「派遣社員でも有給を取れるだろうか?」と、気になっていますよね。
結論からいうと、派遣社員であっても、一定の条件を満たせば、有給の取得は可能です。
このページでは、多くの派遣社員からの相談に答えてきた私が、以下の順で解説していきます。
すべて読めば、有給について抱えている疑問を解消することができるでしょう。
目次
1. 派遣社員でも有給取得は可能!そもそも有給は雇用形態に関わらず取得できる
派遣社員であっても、条件を満たせば有給休暇を取得することができます。
そもそも「有給を取得できるのは正社員だけ」と認識している方も多いかもしれませんが、有給取得の対象はすべての労働者であり、雇用形態は一切関係ありません。
【条件】 同じ職場に6ヶ月以上、所定労働日数の8割以上勤務
有給取得には、以下の条件が設けられています。
- 働き始めてから6か月以上勤務している
- 算定期間(勤務するべき日)の8割以上出勤している
ここでいう所定労働日数とは、「契約上、働くことになっている日数のこと」です。
週5日出勤・フルタイムの契約となっているのに、週に1日以上のペースで欠勤してしまうなど、所定労働日数に対して2割以上の欠勤があった場合、条件を満たせないので注意が必要です。
次章から派遣社員が有給を取得する際の条件やルールについて、詳しく解説していきます。
2. 派遣社員が有給休暇を取得する際のルール
派遣社員が有給を取得する際には、いくつかのルールが定められています。
それぞれ一つずつ見ていきましょう。
2-1. 付与日数は週当たりの勤務日数次第
有給の付与日数は、週に何日就労しているかによって様々です。
半年経過 | 1年半経過 | 2年半経過 | 3年半経過 | 4年半経過 | 5年半経過 | 6年半経過 | |
フルタイム or 週4勤務(1日8h) |
10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
週4勤務 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
週3勤務 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
週2勤務 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
週1勤務 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
「1日の労働時間に関係なく週5日勤務している場合」あるいは「週4日の勤務であっても、週の所定労働時間が30時間以上である場合」は、勤務開始から半年経過した段階で10日分の有給が付与されます。
その後は1年ごとに追加で付与され、勤続年数が6年目になるまで1年増えるごとに1日ずつ増加していくのです。
「週5日勤務、フルタイム以外の働き方」の場合、勤務日数に応じて有給が付与されます。
契約の内容によって勤務日数が変わり、それに応じて有給の日数も変動しますので、一度上記の表を確認しておきましょう。
補足:有給が10日ある人は、年5日の有給消化が義務化
2019年4月の法改正によって、5日分の有給休暇は、付与されてから1年間で消化しなければならないと取り決められました。
そのため「これまでなんとなく有給を使いづらい」と感じていた人も、気兼ねなく使えるようになりました。もちろん派遣社員であってもこれは同様に適用されます。
ただしこれは、有給休暇を10日以上付与される人だけが対象となるので注意してください。
2-2. 有効期限は付与された日から2年間
有給は、付与された日から2年間という有効期限が設定されており、いつまでも保有しておくことはできません。
有効期限を過ぎると、有給の日数は消滅してしまいます。うっかり忘れてしまわないように気を付けてください。
補足:有給は1年単位で評価される
有給は1年単位で評価され、1年の間で使い切れなかった日数分は翌年分と合算されます。
例えば、初回に付与された10日分のうち3日分が残っている場合、次のタイミングで付与される11日と合算した合計14日分の有給の権利を保有することになるのです。
ただし最初の3日分を使わないまま2年が経過したならば、その分だけ使用する権利を失ってしまいます。
2-3. 支給金額計算方法は企業ごと
有給を使用すると、休暇中でも給料が支払われます。具体的な金額の計算方法は以下の3つで、計算方法は企業によって異なります。
(1). 平均賃金
有給取得以前の3ヶ月分の賃金総額を総日数で割った平均額が支払われます。
これには各種手当も含まれます。
(2). 通常賃金
所定労働時間働いた場合と同額が支払われます。
各種手当は含まれません。
(3). 健康保険法の標準報酬日額
都道府県ごとに決められている等級を基準に決定されます。
この方式を採用する企業は、あらかじめ労使協定を結んでおく必要があります。
有給の支給金額を計算する方法は企業によって様々です。一度、労働条件を確認しておくと良いでしょう。
2-4. 派遣会社への有給申請が必要
派遣社員が有給を取得する場合は、「派遣会社への有給申請」を行う必要があります。
有給の申請や管理を行うのは、派遣社員の雇用主である派遣会社です。
勤怠をWEBツールで管理している場合は、有給申請のシステムも用意されているでしょう。
ただし、実際に働いているのは就業先なので、取得の日付やタイミングなどの相談は、就業先の上司と行う必要があります。
派遣会社と就業先の両方とのやり取りが必要であることを理解しておきましょう。
出勤時間の7割程度の給料を貰える
出典:Twitter
ただ、情報がうまくやり取りされないと、欠勤扱いになってしまうこともあるようなので、注意が必要です。
3. 有給が使いづらいときの対処法
この章では有給が使いづらいときの対処法を紹介します。
「有給を取得可能なことは分かったけど、やっぱり使いづらい」という方は是非参考にしてみて下さい。
それでは一つずつ見ていきましょう。
3-1.早めに申請する
有給を使う際は、常に早めの申請を意識しておきましょう。
時間に余裕をもって申請すれば、就業先も業務量の調整などを行いやすくなるからです。
反対に、切羽詰まったタイミングでの申請となった場合、周囲に余計な労力をかけてしまうため、スムーズに有給取得が認められないことも考えられます。
有給は労働者に認められた権利であり、希望に応じて使用することができるものですが、周囲への配慮も欠かせないことを意識しましょう。
3-2. 派遣会社の担当者に相談する
有給の相談がしづらい雰囲気の場合には、まず派遣会社に相談してみましょう。
担当者が間に立って、円滑に進めてくれる場合があります。
派遣会社から有給利用を促された
とりあえず心覚で使うから待ってろ……
一方で、「派遣会社が有給を使わせないようにしてくる」という声も挙げられています。
有給をなるべく使わせないようにしてると感じる
条件を満たしているのであれば、有給を使用する権利があります。
もし派遣会社が有給の使用を認めない場合は、担当者が誤認しているか、意図的に使わせないようにしているのかもしれません。
条件に該当するかどうかを確認の上、有給取得の権利がある主張をしましょう。
3-3. 有給取得理由にはやむを得ない事情を伝える
どうしても理由を求められる場合には、「やむを得ない事情を伝える」と良いでしょう。
家族や親戚が関係する行事など、「家庭の事情」を理由にするのが最も効果的です。
また、役所の手続きや地域の活動など、平日でなければならない用事も、理由としては充分でしょう。
伝え方の例
- 「今月の下旬頃、実家に顔を出さなければならなくなったので、有給休暇をいただきたいと思います」
- 「友人の結婚式に出席するため、来月の〜日に有給をいただきたいです」
続いて、有給取得に関してよくある質問を紹介します。
4. 有給休暇取得にまつわるFAQ
この章では、有給取得に関するよくある質問を5つほど紹介します。
- Q1. 職場が変わった場合、有給休暇の残り日数はどうなりますか?
- Q2. 有給休暇をまとめて消化することはできますか
- Q3. 退職時に残りの有給休暇を使い切ることはできますか?
- Q4. 有給休暇の買取はできますか?
- Q5. 有給休暇を当日取得することはできますか?
気になる部分があれば、解決しておきましょう。
Q1. 職場が変わった場合、有給休暇の残り日数はどうなりますか?
派遣就業先が変わる場合、残ったままの有給を持ち越すことができます。
有給の管理は雇用主である派遣会社が行うものなので、仮に職場が変わっても、派遣元が同じであれば、有給が消滅することはありません。
派遣会社が変わってしまう場合、残りの有給は未使用のまま消滅してしまいます。
次の職場に持ち越し可能と言われた
出典:Twitter
ただし、派遣会社によっては、「新たな派遣先が決まるまで1ヶ月の空白期間があれば、付与された有給がリセットされる」というルールを設けていることがあります。
契約終了後、まったく勤務をしていない期間次第では、有給がなくなることがあるのです。
一定期間内に仕事が見つからなければ、有給が消滅
8月中に同じ派遣会社で仕事が見つけられば、有給引き継ぎ。
8月中に見つけられなかったら消滅。
今月中に残りも使うか否か、、、
出社日全部有給にするのもありだな、、
出典:Twitter
もし契約終了後の仕事のめどが立っていないという方は、退職前に計画的な有給消化を行っておきましょう。
Q2.有給休暇をまとめて消化することはできますか
有給を使うタイミングは、基本的に労働者に委ねられています。とはいえ、長期休暇をまとめて取得できるかは、状況次第です。
労働者に有給の使用を申請された際、企業は「時季変更権」という権利を行使することができます。
これは、有給を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合にのみ、「別のタイミングでの有給使用を求める権利」です。
このことから、業界繁忙期などに長期の有給を取るのは難しいと言えるでしょう。
しかしながら、これはあくまで有給取得のタイミング変更を求める権利であり、有給の取得自体を拒否・制限するものではありません。
取得時期・理由は基本的に労働者の自由であるため、現実的に考えると、望むタイミングで長期の有給が取得できるかどうかは就業先との交渉次第ということになりそうです。
Q3.退職時に残りの有給休暇を使い切ることはできますか?
もちろん可能です。
退職時の有給使用において、時季変更権は認められていませんので、まとめて有給を消化することに問題はありません。
ただし業務の都合上、退職に向けて少しずつ有給の使用を求められることが多いようです。
少し古い口コミですが、以下のような内容が寄せられていました。
細切れで有給取得しなければならない
客先常駐の技術者派遣会社は総じて有給の支給が法定の下限日数な上に季節ごとの細切れ支給で、絶対にまとまった休みを取らせないぞというメッセージが強い。子持ちで客先常駐エンジニアはやめたほうがいい。
出典:Twitter
契約終了のタイミングに合わせ、引き継ぎなどの業務を考慮しつつ、有給を消化しましょう。
Q4.有給休暇の買取はできますか?
有給休暇の買取は、原則として認められていません。
基本的には、契約終了までの期間で消化してしまうようにしましょう。
ただし、引き継ぎが進まないなど、退職日までに有給の消化が不可能と判断された場合は、例外として認められます。
この判断は企業に委ねられており、業務に支障が出る場合のみ、企業側からの申し出されることもあるようです。
Q5.有給休暇を当日取得することはできますか?
有給を当日取得することも可能です。
有給取得の申請に対して企業が持っている権利は時季変更権だけなので、申請そのものを拒否することはできません。
そのため、当日急な体調不良で休まなくてはならなくなり、その日に有給を使用する、ということももちろん可能です。
ただし、企業が「何日前までに申請すること」といったルールをあらかじめ就業規則に明記していることがあります。
当日急に休暇を取られることで、事業が計画通りに進まなくなってしまうという懸念があるからです。
このことから、当日の有給取得は法的には問題ないが、実際に可能かどうかは企業の裁量次第であると言わざるを得ません。
突然有給を取得すると、周囲に思いもよらぬ負担がかかることも考えられます。やむを得ないケースを除いては、なるべく早い段階で申請をするように心がけましょう。
5. まとめ
このページでは、派遣社員の有給について、詳しく解説しました。
有給は派遣社員にも認められた権利で、有給を使いづらい時は工夫をすれば良い事がわかりました。
ルールや条件を確認の上、職場の雰囲気や周囲の業務状況に配慮しながら、計画的に使っていくように心がけましょう。
あなたのキャリアがより良い方向に向かうことを祈っております。
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