
産業保健師への転職を考えていて、「未経験では難しいって聞いたけど、実際どうなの?」「未経験で転職するにはどうすればよいのだろう」と悩んでいませんか。
事実、未経験で産業保健師になるのは難しく、求人もなかなか見つかりません。
産業保健師は求人数がそもそも少なく、経験者が優遇されるため、未経験から転職するためには入念に対策を立てておく必要があります。
そこでこの記事では、長年保健師の転職をサポートしてきた私が、未経験から産業保健師に転職する方法について以下の流れで解説していきます。
- 未経験で産業保健師になるのはかなり厳しい
- 未経験からの転職にプラスαでおすすめの資格
- 未経験から産業保健師になるのに重要な経験・スキル
- 未経験向けの求人と探し方のポイント
- 産業保健師の未経験者向け求人が見つかるおすすめ転職サイト
すべて読めば、産業保健師として働くまでの道のりがわかり、転職成功への一歩を踏み出すことができるでしょう。
編集部が実施した看護師723名へのアンケート調査に基づくサポート力や求人の数・質への満足度が高い転職サイトベスト3は、下記の3つ。
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目次
1.未経験で産業保健師になるのはかなり厳しい
まず、未経験から産業保健師になるのはかなり厳しいです。
その理由を産業保健師の転職事情と共に説明していきます。
それぞれ見ていきましょう。
1-1.未経験歓迎の求人はわずか
産業保健師への転職は、そもそもの求人数が少ないうえにほとんどの企業が経験者を求めているため、未経験歓迎の求人はわずかしかありません。
実際にマイナビ看護師に掲載された求人を集計すると、産業保健師の求人70件のうち未経験歓迎のものは13件と、全体の20%未満であることが分かります。(2021年7月時点)
※求人数:2021年8月更新
出典:マイナビ看護師
1-2.非正規雇用がほとんどで正規雇用は難しい
産業保健師の求人は非正規雇用の方が多く、未経験で正規雇用を狙うのは難しいでしょう。
以下のグラフでも分かるように、未経験歓迎かつ正規雇用の求人はたった4件であり、なかなか求人を見つけることはできません。
※求人数:2021年8月更新
出典:マイナビ看護師
1-3.募集は1~2名がほとんどで倍率が高い
産業保健師の募集のほとんどは定員が1~2名しかないため、倍率が高いです。
また、人づての紹介だけで埋まってしまうケースが多くあり、人脈がないと企業で働くのは難しい場合があります。
出典:MCナースネット
前任の産業保健師が休職・離職したために人員補充として突発的に募集がかかることが多いため、なるべく多くの求人をチェックし、きちんと対策を立てる必要があります。
ここまでのまとめ
未経験から産業保健師に転職するのは、以下のような理由から厳しい道のりとなります。
- 未経験歓迎の求人はわずか
- 非正規雇用がほとんどで正規雇用は難しい
- 募集は1~2名がほとんどで倍率が高い
未経験でも転職に成功するためには、産業保健について勉強することと、自己PRできるスキルや資格を身に付けておくことが重要となります。
次章から、産業保健師についての知識が深まり選考で武器となる資格・スキルについて紹介していくので、よく読んで転職の準備をしていきましょう。
2.未経験からの転職にプラスαでおすすめの資格
未経験者は書類選考の時点で落とされてしまうことも珍しくありませんが、武器となる資格を持っていると履歴書が通りやすくなる可能性があります。
プラスαとしておすすめの資格を紹介するので、産業保健についての知識を深めるためにも取得を検討してみましょう。
それぞれ紹介していきます。
2-1.第一種衛生管理者(国家資格)
労働環境における衛生面の改善や、疾病の予防処置などを行い、事業場の衛生全般の管理をする者のことを第一種衛生管理者と言います。
50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業場専属の衛生管理者を選任しなければならないと定められているため、取得しておくと選考で有利となる可能性があります。
第一種衛生管理者は国家資格ですが、保健師の資格がある場合は試験を受けず申請手続きをするだけで資格を取得することができるためおすすめです。
詳しくはこちら≫労働管理教育センター
2-2.産業カウンセラー
心理学的手法を用い、働く人が抱えるメンタルヘルスの関わる問題を自力で解決できるように援助する人のことを産業カウンセラーと言います。
メンタルヘルスケアに関する知識をつけたい方は、産業カウンセラーの資格を取得してみるのも良いでしょう。
ただ資格の取得・維持にはお金がかかり、また取得から5年経つと更新する必要があるため注意しましょう。
- 養成講座:297,000円(税込)
- 受験料:33,000円
- 登録料(入会金):7,000円
- 年会費:10,000円
詳しくはこちら≫一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
2-3.公衆衛生士
公衆衛生士は、特定の人が集まる場所での感染症・疫病の予防と蔓延防止に対して対処、アドバイスをし、公衆衛生知識の普及をする人のことです。
衛生環境の整備や防疫対策に関する知識が付くため、産業保健師として職場環境の改善に注力したい方はこの資格を取ることでアピールにつながるでしょう。
また、新型コロナウイルス感染症への対策を講じる上で産業保健師は大きな役割を果たしているため、感染症の知識が身に付く公衆衛生士は今取得しておくのがおすすめです。
- 受験料:9,350円(税込)
- 登録手数料(任意、更新5年):16,500 円(税込)
詳しくはこちら≫NPO 先端医療福祉開発研究会
2-4.MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
MOSはWordやExcelなど、officeの利用スキルを証明する民間資格です。
officeの基本操作を学ぶことで作業の効率化が狙えるため、パソコン操作に苦手意識を感じている方は、勉強の一環として取得してみると良いかもしれません。
受験料(一般価格)は以下の通りです。
- 1科目:10,780円(税込)
- 2科目:21,560円(税込)
- 3科目:32,340円(税込)
詳しくはこちら≫マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)
3.未経験から産業保健師になるのに重要な経験・スキル
未経験から産業保健師となるためには、経験とスキルをいかにアピールするかが鍵となります。
選考で重視される経験やスキルを以下にまとめたので、よく読んでおきましょう。
- 3-1.行政保健師として特定保健指導を行った経験
- 3-2.看護師としての3年以上の臨床経験
- 3-3.コミュニケーション能力
- 3-4.パソコンを使ったデータ分析能力
- 3-5.マネジメント能力
- 3-6.情報収集能力
それぞれ説明していきます。
3-1.行政保健師として特定保健指導を行った経験
産業保健師は社員の健康相談に乗ることが多いため、行政保健師として特定保健指導を行った経験があると選考で評価されやすいです。
行政保健師として働いた経験のある方は、選考でアピールしましょう。
特定保健指導とは
特定健診(生活習慣病予防のための検診)の結果から、生活習慣病の発症リスクが高い方を対象に、保健師や管理栄養士などが行うサポートのこと。
バランスの取れた食生活や適度な運動習慣などを取り入れ、生活習慣病の予防を目指す。
3-2.看護師としての3年以上の臨床経験
臨床経験は必須ではありませんが、3年以上の経験があると選考に有利です。
出典:PASONA
産業保健師の仕事は「病気や怪我の予防」であるため、企業で実際に治療を行う機会は少ないですが、工場に勤める場合は応急処置を行う頻度が高い傾向にあります。
看護師として配属されている科によって専門知識は異なるため、自分がどのような場面で臨床経験を活かせるのかを具体的にアピールできると良いでしょう。
- 内科・糖尿病内科→高血圧・糖尿病の方への健康指導
- 外科→怪我の応急処置(パソコン作業による腱鞘炎、工場での事故対応など)
- 精神科→社員のメンタルヘルスケア
3-3.コミュニケーション能力
産業保健師として働く上でもコミュニケーション能力は重視されます。
産業保健師は同僚の保健師や産業医と連携をとったり、社員のカウンセリングを行ったりすることに加え、人事労務担当者とも関わることが多いです。
勤める企業によって差はありますが、このように産業保健師は多様な役職の人と関わるため、専門知識を分かりやすく伝える力が求められます。
3-4.パソコンを使ったデータ分析能力
産業保健師にはパソコンを使ったデータ分析能力が必要です。
産業保健師は健康診断の結果やストレスチェック評価、健康施策アンケートのデータなどを扱います。
毎年集まる社員のデータを各年ごとにまとめ経年で分析したり、健康施策がどのような効果をもたらしたのかを調べたりと、統計の知識が必要となる場面も多いです。
そのため、Excelを用いたデータ分析能力や、統計学の知識があると良いでしょう。
3-5.マネジメント能力
業務を円滑に進めるために、マネジメント能力が求められます。
特に、産業保健師は職場に1~2人しかいないため、業務上の課題を見つけ解決する力や、自分で業務の進捗を管理をするスキルは大切です。
また、職場環境の改善を会社の管理職に提案する際には、管理職の立場から見たマネジメント事情を理解しておくと、提案がスムーズに進むでしょう。
様々な役職の社員と関わるため、相手の事情を考慮した行動ができると働きやすいです。
3-6.情報収集能力
業務を円滑に進めるために、マネジメント能力が求められます。
特に、産業保健師は職場に1~2人しかいないため、業務上の課題を見つけ解決する力や、自分で業務の進捗を管理をするスキルは大切です。
また、職場環境の改善を会社の管理職に提案する際には、管理職の立場から見たマネジメント事情を理解しておくと、提案がスムーズに進むでしょう。
様々な役職の社員と関わるため、相手の事情を考慮した行動ができると働きやすいです。
4.未経験向けの求人と探し方のポイント
未経験者向けの求人を見つけることは難しいため、以下のポイントをおさえて戦略的に探しましょう。
- 4-1.なるべく規模が大きく保健師が多くいる企業の求人を探す
- 4-2.正規雇用にこだわりすぎない
- 4-3.eナースセンター・大学・人脈などネットワークを駆使して求人を集める
- 4-4.転職サイトのサポートを活用する
それでは見ていきましょう。
4-1.なるべく規模が大きく保健師が多くいる企業の求人を探す
まず、未経験者の方はなるべく規模が大きく保健師が多くいる企業の求人を探しましょう。
というのも、規模の大きな企業では教育体制が整っている可能性が高く、他の保健師がいると初めての業務でも安心だからです。
保健師は職場に1~2名しかいないことがほとんどであるため、未経験者の受け入れ態勢が整っている企業が望ましいでしょう。
4-2.正規雇用にこだわりすぎない
未経験者向けの求人数はかなり少ないため、正規雇用にこだわりすぎないことも一つのポイントです。
産業保健師の求人には、期間限定の契約社員など非正規での求人があり、そこで経験を積んでおくことで、次に正規雇用の求人に挑戦した時に有利になります。
また非正規で採用された後に、業界内に接点ができたり実績を評価されたりすることで、正規雇用の誘いが来るチャンスもあるでしょう。
実際に、下記のような方もいらっしゃいました。
企業で働く看護師と接点を持つことが大切
出典:アンケート
上記のようなケースもあるため、正規雇用にこだわりすぎない方が、企業で働くチャンスが増えるでしょう。
4-3.eナースセンター・大学・人脈などネットワークを駆使して求人を集める
求人情報を得るためには、以下のようにアンテナを常にあらゆる方向に張りめぐらせておくことが大切です。
- 企業で働いている保健師とつながり、情報を得る
- 母校の教員に相談する(企業で働く保健師の知人・卒業生はいるか)
- eナースセンターや産業保健総合支援センターの支援を受ける
- ハローワークに登録して情報を得る
- 転職サイトのサポートを活用する
特にeナースセンターや産業保健総合支援センターでは、産業保健に関する情報を入手したり研修を受けたりすることもできるため、未経験で産業保健について勉強したい方はぜひ利用してみましょう。
eナースセンター
各都道府県の公益社団法人看護協会が運営しており、看護職をサポートするための様々な事業を行う。無料で職業紹介や研修を受けることができ、地元の情報を集めたい方におすすめ。
詳しくはこちら≫eナースセンター
産業保健総合支援センター(さんぽセンター)
産業医や産業保健師などの支援や、事業者への健康管理の啓発を行うことを目的とし、全国47都道府県に設置されているサポートセンター。産業保健に関する相談や研修、情報の提供などを行う。
詳しくはこちら≫労働者健康安全機構(JOHAS)
4-4.転職サイトのサポートを活用する
企業の求人情報を得るためにはさまざまなネットワークを使いますが、中でも転職サイトのサポートを活用することをおすすめします。
というのも、企業の求人は世の中に出回っていないケースが多く、転職サイトはその非公開求人を保有している可能性が高いからです。
また以下の表でも分かるように、転職サイトは選考の手続代行や面接対策などのサポート体制が充実しているため、転職に不安な方の心強い味方となってくれます。
探し方 | 求人数 | サポート体制 | 手続きの手間 | 紹介企業の傾向 |
転職サイト | ◎ | ◎ | ◎ | 全国の 大手企業・中小企業 |
eナースセンター さんぽセンター ハローワーク | ○ | ○ | △ | 地元の 中小企業・零細企業 |
知人・母校の紹介 | ○ | △ | △ | ‐ |
転職サイトでは求人が出るとすぐに教えてもらうことができるため、eナースセンターや知人からの紹介を待ちつつ、転職サイトを複数活用することで、得られる情報が増えるでしょう。
5.産業保健師の未経験者向け求人が見つかるおすすめ転職サイト
数ある産業保健師向けの転職サイトの中から、以下の3点を基準に、「総合評価の高い転職サイト」をピックアップしました。
転職サイト選定の3つの基準
- 求人の質・量:保健師の求人の量や質は十分かどうか
- 提案力:求職者のニーズにぴったりの提案をしてくれるかどうか
- サポート力:手厚いサポートを受けられるかどうか
利用者の総合評価順にランキング形式でまとめると、産業保健師におすすめの転職サイトは、以下の通りとなりました。
好条件求人を集めることを考えて、すべて登録することをおすすめします。
転職サイト | 公開求人数 | 利用満足度 |
1位 MCナースネット | 約1万5,000件 | ★★★★☆4.3 |
2位 APOPLUS | 約630件 | ★★★★☆4.2 保健師・看護師の転職に特化した転職サイト |
3位 M.STAGE | 非公開 | ★★★★☆4.2 産業保健サービスのノウハウ満載 |
※求人数:2021年8月更新
それでは、ここからはランキング上位のサイトを1つずつ紹介していきます。
1位.MCナースネット
『MCナースネット』は看護師・保健師向けの転職サイトです。
未経験歓迎の求人を多く保有しており、産業保健師の求人特集も組まれているためおすすめです。
単発・派遣の求人紹介にも強く、転職活動を行いながら単発勤務をするというワークスタイルを提案してもらうことができるため、長期化しやすい産業保健師の転職には最適と言えるでしょう。
運営会社 | 株式会社 メディカル・コンシェルジュ |
対象地域 | 全国 |
オフィス | 全国25箇所 |
公開求人数 | 約1万5,000件 |
公式ページ | https://mc-nurse.net/ |
2位.APOPLUS
『APOPLUS』は保健師・看護師の転職に特化した転職サイトです。
医療機関だけでなく企業の求人情報も業界トップクラスの数を取り扱っており、高い転職成功率を誇っています。
また、業界で唯一企業転職希望者への専門チームを持っており、現場に精通したスタッフがヒアリングから応募、面接、就業までを強力にバックアップしてくれます。
個別相談会や産業保健師セミナーも開催されているため、産業保健師への転職の心強い味方となってくれるでしょう。
運営会社 | クオールホールディングス株式会社 |
対象地域 | 全国 |
オフィス | 全国10箇所 |
公開求人数 | 約630件 |
公式ページ | https://www.kan54.jp/ |
3位.M.STAGE
『M.STAGE』は産業保健のサポートを行っているサービスです。
扱っている求人は、M.STAGEが企業から直接委託された案件であり、多彩な産業医・保健師の求人が紹介されています。
未経験OKの求人もあり、経験豊富な現役保健師がサポートしてくれるため初めての方でも安心です。
また、就職後も経験が浅い方や、より高度な産業保健活動を目指している方に向けて、研修会も開催されているため利用してみると良いでしょう。
運営会社 | 株式会社エムステージ |
対象地域 | 全国 |
オフィス | 東京 |
公開求人数 | 非公開 |
公式ページ | https://sangyohokensupport.jp/medical |
産業保健師向けの転職サイトについてより詳しい情報を知りたい方は以下の記事を見てみましょう。
関連記事
≫産業保健師の求人が見つかる!おすすめの転職サイト・エージェントランキング
まとめ
産業保健師について詳しくお話してきましたが、いかがでしたか?
未経験からの転職は厳しい道のりとなるため、求められている経験・スキルをおさえ選考でしっかりとアピールすることが大切です。
転職サイトは求人や転職ノウハウなど多くの情報を持っているため、ぜひ利用してみてください。
あなたの転職が上手くいくことを願っています。
現役の転職コンサルタント集団。大手人材会社に在籍しているメンバーが多いため、執筆内容に制約がかからないように『匿名性』とし、裏事情やノウハウを包み隠さずにご紹介しています。
そこから、産業保健師との接点をいくつか作り、そのおかげで誘いを受け、正社員として働けています。
今もたまに看護師を紹介してほしいという話を受けることがあり、いかに企業で働く看護師と接点を持つかがすごく大切だなと感じています。