「薬剤師は就職難なの?」
「薬剤師の資格を生かして就職するか迷う」
と悩んでいませんか。
前提として、長期的にみると薬剤師が人手余り(供給過多)になると予測されているのは事実です。
しかし、供給過多=就職難というわけではありません。結論から言うと、高齢化によって薬剤師の活躍の場は広がっており、この先も一定の需要は絶えないと考えられます。
この記事では転職のプロとして薬剤師転職をサポートしてきた私が、薬剤師の就職難の真偽や就職活動が成功しやすい薬剤師の条件を説明していきます。
- 長期的に見れば、人手余りになると予測されているのは事実
- 結論:薬剤師は就職難とは言えず、むしろ活躍の場は広がっている
- 就職のしやすさは働くエリアによって全く違う
- これからの時代に求められる薬剤師になるには
この記事を読めば、薬剤師の就職への不安がなくなり、後悔しない決断ができるようになるでしょう。
編集部が実施した薬剤師500名へのアンケート調査に基づくサポート力や求人の数・質への満足度が高い転職サイトベスト3は、下記の3つ。
キャリア・転職に悩んでいたり、今の仕事・職場から離れようかなと考えていたりするすべての薬剤師におすすめの相談先です。
左右にスクロールできます。
おすすめ転職サイト | 口コミ満足度 | 求人数 | おすすめポイント |
---|---|---|---|
|
約6.0万件 |
|
|
|
約5.1万件 |
|
|
|
約4.6万件 |
|
〔求人数〕2024年5月7日時点
目次
1. 長期的に見れば、人手余りになると予測されているのは事実
薬剤師は、長期的に見ると供給が需要を上回り就職難になると予想されています。
薬剤師が就職難になると予想されている理由
1-1.長期的に見ると薬剤師の需要は供給を下回る
厚生労働省が発表した調査によると、将来的に、薬剤師の需要は供給を下回ることが分かっています。
さらに、薬剤師資格を生かして働きたい人の数と薬剤師の求人数の差が広がっていくと考えられています。
今後数年間は、需要が供給を上回る、またはつりあいが取れている状態が続きますが、将来的には供給が上回り薬剤師は飽和状態となってしまいます。
(参考:薬剤師の需給推計)
長期的に見ると薬剤師資格を持つ人材への需要はだんだんと減ってしまいます。
1-2.薬局薬剤師は速いペースで増加している
薬局で勤務する薬剤師の数は、薬局数の増加よりも早いスピードで増え続けています。
(参考:薬剤師に関する基礎資料)
平成20年から平成30年までの10年間で、薬局数と薬剤師数の増加割合を比較すると、薬局数は1.1倍であるのに対し、薬剤師数は1.3倍もの増加となっています。
薬剤師が薬局以上に増加したことにより、薬局薬剤師は徐々にですが、人手余りになりつつあるのです。
事実、薬剤師の需要を表す、薬剤師1人あたりの処方箋の枚数は、減少傾向が続いています。これは、薬局薬剤師の仕事量が減っていることを表しており、需要も落ちていると言えます。
1-3.AIが薬剤師業務を補えるようになる
日本では今後10〜20年後にはAIの発達により、約半数の仕事が消えると言われており、薬剤師の業務においても、将来的にAIが薬剤師業務を補えるようになると予想されています。
薬局では現在、機械化や自動化が進められており、ほとんどの業務を機械が行っている薬局もあります。
例えば、調剤併設型のドラッグストア「トモズ」では、シロップや軟膏など薬の形状に合わせた調剤機器、複数の薬剤をパック詰めする機械などを導入し、業務の9割を自動化・半自動化しています。
この機械化により、薬剤師が作業を行うよりも正確に早く患者に薬剤を処方できるようになりました。
今後、このように業務のほとんどを自動化する店舗は増えていき、対人業務のみが薬剤師の役割になることも考えられます。
AIが薬剤師の代わりに行える業務が増えていくのに従い、薬剤師の業務内容が減るため、需要も低下していきます。
言い換えると、AIによって自動化できるような業務しかできない薬剤師は、将来就職できない、仕事を失う可能性があると言えます。
【補足】現在は新型コロナウイルスの影響で一時的に需要が低下
2021年現在、新型コロナウイルスの影響で薬剤師の需要は大きく低下しています。
薬剤師の求人倍率は、新型コロナウイルス蔓延前と比較して、大きく低下していることが分かっています。
※求人倍率は医師・薬剤師を合わせたものです。
出典:厚生労働省(2019年・2020年)
グラフから分かる通り、薬剤師の求人倍率はこの1年で半減しています。
感染リスクを最小限にするため、病院・クリニックを訪れる患者の数が減り、薬局の売上が減少しているからです。
派遣やパートは勤務時間短縮や給与削減が行われ、正社員のみ辛うじて雇用が守られている状態です。
求人倍率も派遣・パートでは大きく減少し、正規雇用においても募集を見合わせているものが多くあります。
2. 結論:薬剤師は就職難とは言えず、むしろ活躍の場は広がっている
前章では、長期的に見ると薬剤師は供給過多になると予想されていることをご説明しました。
しかし、供給過多となっても薬剤師の活躍の場は広がっており、就職難とは言えません。
こちらでは薬剤師が就職難ではないと言える理由をいくつか紹介していきます。
薬剤師が就職難ではない理由
2-1.調剤薬局の現場は、人手不足になりやすい
調剤薬局の現場は、人材の入れ替わりが多く人手不足になりやすいです。
6割が女性である薬剤師は、ライフプランの変化によって、結婚や出産で退職や休暇に入る人が多いからです。
事実、30代の女性薬剤師の1割が産休・育休を取得しており、30代で常勤の人数が大きく減少していることが分かっています。(参考:薬剤師に関する基礎資料)
退職や休暇に入る人が多い分、人材を募集する機会が非常に多く、就職もしやすいと言えます。
2-2. 薬局の数はコンビニより多く、働く場所を見つけやすい
調剤薬局はコンビニの店舗数より多く、働く場所を見つけやすいです。
2018年時点で、コンビニは約56,800軒あるのに対し、薬局数は全国に59,613施設とコンビニより多いことが分かります。
そのため、引っ越しをしたり職場を変えたいと思った時に、すぐに就職先の候補が見つけることができます。
施設数が多い分、求人数も多いので希望条件がある場合や近隣で就職先を探す場合でも、ある程度簡単に就職先が見つかります。
2-3. 薬剤師資格は多くの職場で活かすことができる
薬剤師資格は調剤薬局以外にも、ドラッグストアや大学病院など多くの職場で生かすことができます。
薬剤師資格を活かせる仕事
- 治験コーディネーター
- MR
- 研究職
- 製薬会社での開発
薬剤師資格は国家資格であり、保有者数は2020年時点で、32.5万人と非常に希少価値の高い存在です。
薬剤師資格を保持していると、製薬企業や治験業界への就職においても、市場価値が非常に高くなります。
そのため、薬剤師資格を持っていると、就職活動には困らず、就職を有利にすすめることができると言えるでしょう。
2-4. 高齢化に伴い、これまでとは違った分野でニーズが拡大している
高齢化社会が進行する日本では、通院が困難な患者も多く「在宅訪問薬剤管理指導」の需要が高まっています。
「在宅訪問薬剤管理指導」とは、薬剤師が処方箋に基づいて調剤し、患者の自宅に薬を届けに行き、薬の使用状況や生活状況を確認するサービスです。
需要の高まりにより、在宅訪問薬剤管理を行う薬局数は年々増加しています。
(参考:薬剤師に関する基礎資料)
グラフより5年間で、在宅訪問薬剤管理を行う薬局数は3倍以上に増えています。
在宅治療では、患者とのコミュニケーションが求められるため、AIが代替することは不可能です。
このように、在宅医療のニーズの高まりにより、現在とは異なる薬剤師の需要が増えるため、今後も薬剤師は就職しやすい職業と言えるでしょう。
関連記事≫
3分でわかる在宅医療薬剤師の働き方となるための3つのコツ
ここまでのまとめ
- 長期的に見ると薬剤師は供給過多となるが就職難ではない
- 薬剤師資格は多くの職場で生かせる
- 在宅医療分野でニーズが高まっている
3.就職のしやすさは働くエリアによって全く違う
前章では薬剤師は就職難とは言えず、活躍の場が広がっている理由を紹介していきました。
ただ現在、薬剤師の需要には地域差が生まれており働きたいエリアによって、就職難易度は大きく異なっていることも知っておく必要があります。
エリアによる就職難易度の現状
順番にご説明していきます。
3-1. 薬剤師の需要は地域差が大きい
薬剤師の需要には地域差が生まれています。
事実、ある調査によると都道府県別に人口10万人あたりの薬剤師数を比較すると、人口10万人あたりの薬剤師数が最も多い徳島県と、最も少ない沖縄県を比較すると、約100人もの差があることが分かります。
(参考:厚生労働省 薬剤師に関する基礎資料)
人口10万人あたりの薬剤師数が多いのは他に、東京都や兵庫県など人口の多い都道府県が挙げられています。
反対に、福井県や青森県などの人口が比較的少ない都道府県では、平均を大きく下回っているのが現状です。
薬剤師数がすでに平均を上回っている地域では、今以上の需要はあまり見込めず、平均を下回っている地域は薬剤師不足となっており、需要が大きいことが考えられます。
このように、薬剤師の需要には大きな地域差が生じていることが分かりました。
3-2.都市部の薬剤師は飽和気味
都道府県ごとに、人口に対する薬剤師数は大きく異なることを説明しましたが、同じ都道府県内でも薬剤師の需要は大きく異なります。
東京都の人口10万人あたりの薬剤師数を地域別に比較すると、人口の多い地域ほど、人口あたりの薬剤師数が多く、すでに飽和状態となっていることが分かっています。
グラフからわかる通り、東京都の中心部では、全国平均の約3倍もの薬剤師が在籍しており既に飽和状態となっています。
一方、東京都内でも人口が少ない西多摩では全国平均を下回る値となっており、薬剤師不足の状態にあると言えます。
このように、同じ都道府県内でも、薬剤師の需要には差が生まれており、都市部の薬剤師は就職が難しくなっていることが分かりました。
3-3. 需要が高い地方の薬剤師は待遇が良い
人口10万人あたりの薬剤師数が少ない地方では、薬剤師不足が起こっており薬剤師の需要が高いため、都市部で働く薬剤師より年収が高いことが分かっています。
一方、薬剤師が飽和している大阪府・東京都・兵庫県などの人口の多い都市部の都道府県は、全国平均を下回っています。
事実、2020年の都道府県別薬剤師平均年収を調べたところ、平均年収が平均を上回る都道府県のトップ5には地方が多いことが分かりました。
薬剤師平均年収トップ5 |
|
静岡県 | 698.7万円 |
長野県 | 689.5万円 |
高知県 | 642.7万円 |
島根県 | 625.8万円 |
愛知県 | 622.1万円 |
全国平均 | 561.7万円 |
(出典:賃金構造基本統計調査)
薬剤師の平均年収の高い都道府県は静岡県や長野県など地方が多いことが分かります。
これらの都道府県は、薬剤師が不足していて需要の高いため、全国平均より60万円〜100万円多くなっています。
薬剤師が飽和している都市部より、人材不足の深刻化する地方の方が、人材を確保するために地域手当や高年収のものが多く、好待遇の求人を出していることが多いです。
関連記事≫
地方薬剤師は年収が高い?高給の理由や地方転職のメリット・デメリットを解説
4.これからの時代に求められる薬剤師になるには
ここまで、薬剤師は長期的に見ると就職難になると考えられていること、都市部の薬剤師は飽和していることを説明しました。
この章では、将来的に薬剤師が就職難となった時代に求められる薬剤師になるにはどうすれば良いか説明していきます。
将来的に求められる薬剤師になる方法
4-1. コミュニケーション能力を伸ばす
コミュニケーション能力は、かかりつけ薬剤師や在宅医療のニーズが高まるこれからの時代に欠かせないものです。
「対人業務」はAIが代替不可能な領域だからです。
具体的には、以下のような力が必要です。
- 患者さんの感情を理解する力
- 患者さんの反応や様子から違和感に気づく洞察力
- 医師や同僚に信頼される誠実さ
医者の処方箋をただ患者さんに処方するのでなく、患者さんとコミュニケーションを取り不安や希望を汲み取り、患者さん一人ひとりに寄り添った医療を提供することが求められています。
4-2. 複数の専門スキルを持つ
専門性の高い資格を持っている薬剤師は、希少価値が生まれ将来的にも就職しやすくなります。
複数の専門スキルを持っているとさらに需要の高い薬剤師になることができるでしょう。
例えば、将来的分野ごとにこのような専門資格があります。
- 在宅医療分野→在宅療養支援認定薬剤師
- がん医療分野→がん薬物療法認定薬剤師・外来がん治療認定薬剤師
- 救急医療→救急認定薬剤師
また、専門薬剤師には、まず認定薬剤師として認定される必要があります。
認定薬剤師とは
研修認定薬剤師制度のもと、倫理、基礎薬学、医療薬学、衛生薬学及び薬事関連法規・制度など、良質の薬剤師業務を遂行するために、自己研鑽した成果について、一定期間内(新規4年以内、更新3年毎)に所定の単位を取得したと申請した後、認定された薬剤師のこと
引用:研修認定薬剤師制度とは
資格を取得するには、仕事外での勉強など努力が必要となりますが、将来携わりたい分野がある人は希望分野の専門資格を取得していると有利になります。
複数の資格を取得するとより希少価値の高い薬剤師になれるでしょう。
4-3. マネジメント能力を伸ばす
薬剤師として、この先も長く働くためにはマネジメント能力も欠かせません。
特に管理薬剤師として働いた経験があると、マネジメント能力をアピールできます。
「管理薬剤師」とは、各薬局や店舗に配置される責任者です。
将来的に薬剤師が供給過多となった際にも、多くの人材をまとめられる人材は、非常に重宝されると言えるでしょう。
管理薬剤師は月2~5万円程度の管理職手当が支給される職場が多いので収入アップも見込めます。
関連記事≫
管理薬剤師になるには?資格は必要?具体的な道のりを徹底解説
5. まとめ
今回は、薬剤師の就職難について解説しました。
結論として、薬剤師は就職難ではなくむしろ活躍できる場は広がっています。
しかし、長期的に見ると就職難になると予想されているのは事実なので記事でご紹介した、希少価値の高い薬剤師になるための方法を取り入れてみてください。
あなたの未来が明るくなることを祈っています。
現役の転職コンサルタント集団。大手人材会社に在籍しているメンバーが多いため、執筆内容に制約がかからないように『匿名性』とし、裏事情やノウハウを包み隠さずにご紹介しています。