「派遣社員でも失業保険を受け取ることができるのだろうか?」「受給条件を満たしているのか心配だ」など退職時は悩む事も多いかと思います。
結論からいうと、派遣社員でも失業保険を受け取る手続きは通常と同じです。
失業保険手続きに必要な書類は、契約終了後に派遣会社から送られてきます。
本ページでは、筆者自身が会社を辞める際、実際に失業保険を受給した経験を活かして、派遣社員の方が退職時に知っておくべき失業保険の制度の内容について下記の流れでご紹介します。
- 失業保険とは
- 派遣社員の受給条件は雇用保険加入・求職活動・勤続期間
- 会社都合退職と自己都合退職の違い
- 実際に失業保険を受給する流れ
- 失業保険を受けるために必要なもの
- 【FAQ】失業保険に関してよくある質問と回答
これを読めば、失業保険を受ける際、知っておくべき内容と注意点について理解できます。
※失業保険受給の手続き方法と、最新の制度変更点は『自己都合退職で失業保険受給をするための全知識』で解説しています。
目次
1.失業保険とは
この保険は、被保険者の方が、定年、倒産、契約期間の満了等により離職し、失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探し、1日も早く再就職をしてもらうために支給されるものです。
失業保険は正確には、雇用保険の基本手当(失業等給付)に当たります。
雇用保険で受給できる1日当たりの金額を「基本手当日額」といいます。
この「基本手当日額」は原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」といいます。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となっており、賃金の低い方ほど高い率となっています。
基本手当日額 計算例
(ここでは賃金日額の60%で計算していますが、この割合は給与や年齢によって変化します)
基本手当日額は年齢区分ごとにその上限額が定められており、現在は次のとおりとなっています。
30歳未満 | 6,815円 |
30歳以上45歳未満 | 7,570円 |
45歳以上60歳未満 | 8,330円 |
60歳以上65歳未満 | 7,150円 |
主に厚生労働省によって管理され、手続きや給付はハローワークで行っています。
出典:ハローワーク
2.派遣社員の受給条件は雇用保険加入・求職活動・勤続期間
派遣社員の方も条件を全て満たしていれば、失業保険を受け取ることができます。
受給条件は以下の3点です。
- 雇用保険に加入していること
- ハローワークに来て求職活動を行うこと
- 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること
*ただし会社都合による退職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可
注意:上記3条件を満たすために、さらに必要な条件1つ目の条件「雇用保険に加入しているかどうか」について派遣社員として働いている場合、雇用保険の加入以外にも、追加で以下2つの条件があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
- 31日以上の継続した雇用が見込まれる
さらに、3つ目「離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上ある」の条件についても会社都合による退職と自己都合による退職では、受給条件が大きく変わってくるので注意が必要です。
次の章でさらに詳しく会社都合による退職と自己都合による退職の違いについて説明します。
3.会社都合退職と自己都合退職の違い
この章では会社都合退職と自己都合退職について紹介しその違いを説明します。
自己都合退職 | 会社都合退職 |
|
|
会社都合退職と自己都合退職では、失業保険が支給される期間(つまり総額)に大きく差が出ます。
具体的には以下の2点です。
- 受給開始までの日数
- 受給される期間
これらを整理すると、以下のようになります。
1.受給開始までの日数 | 2.受給される期間 | |
自己都合退職 | 待期期間終了後3ヶ月後 | 90〜150日 |
会社都合退職 | 待期期間終了後すぐ | 90〜330日 |
受給されるまでの日数は、会社都合退職の場合、ハローワークで手続きを行ってからすぐであるのに対し、自己都合退職では、3か月かかります。(正確には手続きを行ってから支給まで『待期期間(7日)』を要するので、手続きしてから最低7日は支給されません)
受給される期間の長さも、会社都合退職の場合90〜330日であるのに対し、自己都合退職では90〜150日と大きく差があることがわかります。
直近の給料を元に複雑な計算をして1日あたりの失業手当を算出するため、一概には言えませんが最大で月収の6ヶ分近くの差が発生する事もあります。
4.実際に失業保険を受給する流れ
失業手当をもらうまでの手順は、自己都合・会社都合ともに分かりにくいため、下記に失業手当をもらうまでの手順をまとめました。
4-1. 退職前の準備
(1)「雇用保険被保険者証」の確認
「雇用保険被保険者証」を受け取っていた場合無くしてないか確認しておきます。
この時、無くした場合は勤務先に再交付の依頼します。
多くの場合は会社で保管しているようです。
図:雇用保険被保険者証
参考:ハローワークホームページ
(2)「離職票」をもらう準備
「離職票」をもらう方法を勤務先と話し合い決めておきます。
ちなみに、離職票とは社員が退職後10日以内に勤務先がハローワークに手続きし、発行されるものです。
通常は郵送で送られることが多いです。
図:離職票
参考:ハローワークホームページ
(3)「雇用保険被保険者資格喪失届」「離職証明書」の確認
勤務先が「雇用保険被保険者資格喪失届」「離職証明書」を作成するので内容を確かめ捺印します。
退職前の準備は以上です。
もし、退職してしまった後であれば元の職場に確認しましょう。
4-2. 退職後の動き
(4)「離職票」の受取
職場から「離職票-1,-2」を受け取ったら内容を確認します。
特に「離職票-2」に記載されている給与金額や退職理由を確認しておきましょう。
2週間経っても受け取れなければ元の職場に確認しましょう。
(5)求職の申込
(4)の受取後すぐに下記の書類等を持参し、ハローワークの窓口へ行き手続きを行います。
- 離職票-1,-2
- 雇用保険被保険者証
- 写真(上半身を写したヨコ2.5cm×タテ3cm)1枚
- 身分証明書(免許証やパスポート)
- 預金通帳(手当ての振込先になる)
- 認印
この時、窓口で簡単な質問があり、問題なければ受付完了です。
(6)待期期間
(5)の手続後7日間は「待期期間」となり、基本手当てを受け取るためにはこの期間職に就かないことが必要です。
(7)「雇用保険受給説明会」に出席((5)の手続後およそ10日後)
雇用保険の内容や今後のスケジュールに関する説明をハローワークにて受けます。
そして、手当の受取に必要な「失業認定申請書」と「雇用保険受給資格者証」を受け取ります。
この時、「1回目の失業認定日(本当に失業しているか確認する日)」が指定されます。
(8)1回目の失業認定日に出席((5)の手続後およそ4週間後)
(7)の説明会で受け取った「失業認定申請書」にそれまでの就職活動の状況を記入して提出します。
この時、「2回目の失業認定日」が指定されます。
(9)2回目の失業認定日に出席((7)からおよそ3ヶ月後)
(7)の説明会で受け取った「失業認定申請書」に(7)以降の就職活動の状況を記入し提出します。
この時、「3回目の失業認定日」が指定されます。
(10)基本手当の受給
(9)から5〜7日後、指定の銀行口座に振り込まれます。
また、これ以降は4週間に1回、指定の「失業認定日」に出席、その度に5~7日後手当が口座に振り込まれます。
受給期間も定期的にハローワークへ足を運ばなければならないので、気をつけましょう。
5.失業保険を受けるために必要なもの
- 離職票
- 雇用保険被保険者証
- 写真(上半身を写したヨコ2.5cm×タテ3cm、かつ3か月以内に撮影したもの)1枚
- 身分証明書(免許証やパスポート)
- 預金通帳(手当ての振込先になる)
- 認印
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードなど)
以上が失業保険を受ける際必要なものとなります。
6.【FAQ】失業保険に関してよくある質問と回答
失業保険に関してよくある疑問をQ&A形式でにしてまとめました。
- Q-1.自分が会社都合退職か自己都合退職か分かりません
- Q-2.失業中はアルバイトはできますか?
- Q-3.求職活動とはどのような活動のことですか?
- Q-4.どれくらいの金額がもらえますか?
- Q-5.再就職手当とは?
- Q-6.派遣社員の3年ルールとは?
Q-1.自分が会社都合退職か自己都合退職か分かりません
自分で自己都合退職だと思っていても実際には会社都合退職だったということもあります。
不安に思っている方は一度ハローワークの窓口で相談してみましょう。
また以下の記事の3章に詳しく記載されています。
気になった方は是非ご覧ください。
Q-2.失業中はアルバイトはできますか?
アルバイトをすることは可能ですが、注意が必要です。
「就労した」と見なされると、手当はストップしてしまいます。
「就労する」ときは、雇用保険に加入しなければならず、加入すると打ち切りとなります。
逆に、雇用保険の加入条件に満たない仕事で、加入しなければ大丈夫です。
ちなみに雇用保険の加入条件は
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 雇用期間が31日以上
この2点を同時に満たす場合です。
つまり、この2点を同時に満たさない範囲でアルバイト等をする必要があります。
Q-3.求職活動とはどのような活動のことですか?
雇用保険受給説明会に参加後、失業認定をしてもらうためには「求職活動」と認められる活動をしなければなりません。
ここで言う、求職活動とは下記のような事です。
- ハローワークの窓口での相談
- ハローワーク主催のセミナーへ参加
- 求人への応募
1回の認定日に必要な「求職活動」は2回です。
Q-4.失業保険でどれくらいの金額がもらえますか?
雇用保険で受給できる1日当たりの金額を「基本手当日額」といいます。
この「基本手当日額」は原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」といいます。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となっており、賃金の低い方ほど高い率となっています。
基本手当日額は年齢区分ごとにその上限額が定められており、現在は次のとおりとなっています。
(令和2年3月9日現在)
30歳未満 | 6,815円 |
30歳以上45歳未満 | 7,570円 |
45歳以上60歳未満 | 8,330円 |
60歳以上65歳未満 | 7,150円 |
Q-5.再就職手当とは?
雇用保険の失業等給付の就職促進給付のうち「就業促進手当」として、「再就職手当」、「就業促進定着手当」、「就業手当」などがあります。
「再就職手当」とは、雇用保険受給資格者が早期に安定した職業に就いた場合に支給することにより、早期の再就職促すための制度です。
基本的には再就職が早ければ早いほど給付金の額も大きくなります。
Q-6.派遣社員の3年ルールとは?
平成27年の労働者派遣法の改正により、派遣社員の方は同じ事業所で3年勤務することができなくなりました。
対象者は平成27年9月30日以降に労働者派遣契約を締結・更新した派遣労働者です。
さいごに
派遣社員の失業保険の受給の流れと注意点について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
この記事で紹介した方法と注意点を知り、うまく活用すれば、失業保険を最大で受け取ることができます。
あなたの退職後の人生がより明るいものである事を心から祈っています。
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