「働き方改革」が提案されたことで、改革推進を行う企業が増えてきました。
しかしながら、そもそもどのような内容なのかがわからない、といった方が多いのではないでしょうか。
結論、働き方改革とは以下の3つの課題に取り組むことです。
- 長時間労働の解消
- 非正規社員と正社員の格差是正
- 労働人口不足の解消(高齢者の就労促進)
さらにこのページでは、
「働き方改革の推進が始まった背景は何か?」
「推進にあたっての課題は何か?」
といった疑問を解決するため、働き方改革に関して以下の流れで解説していきます。
<目次>
このページを読めば、働き方改革の理解度が高まり、より良い働く環境作り、環境選びに繋がる事でしょう。
1. 働き方改革の目的と背景
働き方改革とは、労働環境の改善や多様な働き方の推進を目指す取り組みのことです。
一億総活躍社会の実現に向けて、政府主導で実施されます。
ここでは、その具体的な内容について以下の2点を述べていきます。
それでは見ていきましょう。
1-1. 働き方改革の目的は、「働きやすい社会」を実現すること
働き方改革を推進する目的は、労働者にとっての「働きやすい社会」を実現していくことにあります。
そのためには、意思、能力、事情に応じて、誰もが多様で柔軟な働き方を選択できる環境を作り上げることが重要とされています。
すなわち、働く意欲のある人が無理なく働ける環境になることで、労働者が確保され生産性が向上し、社会全体にとっても良い影響が期待できる、というわけです。
1-2. 背景にあるのは、生産年齢人口の減少
働き方改革が掲げられた背景には、「生産年齢人口の減少」が挙げられます。
生産年齢人口とは労働力の主力となる15~64歳のことで、第二次ベビーブームの団塊世代が労働力となった24年前の平成7年をピークに生産年齢人口は減少の一途をたどっています。
出典:「日本の将来推計人口」
国立社会保障・人口問題研究所
このままでは国全体の生産力や国力が低下してしまうという危機感を持った政府が、労働者を確保し生産性の向上を目指すために「働き方改革」を掲げた、というわけです。
1-3. ここまでのまとめ
働き方改革とは、生産年齢人口の減少を背景に掲げられた、「働きやすい社会」の実現を目指す改革の事でした。
「働きやすい社会」の実現のためには、誰もが多様で柔軟な働き方を選択することができる環境を作り上げることが重要です。
ではここまでの内容を踏まえて、「働きやすい社会」の実現のために、実際に働き方改革で解決するべき課題を見ていきましょう。
2. 働き方改革で解決するべき課題
働き方改革の目的である「働きやすい社会」を実現するために、具体的に以下の3つの課題の解消が目指されています。
働き方改革が目指す3つのこと
では、それぞれの詳しい内容を説明していきます。
2-1. 長時間労働の解消
働き方改革の目的である、「働きやすい社会」を実現するためには、長時間労働の解消が非常に重要です。
過労死や劣悪な労働環境が社会課題として多く取り上げられるようになった昨今でも、長時間労働の問題は、依然として深刻です。
事実、労働者一人あたりの労働時間は年々減少していますが、所定外労働時間は増減を繰り返しています。
おおむね年間110~130時間程度を推移しており、減少しているとは言い切れない状況です。
また、精神障害に係る労災請求件数は増加傾向にあり、業務によって心理的負担を強いられている労働者は依然として多いという現状が伺えます。
参考:「過労死の現状」厚生労働省
そのため、働き方改革を通して企業における長時間労働問題を解消し、働く人が健康で活躍できる環境を整備する必要があるのです。
具体的には、以下のような取り組みが行われています。
- 時間外労働時間に上限を設ける
- ノー残業デーの導入
- リモートワークの推進
- フレックスタイム制度の導入
2020年からはコロナウイルスの影響もあり、リモートワークが急激に広がりを見せました。
今後もこれらの取り組みが多くの企業に広がっていくことが期待されます。
2-2. 非正規社員と正社員の格差是正
多様な働き方を実現するためには、雇用形態にとらわれない人材の確保と、それに伴う雇用格差の是正が重要です。
現状では、業務内容が同一であっても、雇用形態が違うだけで立場や給料に格差が生じている場合が多く、正社員以外の雇用形態に対するマイナスイメージが多い状況です。
実際に、働き方改革を通じて、雇用形態によらない公平な待遇が実行されれば、働く意欲のある人が主体的に働き方を選べる環境ができるでしょう。
働き方改革では、非正規社員の待遇改善にあたって、以下のような取り組みが実施されています。
- 同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度およびガイドラインの作成
- 非正規雇用労働者の正社員化やキャリアアップの推進
同一労働同一賃金とは、同じ職場でおなじ仕事をする正規雇用の社員と、非正規雇用の社員との待遇や賃金格差をなくす、という考え方です。
働き方改革関連法の1つとして義務化されており、大企業では2019年4月、中小企業は2020年11月までがそれぞれ施行期日となっていました。
より詳細に関しては「3-2. 同一労働同一賃金の対策」で述べています。
2-3. 労働人口不足の解消(高齢者の就労促進)
生産年齢人口の減少の対策としては、上述の非正規社員の格差是正に加え、働く意欲が高い労働者が就労しやすい環境づくりも重要となります。
働き方改革では、高齢者の就労促進に向け、以下のような取り組みが実施されています。
- 継続雇用の延長
- 定年支援の延長
- 高齢者と企業のマッチング支援
これらの取り組みを通して柔軟な働き方が実現されれば、働きやすい社会が確保され、高齢者が労働に参加できるような環境となり、生産年齢人口減少を補填することができるでしょう。
2-4. 働き方改革の課題まとめ
働き方改革における課題として、特に重要な以下の3つの課題を挙げました。
- 長時間労働の解消
- 非正規社員と正社員の格差是正
- 労働人口不足の解消(高齢者の就労促進)
では、働き方改革を推進するにあたって、企業はどのような対応を取る必要があるのでしょうか。
次章では、実際に企業が行っていくべきことについて述べていきます。
3. 働き方改革推進における企業の課題
本章では、働き方改革を推進していくにあたり、実際に企業が取り組むべき以下の3つの施策を解説します。
では、それぞれ見ていきましょう。
3-1. 労働時間の「見える化」
長時間労働の対策としてまず考えられる施策は、従業員の労働時間を可視化することです。
従業員の労働時間を正しく把握することで、働き方を見直すきっかけにもなるでしょう。
とはいえ、自主的に労働時間を短く申告したり、上司からの圧力で申請時間を調整したりするケースも少なくありません。
誰が、どのくらい働いて、時間外労働や休日出勤をしているかなどを正確に把握するためには、労働時間を記録するような勤怠システムを導入するなど、管理体制を強化しておく必要があるでしょう。
ちなみに、時間外労働の上限規則については、「働き方改革関連法」により以下のように定められました。
大企業では2019年4月から、中小企業では2020年11月から導入が始まっています。
法定労働時間に対して、会社独自で定めた所定労働時間というものもあります。しかし残業の基準に用いられるのは法定労働時間の方で、所定労働時間は関係ありません。1日で8時間を超えて働けば、それは残業と見なされます。1日9時間働くと1時間、1週間で合計50時間働いた場合は10時間が残業時間となります。
- 平時の残業時間上限は、1ヶ月で45時間、1年で360時間。
- 特別条項を利用した場合、1年で合計6ヶ月の間だけ、月の残業時間上限が100時間まで伸びる。(休日労働の時間も残業時間に含める)
- 特別条項を利用した場合、1年720時間以内の残業が認められる。
- 特別条項があっても、残業時間には複数月平均80時間以内の制限が設けられる。(休日労働の時間も残業時間に含める)
引用:「時間外労働・休日労働に関する協定届」
厚生労働省
3-2. 同一労働同一賃金の対策
同一労働同一賃金を実現するためには、以下のような施策が有効です。
- 現労働者の雇用形態を確認すること
- 各雇用形態の待遇の状況を確認すること
- 待遇に差がある場合、差を設けている理由を確認すること
- 待遇の差が不合理ではない事を説明できるように準備しておくこと
この他にも、就業規則や賃金規定の見直しや、手当等の改善など、検討しなければいけないことは多くあるため、計画的に対応を進めていきましょう。
そもそも同一労働同一労働とは、「同じ職場でおなじ仕事をする正規雇用の社員と、非正規雇用の社員との待遇や賃金格差をなくす」という考え方です。
こちらは厚生労働省によって、以下のように定義されています。
同一労働同一賃金は、いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇さの解消を目指すものである
引用:「同一労働同一賃金ガイドライン」厚生労働省
これを踏まえて自分の会社にどんな施策が必要なのか、今一度考えていくことが大切です。
3-3. 高齢社員が活躍できる環境づくり
高齢者の就労促進を実現するためには、以下の2つの施策が挙げられます。
- 離職者の再雇用
- 65歳定年制の導入
離職者の再雇用は、企業にとっては未経験者の採用よりも教育コストの負担が少なく、更に即戦力としての活躍を期待できるというメリットがあります。
さらに、労働者にとっても慣れた業務で無理なく社会復帰できるので、両者にとってメリットのある施策といえるでしょう。
65歳定年制に関しては、2013年4月に「高齢者等の雇用の安定等に関する法律」の一部が改正されたことにより、希望すれば65歳まで働き続けることが可能となっています。
これに伴い、厚生年金の支給開始年度の段階的な引き上げも始まりました。
参考:「高年齢者雇用促進への政府の取組」厚生労働省f
定年を伸ばすことで、長く働くモチベーションの高いベテラン社員の確保ができるでしょう。
ただし、賃金の確保や退職金への配慮など、対応しなければならないポイントはいくつかあるため、注意が必要です。
3-4. 施策のまとめ
本章では、主に企業側の目線で働き方改革を実現するために取り組むべき以下の施策を解説してきました。
- 労働時間の「見える化」
- 同一労働同一労働の対策
- 高齢社員が活躍できる環境づくり
では、転職者側の目線では、働き方改革で何が変わるのでしょうか。
次章では、働き方改革を受けて、転職者が就職先の企業を見る際により一層注目したいポイントを解説します。
4. 転職者が転職時に見るポイント
転職者にとって、仕事内容や給与以外にも重要なポイントはいくつかあります。
特に、働き方改革を受け、企業がどんな取り組みを行っているのかは、転職者にとって重要な評価基準となるでしょう。
求人を探す際には、以下の3点をチェックしてみましょう。
転職の時にチェックすべき3ポイント
では、それぞれ説明していきます。
4-1. 給与や仕事内容はマッチしているか
まず大前提として、給料や仕事内容、雇用形態は最優先で見る項目です。
企業は、「仕事内容に適した給与か」「雇用形態はどうなっているのか」を分かりやすく適切に表記する必要があります。
給与や仕事内容に関して曖昧な返答しかされない場合や仕事内容に対して異常に給与が高く設定されている場合は、ブラック企業の可能性もあるので注意してください。
4-2. 多様な働き方を認めているか
以下のような制度を導入して多様な働き方を認めている企業は、労働者にとって非常に働きやすい環境です。
- フレックスタイム制
- コアタイム制
- 時短勤務推奨
- 在宅・テレワークOK
このような制度の導入は、労働者の働きやすさを優先して考えてくれていることの表れでもあります。
業界・業種によってはこれらの制度を導入できない企業もあると思いますが、「多様な働き方を認めている会社か」という観点で転職先を選ぶと良いでしょう。
4-3. その他業務環境改善へ取り組んでいるか
企業が働き方改革にどう取り組んでいるかに関して、転職者が見るポイントは、これまでに挙げたもの以外にもまだまだ多くあります。
- 福利厚生
- 女性が活躍できる環境か
- 人間関係
転職の際には、企業の働き方改革への取り組み体制を見るため、企業の公開情報を正確に見極めるようにしましょう。
5. まとめ
ここまで、
- 働き方改革の概要
- 企業が実際に取り組むべき課題
- 転職者が企業選びの際に見るポイント
をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
働き方改革は始まったばかりですが、今回のページにより皆さんの理解が深まり、これから先の働きやすい環境作り、環境選びの参考になれば幸いです。
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