後は「初級幹部」として2年間の訓練と実務研修を受けることになります。
まず、最初の1年で必要な知識や技能を学びます。その内容は防衛基礎学、戦術、戦史、戦技訓練、体育、服務、防衛教養、実技などの科目です。同時に候補生用の寮に入り、厳しい集団生活もこなしていきます。
さらに、1年間の薬剤実務研修を受けた後に、本格的に薬剤官として働くことになるため、薬剤官として一人前になるまでには、入隊から約2年かかるのです。
(補足)女性も薬剤官への応募は可能
自衛隊と聞くと男性のイメージが強いかたも多いですが、女性も薬剤官への応募は可能であり、実際に女性薬剤官として活躍しているかたもいらっしゃいます。
一つ押さえておくべき点は、前述した入隊後の訓練では、自衛隊として女性でも男性同様の水準を求められます。さらに寮での集団生活となることから、プライベートを優先した働き方がしたい、家庭と両立したいという希望は叶いにくいでしょう。
しかし、訓練と研修が終わり配属となった後に自衛隊病院に配属となった場合、一般的な病院薬剤師に近い働き方となることもあり、必ずしも家庭と両立ができないとは言えません。
このため、女性薬剤官を目指すかたは、様々な可能性とライフプランを視野に入れておくと良いでしょう。
さいごに
自衛隊薬剤師(薬剤官)について、お伝えしました。
薬剤官は国家公務員であるため安定性が高く、やりがいも大きな仕事ですが、狭き門を突破する必要がある、プライベートとの両立が難しいなど大変な面も多いです。
このため、薬剤官を目指すかたは、希望の働き方とプライベートとの両面で検討をし、ご自身の人生設計をする必要があります。
今後のあなたの薬剤師人生が最高のものになるよう、心から祈っています。
現役の転職コンサルタント集団。大手人材会社に在籍しているメンバーが多いため、執筆内容に制約がかからないように『匿名性』とし、裏事情やノウハウを包み隠さずにご紹介しています。