産業保健師とは? 仕事内容・年収など 知っておくべき全知識

「産業保健師とは?」「どんな役割があるの?」と思っていませんか?

産業保健師とは企業で働く保健師のことで、社員の健康管理と働きやすい職場環境づくりを行うスペシャリストです。

社員の健康相談にのったり、メンタルヘルスケアを実施したりと仕事内容は多岐にわたりますが、その働きやすさから人気の高い職業となっています。

この記事では、医療分野への転職を数多く支援してきた私が、産業保健師の仕事内容や年収、なり方などを詳しく解説していきます。

  1. 産業保健師とは企業で社員の健康管理を行うプロフェッショナル
  2. 産業保健師の仕事内容と役割
  3. 【2021年】コロナ禍における産業保健活動の現状と将来性
  4. 産業保健師の平均給与は?|看護師や行政保健師と比較
  5. 産業保健師になるために必要な資格とスキル
  6. 産業保健師という働き方ならではのメリット・デメリット
  7. 産業保健師に向いている人&向いていない人
  8. 産業保健師になるまでの道のりは険しい
  9. 産業保健師になりたい人におすすめする転職サイト

これを読めば、産業保健師についての基礎知識が身に付くでしょう。

1.産業保健師とは企業で社員の健康管理を行うプロフェッショナル

産業保健師とは企業で社員の健康管理を行うプロフェッショナルであり、社員の心身の健康が損なわれないように「予防」することを第一としています。

またメンタルケアや休復職支援など様々な業務において、社員の身近な存在として、産業医や人事部門との橋渡しをする役割も担っています。

社員の健康増進に努めることで、全体の生産性が上がり、結果的に企業利益に反映されていくため、産業保健師は企業において重要な存在です。

産業保健師と産業看護師の違い

  • 産業保健師:看護師資格+保健師資格
  • 産業看護師:看護師資格

保有している資格によって呼び方が変わりますが、業務内容は実際の現場では明確に分けられていません。

2.産業保健師の仕事内容と役割

産業保健師の仕事内容は多岐にわたります。

ここからは、産業保健師の仕事について詳しくお話していきます。

それでは見ていきましょう。

2-1.健康診断を実施する

健康診断は労働安全衛生法のもと義務化されており、産業保健師は、社員が必ず受診できるようサポートします。

健康診断前には実施日程や受診方法についての案内文書を作成し社内に周知させるほか、健康診断を外部健診機関へ委託する場合には連絡、調整なども行います。

また、実施後には結果をもとに、健康状態が思わしくない社員に対して保健指導を行うことも産業保健師の仕事です。

さらに健診結果のデータをもとに、必要に応じて従業員向けの教育や研修、イベントなどを実施する事もあります。

2-2.社員のカウンセリングを行う

産業保健師は社員の身体面と精神面の両方をケアするためにカウンセリングを行います。

予約制で一回あたり30~40分程度相談に乗ることが多く、そこで生活習慣や食事などのアドバイスをします。

以下のように社員の配属部署によって働き方は異なり、それが健康面にも影響するため、社員の生活スタイルについて詳しく聞くことが重要です。

  • 営業:外回り、接待などによる外食が多い
  • 事務職:デスクワークが多いため運動不足になりやすい

社員の悩みは一度のカウンセリングで解決されることは少ないため、何度か回数を重ねていきます。

2-3.社内を巡回して社員の働き方を調査する

社内を巡回して社員の働く様子を観察することも重要な仕事です。

巡回している中で、社員の健康を害する要因がないか調べ、働きやすい環境を整えていきます。

健康に影響する要因

  • 職場の気温、湿度、換気の頻度、分煙・禁煙
  • パソコンの配置、従業員の姿勢
  • 職場のコミュニケーション環境

パソコン操作をする姿勢が悪かったら椅子を交換したり、ブルーライトカットのフィルムを貼ることで眼精疲労を軽減したりと、実際に職場を見ることで具体的な対策をたてやすくなります。

2-4.社員の体調不良や怪我に対応する

体調の悪い社員や怪我人が出た際には産業医と共に対応します。

看護師として働いた経験のある方は、ここで臨床経験を役立てることができるでしょう。

いつでも対処できるように、保健室内の薬や包帯などの備品を管理しておくことが必要です。

2-5.衛生委員会を実施し職場環境の改善を図る

毎月実施される安全衛生委員会を通して、職場環境の改善を図ることも重要な仕事です。

安全衛生委員会では以下のように社員の健康状態や季節ごとに注意すべき事項などが議題となって話し合われます。

  • 健康診断結果
  • ストレスチェック
  • 残業時間
  • インフルエンザ
  • 熱中症

産業保健師は上記の内容を報告するほか、職場環境の課題をあげ、改善案を提案することもあります。

産業医・産業保健師に加え、経営層や各部門長などが出席するため、健康管理体制について意見を交換する貴重な機会となります。

衛生委員会

労働者の危険や健康障害を防止するための対策について調査、審議する委員会で、毎月1回以上の開催が義務付けられている。
経営層、産業医・産業保健師、各部門長が出席し、会社の課題について共有する。

2-6.健康イベントを開催する

社員の健康への意識を高めるために、健康イベントの企画・運営をすることもあります。

健康診断前に集中的にダイエットに挑戦するよう呼び掛けたり、おすすめのエクササイズを紹介したりと、社員の様子を見ながら企画を考えます。

近年はオフィスヨガを取り入れたり、ボランティア活動に参加したりして体を動かす機会をつくっている企業もあります。

出典:一般社団法人ソーシャルスポーツイニシアチブ

企画が通りやすくなるよう、日頃から産業医や社員とコミュニケーションをとっておくことが大切です。

3.【2021年】コロナ禍における産業保健活動の現状と将来性

新型コロナウイルス感染症による影響は産業保健師にも及んでいます。

この章では、以下の流れで産業保健活動の現状と将来性についてお話していきます。

順に見ていきましょう。

3-1.コロナの影響で産業保健活動の現場は大混乱!

新型コロナウイルス感染症の影響により、計画通りの産業保健活動ができていない企業が多くあります。

特にリモートワークの導入により、様々な課題が発生しました。

  • 衛生委員会の実施が延期された、参加人数が絞られた
  • 健康診断の実施が延期された
  • 社員の健康状態・就業環境の把握が困難になった
  • メンタルケアや、就業環境の改善にアプローチしづらい
  • 社内巡回ができない

中でも衛生委員会の実施形態を変えている企業は多く見られ、コミュニケーションが取りづらい状況にあることが分かります。

株式会社ドクタートラストの調査を参考に作成

今後の衛生委員会の実施形態については、状況に応じてオンラインと対面での開催を使い分け、柔軟に対応していく企業が多く見られます。

衛生委員会の実施が通常通りできていない反面で、衛生委員会は企業における新型コロナウイルス感染症について話し合う場にもなっており、重要な役割を果たしていることも事実です。

実際、衛生委員会で新型コロナウイルス感染症の対策について話し合っている企業は全体の80%以上であることが分かります。

株式会社ドクタートラストの調査を参考に作成

ただ、衛生委員会がコロナ禍において大きな役割を担う一方で、感染症対策に傾倒しすぎていることを懸念する声も聞かれます。

感染症対策を最優先にしているために、その他の健康施策に対する取り組みが後回しとなっており、今後はいかに通常業務と両立していくかが課題となるでしょう。

3-2.コロナ禍で産業保健師に求められる役割

産業保健師に求められる役割にも変化が生じ、コロナ禍では以下のような業務が増えています。

  • 社員のメンタルヘルスケア
  • 休復職者への対応

特にリモートワークとなったことで、コミュニケーションの減少、成果主義に移行することへの不安などから社員のストレスが増加しており、メンタルヘルスケアの必要性が高まっています。

直接社員の様子を確認できないため、産業保健師は産業医や人事部門との連携を強め、社員のサポートにあたる必要があります。

株式会社エムステージホールディングスの調査を参考に作成

3-3.産業保健師の将来性|コロナ禍で需要が増加

コロナ禍を通して、産業保健師の需要は増加しました。

実際に、企業の健康経営を支援する株式会社エムステージでは、産業保健に関する資料のダウンロード数や新規問い合わせ数が、コロナ禍以前に比べ1.5倍以上増加しました。

出典:株式会社エムステージホールディングス

産業保健活動は、社員の健康をサポートするだけではなく、企業のモラルや社会的信用にも影響を与えるものであると捉えている企業が増えています。

産業保健活動を活発化させ、健康課題に取り組める人材として、産業保健師の採用ニーズは今後高まっていくでしょう。

4.産業保健師の平均給与は?|看護師や行政保健師と比較

産業保健師の平均年収は約417万円です。(参考:求人ボックス)

ただ、年収は勤める企業によって大きく異なり、大企業の産業保健師として正規雇用された場合、年収は平均より大幅に上回るでしょう。

一方、中小企業で働く場合は思うように年収は伸びず、また非正規雇用の場合は看護師や行政保健師よりも年収が下がることもあります。

とはいえ、看護師や行政保健師よりも高収入となる可能性があることも事実です。

平均年収
病院保健師・看護師483万円
行政保健師418万円

平均月収×12+年間賞与で算出
令和元年賃金構造基本統計調査」「職種別職員の平均給与額」をもとに作成

産業保健師は実績に見合った給与がもらえるため、自分の年収を増やしていきたいと考える方は挑戦してみると良いでしょう。

5.産業保健師になるために必要な資格とスキル

産業保健師になるために必要な資格や、働く上で求められるスキルについて紹介します。

それぞれ見ていきましょう。

5-1.看護師資格と保健師資格を取得する

産業保健師となるには看護師資格保健師資格を取得する必要があります。

看護師資格だけでも企業に応募することはできますが、職場環境の改善や予防医学を重視している企業の場合、保健師の資格を持っている方が選考で優遇される可能性があります。

資格の取得方法については『保健師になるには?主婦・社会人が最短で保健師を目指す基礎知識』で詳しく解説しています。

5-2.基本的なビジネススキルが必要

産業保健師は企業で働くため、基本的なビジネススキルが求められます。

中でも重要なのは以下の5つです。

それぞれ説明していきます。

(1).コミュニケーション能力

産業保健師として働く上でもコミュニケーション能力は重視されます。

産業保健師は同僚の保健師や産業医と連携をとったり、社員のカウンセリングを行ったりすることに加え、人事労務担当者とも関わることが多いです。

勤める企業によって差はありますが、このように産業保健師は多様な役職の人と関わるため、専門知識を分かりやすく伝える力が求められます。

(2).パソコンを使ったデータ分析能力

産業保健師にはパソコンを使ったデータ分析能力が必要です。

産業保健師は健康診断の結果やストレスチェック評価、健康施策アンケートのデータなどを扱います。

毎年集まる社員のデータを各年ごとにまとめ経年で分析したり、健康施策がどのような効果をもたらしたのかを調べたりと、統計の知識が必要となる場面も多いです。

そのため、Excelを用いたデータ分析能力や、統計学の知識があると良いでしょう。

(3).マネジメント能力

業務を円滑に進めるために、マネジメント能力が求められます。

特に、産業保健師は職場に1~2人しかいないため、業務上の課題を見つけ解決する力や、自分で業務の進捗を管理をするスキルは大切です。

また、職場環境の改善を会社の管理職に提案する際には、管理職の立場から見たマネジメント事情を理解しておくと、提案がスムーズに進むでしょう。

様々な役職の社員と関わるため、相手の事情を考慮した行動ができると働きやすいです。

(4).情報収集能力

産業保健師は自ら情報収集をしたり、勉強したりすることも重要です。

というのも、企業に産業保健師は1~2人しかおらず情報が入ってきにくいため、外部の情報にアンテナを立てておかないと最新の情報から遠ざかり、どんどん視野が狭くなってしまうからです。

新型コロナウイルス感染症の動向や治療ガイドラインの改正、法令に関する知識など、日々変化する状況を把握しておかなければなりません。

学会に参加したり他社の産業保健師とつながったりして、自発的に情報収集を行うことが大切です。

(5).基本的なビジネスマナー

企業で働くため、ビジネスマナーを身に付けなければなりません。

電話対応、メール、正しい敬語表現など基本的なビジネスマナーを身に付けていないと、相手に失礼な態度をとってしまう可能性があります。

看護師として働いている場合、病院と企業のビジネスマナーの違いに戸惑うことが多いため、事前に勉強しておきましょう。

(6).英語力があると外資系企業の求人にも挑戦しやすい

英語力があると外資系企業の求人にも挑戦しやすく、周りより一歩リードした転職活動ができるでしょう。

外資系企業では外国人の社員に対してもカウンセリングを行ったり、経営層とのミーティングに参加したりと、英語を用いる機会が多くあります。

また日系企業でも、海外駐在員がいる場合の健康サポートで英語が必要になったり、外国人労働者にフォローを行ったりと、英語力があると働き方の幅が広がるでしょう。

6.産業保健師という働き方ならではのメリット・デメリット

産業保健師は人気の高い職業ですが、働く上でデメリットも存在します。

ここで産業保健師として働くメリット・デメリットを知っておきましょう。

それぞれ説明していきます。

6-1.産業保健師として働く5つのメリット

産業保健師として働くメリットは主に以下の5つです。

実際に保健師や看護師から転職した方の口コミと合わせて、それぞれ見ていきましょう。

(1)残業や夜勤がほぼなく、土日祝日にしっかり休める

産業保健師は企業の営業時間に合わせて働くことになるため、残業や夜勤が基本的にはありません。

多くの会社で9時前後に出社し、休憩を挟み18時頃に退勤する働き方となります。

休みに関しては、多くの企業では土日祝日が休みであるため、多くの保健師の休日もカレンダー通りとなります。

仕事とプライベートのバランスを取りやすい

口コミ・評判

I・K さん(31歳)
一般病院から企業へ転職して一番よかったと感じたのが、カレンダー通りのお休みを確実に取れること。
予定も立てやすく、周りがお休みなのに働く..ということがほとんどなくなりました。
あとは残業もなく、だいたい決まった時間に帰れるので、仕事後の時間も飲み会や習い事に使えるようになって、仕事とプライベートのバランスがすごく取れています。

出典:アンケート

(2)給料や福利厚生が恵まれているケースが多い

社員の健康管理のために専門の保健師を採用するような企業はある程度の大企業であるため、転職を機に給料や福利厚生は良くなる可能性が高いです。

給料については、病院のように年功序列で上がっていくというよりは、保健師の実績や経験によって決まる傾向にあります。

そのため自分の働きを評価されやすく、やりがいにもつながるでしょう。

また福利厚生に関しても、大企業は家賃補助や財形貯蓄制度、レジャー補助などがきっちり完備されており、その面でも待遇は良くなる可能性が大きいです。

詳細は企業ごとに異なるため、入社前にしっかりと確認する必要があります。

生活の質が向上した

口コミ・評判

O・S さん(34歳)
産業保健師として働いていますが、待遇でいうと病院よりいい印象です。
大手企業で、そこの社員さんと同じ水準の福利厚生を受けられるのが嬉しい。
給料は若干上がり、それに加えて、家賃補助やレジャーなどの補助もある。生活の質は間違いなく上がりましたね。

出典:アンケート

(3)デスクワークが多く肉体的な負担が少ない

産業保健師は病院よりもデスクワークが多いため、その分肉体的な負担が少なくなります。

病院で働く看護師は立ち仕事や力仕事が多く、肉体的にきついと感じる方も多いため、デスクワークが多いことが嬉しいと感じる方は多いです。

疲れが溜まりにくい

口コミ・評判

I・K さん(31歳)
正直看護師の立ち仕事はきついと思っていましたが、産業保健師として転職してからは座り仕事が多いので、疲れが溜まりにくいです。そこは嬉しいですね。

出典:アンケート

(4)医療ミスなどのプレッシャーが少ない

産業保健師は医療処置をする頻度がそこまで多くないため、病院のように毎日医療ミスの心配をする必要はほとんどありません。

病院から企業に転職した方の多くが、気持ちが楽になったと回答しています

プレッシャーを感じなくなった

口コミ・評判

Y・O さん(28歳)
以前病棟看護師をしていた時に、大きめのインシデントを起こし、そこからミスが怖いとずっと思っていました。
何度も看護師をやめたい、自分には向かない、と考えながら仕事をしていました。そんな中で誘ってもらえた、今の仕事。
医療処置というよりは、健康管理の仕事が多く、前の職場で感じていた「間違ったらどうしよう」というプレッシャーを今はほとんど感じません。

出典:アンケート

(5)互いの顔が見える環境で働けるためやりがいが大きい

産業看護師は、企業に勤める社員の健康管理をするため、サポートをする相手の顔が見えることでやりがいが生まれます。

地域住民のために働く行政保健師は、子供から高齢者まで幅広い世代に保健サポートを行うため、特定の人と密接な関係を築く機会はあまりありません。

産業保健師は社員のメンタルヘルスや生活習慣についてのカウンセリングなどを通して、相手と長期的に深く関わっていくため、企業でしか味わうことのできない充実感を感じられるでしょう。

口コミ・評判

匿名 さん
産業保健師として働きもうすぐ丸3年になるの早い。病院にいたから尚更予防に携われることにやりがいを感じる。笑顔でのいい報告もとても嬉しい。皆それぞれその人なりの健康でいてほしい。その力に少しでもなれる為には自分も心身共に健康でいなきゃと思う。

出典:Twitter

6-2.産業保健師として働く4つのデメリット

続いて、産業保健師として働くデメリットを4つ紹介します。

順に見ていきましょう。

(1)頼りになる同僚がほとんどいない

企業の医務室などの場合、1~2名体制のケースが多く、何かあった時に頼れる人がいない可能性が高いです。

全ての処置や判断を1人でする必要があるため、プレッシャーは大きいでしょう。

また、病院ではチームが変わったり、患者が次々に入れ替わったりすることから刺激の多い日々を過ごしますが、企業で働く場合はこうした刺激が少なくなります。

毎日ルーティンワークをこなすことになる可能性があるため、自分で課題を見つけて行動することや、部署を超えて相談できる相手を作ることが必要となるでしょう。

(2)ビジネスマナーやパソコンスキルなど覚えることが多い

企業で働く場合、ビジネスマナーやパソコンスキルなどが求められるようになります

特に健康診断の結果などをデータ管理することも多く、必然的にパソコンを使う機会が増えるため、Excelなどのパソコンスキルを磨く必要があります。

看護師から転職する場合、仕事内容が大きく変わるため必然的に新しく覚えることが多く出てくることを覚えておきましょう。

(3)現場感覚を忘れてしまうことがある

企業で働いていると医療処置をする機会があまりないため、看護師から転職をする方は将来病院に戻った時に勘を取り戻すのに苦労する可能性が高いです。

企業でずっと働いていくとは限らず、看護師として病院に戻ることになった場合は完全に復帰するまでに時間がかかるでしょう。

仕事を変えることによるブランクが発生するため、現場感覚を忘れてしまうリスクを理解して転職をしましょう。

(4)看護師や行政保健師と比べ不安定

看護師や行政保健師と比べ、産業保健師の就業環境は不安定なことが多いです。

というのも産業保健師は非正規雇用である場合が多く、契約期間が終了するたびに新しい職場を探さなければならないからです。

非正規雇用の場合ボーナスや有休がもらえないなど、待遇面でも看護師や行政保健師に比べると劣ってしまう可能性があり、資格があってもなかなか安定しません。

産業保健師となるのは狭き門であり、非正規雇用で採用され経験を積んでから正規雇用となるパターンが多いため、働きはじめた頃は苦労を多く感じるでしょう。

7.産業保健師に向いている人&向いていない人

産業保健師という働き方ならではのメリット・デメリットをふまえると、産業保健師に向いている人は以下の特徴に当てはまる方と言えるでしょう。

産業保健師に向いている人

  • 看護師や保健師として働いた経験がある
  • ワークライフバランスを重視して働きたい
  • 自己管理能力が高い
  • データ分析に自信がある
  • 実力を評価されやすい環境で働きたい

反対に、以下のような方は産業保健師には向いていないと言えます。

  • 保健師または看護師として働いた経験がない
  • 最新の医療に関わりたい
  • 自己管理が苦手
  • パソコンでの事務作業やデータ分析に苦手意識がある
  • 安定した職に就きたい

8.産業保健師になるまでの道のりは険しい

産業保健師になるまでの道のりは険しいです。

この章では、産業保健師への転職を考えている方に向けて、転職成功のポイントをお話していきます。

順に見ていきましょう。

8-1.行政保健師や看護師として働いてから産業保健師になるのがおすすめ

産業保健師を目指す場合、いったん行政保健師や看護師として働いてから産業保健師になることをおすすめします。

というのも、産業看護師への転職は経験値の多さが採用に直結しやすいため、キャリアが浅い人には厳しい戦いとなるからです。

また企業内の看護師は1~2名であるため、基本的に全ての業務に1人で対応しなければならず、未経験者への教育体制もほとんどない企業が多いです。

そのため、未経験の方はまずは保健師や看護師としての経験を積むことをおすすめします。

8-2.産業保健師の求人数は少なく、倍率が高い

保健師や看護師の経験があったとしても、そもそもの求人数が少ない上に働きやすく人気な職であるため、転職の難易度は高いです。

実際に、マイナビ看護師に掲載された求人を集計すると、企業の求人数は約300件(2021年7月時点)と少ないことが分かります。

マイナビ看護師の求人をもとに作成

また、企業で働く産業保健師は1~2名しかいないため人づての紹介だけで埋まってしまうケースが多くあり、人脈がないと企業で働くのは難しい場合があります。

転職活動の長期化が予想されるため、企業に転職したい方はなるべく多くの求人をチェックし、きちんと対策を立てる必要があるでしょう。

関連記事
≫産業保健師への転職を成功に導く全知識|高倍率?経験必須?転職の不安を解消

8-3.ハローワーク・大学・人脈などネットワークを駆使して求人情報を集める

求人情報を得るためには、以下のようにアンテナを常にあらゆる方向に張りめぐらせておくことが大切です。

  • 企業で働いている保健師とつながり、情報を得る
  • 母校の教員に相談する(企業で働く保健師の知人・卒業生はいるか)
  • ハローワークや複数の転職サイトに登録して情報を得る

求人は、企業に勤めている保健師が退職する際に突発的に募集がかかり、次の人がすぐに決まるケースが多いため、チャンスを逃さないようにしましょう。

また転職は長期化する可能性があるため、次の転職先が決まるまでは絶対に今の職場を辞めないようにしてください。

8-4.転職サイトのサポートを活用する

企業の求人情報を得るためにはさまざまなネットワークを使いますが、中でも転職サイトのサポートを活用することをおすすめします。

というのも、企業の求人は世の中に出回っていないケースが多く、転職サイトはその非公開求人を保有している可能性が高いからです。

また以下の表でも分かるように、転職サイトは選考の手続代行や面接対策などのサポート体制が充実しているため、転職に不安な方の心強い味方となってくれます。

探し方 求人数サポート体制手続きの手間紹介企業の傾向
転職サイト全国の
大手企業・中小企業
ハローワーク地元の
中小企業・零細企業
知人・母校の紹介

転職サイトでは求人が出るとすぐに教えてもらうことができるため、ハローワークや知人からの紹介を待ちつつ、転職サイトを複数活用することで、得られる情報が増えるでしょう。

9.産業保健師になりたい人におすすめする転職サイト

数ある産業保健師向けの転職サイトの中から、以下の3点を基準に、「総合評価の高い転職サイト」をピックアップしました。

転職サイト選定の3つの基準

  1. 求人の質・量:保健師の求人の量や質は十分かどうか
  2. 提案力:求職者のニーズにぴったりの提案をしてくれるかどうか
  3. サポート力:手厚いサポートを受けられるかどうか

利用者の総合評価順にランキング形式でまとめると、産業保健師におすすめの転職サイトは、以下の通りとなりました。

好条件求人を集めることを考えて、すべて登録することをおすすめします。

転職サイト公開求人数 | 利用満足度
1位
看護roo!
約1,030件 | ★★★★☆4.3
保健師・看護師の満足度No.1
2位
APOPLUS
約960件 | ★★★★☆4.2
保健師・看護師の転職に特化した転職サイト
3位
M.STAGE
非公開 | ★★★★☆4.2
産業保健サービスのノウハウ満載

※求人数:2021年7月時点

それでは、ここからはランキング上位のサイトを1つずつ紹介していきます。

1位.看護roo!

看護roo!』は、数ある看護系転職サイトの中でも利用満足度No.1で、豊富な求人をそろえています。

いかに多くの求人を見つけるかが鍵となる保健師の転職において、選択肢を増やすことは何より重要となります。

したがって、理想の職場に転職したいという方は、ぜひ登録しておくことをおすすめします。

また『看護roo!』は選考対策も充実しているという点も特徴的です。

面接に同席までしてくれるなどサポートの手厚さも特徴で、はじめて転職を試みるという方にもおすすめです。

運営会社株式会社クイック
対象地域主要都市圏
オフィス全国4箇所(東京・大阪・名古屋・横浜)
公開求人数約1,030件
公式ページhttps://kango-roo.com/

2位.APOPLUS


APOPLUS』は保健師・看護師の転職に特化した転職サイトです。

医療機関だけでなく企業の求人情報も業界トップクラスの数を取り扱っており、高い転職成功率を誇っています。

また、業界で唯一企業転職希望者への専門チームを持っており、現場に精通したスタッフがヒアリングから応募、面接、就業までを強力にバックアップしてくれます。

個別相談会や産業保健師セミナーも開催されているため、産業保健師への転職の心強い味方となってくれるでしょう。

運営会社クオールホールディングス株式会社
対象地域全国
オフィス全国10箇所
公開求人数約960件
公式ページhttps://www.kan54.jp/

3位.M.STAGE

M.STAGE』は産業保健のサポートを行っているサービスです。

扱っている求人は、M.STAGEが企業から直接委託された案件であり、多彩な産業医・保健師の求人が紹介されています。

未経験OKの求人もあり、経験豊富な現役保健師がサポートしてくれるため初めての方でも安心です。

また、就職後も経験が浅い方や、より高度な産業保健活動を目指している方に向けて、研修会も開催されているため利用してみると良いでしょう。

運営会社株式会社エムステージ
対象地域全国
オフィス東京
公開求人数非公開
公式ページhttps://sangyohokensupport.jp/medical

産業保健師向けの転職サイトについてより詳しい情報を知りたい方は以下の記事を見てみましょう。

関連記事
≫産業保健師の求人が見つかる!おすすめの転職サイト・エージェントランキング

まとめ

産業保健師について詳しくお話してきましたが、いかがでしたか?

社員の健康相談にのったり、メンタルヘルスケアを実施したりと、産業保健師の仕事内容は多岐にわたりますが、その働きやすさから人気の高い職業となっています。

しかし、産業保健師の求人が出回ることは少なく、激戦となることが予想されるため、目指すのであれば転職サイトを活用し、プロに相談することをおすすめします。

あなたの転職が上手くいくことを願っています。