介護職の離職率は意外と高くない?他職種との比較&職員がすぐ辞めやすい施設の見分け方

「介護職の離職率って高そう」「働きたいけど続けられるか不安…」と思っていませんか?

介護職の離職率は実は高くありません。

介護職の離職率は15.4%で、全職種の離職率15.6%と比べても平均以下であることが分かります。(令和元年調査)

人手不足な職種であるために離職率が高いイメージがありますが、介護職の実情を把握して正しい知識を身に付けていきましょう。

ここからは人材会社で多くの介護職の転職をサポートしてきた私が、介護職の離職率について解説していきます。

  1. 実は高くない!介護職の離職率は15.4%
  2. 「介護業界は離職率が高い」と思われている理由と介護現場の実態
  3. 介護士が転職する主な理由7選
  4. 離職率が低い介護施設の見極め方
  5. 長く働ける介護施設に転職したい方はプロの手を借りる

この記事を読めば、介護職の現状と離職率の低い施設の見極め方が分かるでしょう。

1.実は高くない!介護職の離職率は15.4%

介護職の離職率は実は高くありません。

介護労働安定センターの調査によると、2019年度の介護職員の離職率は15.4%です。(参考:介護労働安定センター)

同年の全職種の平均離職率は15.6%と、介護職の離職率の方が低いことが分かります。(参考:厚生労働省)

この章では介護職の離職率について以下の観点から詳しく紹介していきます。

それでは見ていきましょう。

1-1.介護職の離職率は平均よりも低い

介護職は離職率が高いイメージがあるかもしれませんが、実は他の業界とほとんど変わりません。

具体的に見ると、介護職の離職率は15.4%であり、これは全職種の平均離職率より低い値です。

離職率の比較

参考:厚生労働省介護労働安定センター

1-2.小規模施設ほど離職率は高い

介護職の離職率は、小規模な事業所ほど高くなっています。

以下のグラフでは19人以下の事業所の離職率が19%であるのに対し、従業員が100人以上いる施設では12%にとどまっていることが分かります。

施設の規模と離職率の関係

参考:公益財団法人 介護労働安定センター

1-3.過去6年で離職率は徐々に下がっている

介護職の離職率は過去6年間の間に下がっています。

離職率の低下速度は緩やかですが、今後も徐々に低下していくと考えられます。

【介護職の離職率と採用率の推移】

介護職の離職率と採用率の推移

出典:公益財団法人 介護労働安定センター

介護職の離職率はそれほど高くないことをお伝えしましたが、ハードな仕事の割に給料が低く、人手不足であるというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

そこで次の章では、介護職がマイナスイメージを持たれる原因や実情について解説していきます。

2.「介護業界は離職率が高い」と思われている理由と介護現場の実態

仕事がきついわりに給料が安いというイメージが先行しているため、介護業界は離職率が高いと思われがちです。

日常生活で介護の現場を目にする機会はあまりなく、またメディアで「過酷な現場」として報道されるように、ネガティブなパブリックイメージが根強くあります。

しかし実際のところ、イメージと現場の実態は乖離しており、介護業界は想像しているような過酷な現場ではありません。

この章では、以下の2つのポイントに着目して介護現場の誤解を解いていきます。

それでは見ていきましょう。

2-1.体力的なきつさの誤解

介護職を経験したことのない方の約半数が体力的にきついというイメージを持っています。

介護職に対するマイナスイメージ

参考:株式会社 リクルートキャリア

もちろん、高齢者の入浴介助などかなり力を使う仕事ではあり、1日中歩き回るので体力も消耗するでしょう。

しかし、近年は技術の発展にともない、スタッフに負担をかけないような環境が整っている施設も多くあります。

例:腰痛に考慮したノーリフティングケア

ノーリフティングケア

出典:日本ノーリフト協会

人力での抱え上げを行わないという考え方で、移乗リフトやスライディングボードといった特殊な器具を用いて要介護者をサポートする介護技術です。

これにより介護職員の腰の負担などは著しく軽減されます。

2-2.給与・賃金の誤解

介護職=給料が低いというイメージを持っている人も多いです。

確かに、介護職の平均年収が約379万円であるのに対し全職種平均は約441万円と、全職種平均と比較すると介護職の平均年収は低いと言えます。(参考:民間給与実態統計調査結果)

しかし、介護職の給与はここ10年で上昇傾向にあり、待遇改善が行われています。

介護の人材不足は国を挙げての課題であり、政府は賃金や労働環境の改善などによって働き手を増やそうとしています。

介護のイメージ改善へ向けた取り組み

介護職のイメージを変えることを目的として、体験型イベントの実施や情報発信のプラットフォーム構築などの取り組みが実施されています。

  • VRによる認知症体験、介護ロボット体験
  • 職場体験や入門的研修の情報

参考:厚生労働省

日本で高齢化が今後も進んでいくことを考えると、この流れ(人材が欲しい=待遇を挙げる)は続いていくでしょう。

つまり、今後は着々と他職種との年収差が縮まっていくことが期待できます。

関連記事:介護職の平均年収はいくら?男女・年齢別年収&給料・収入を上げる方法を解説

3.介護士が転職する主な理由7選

介護職の方が「辞めたい」と感じる理由は、主に以下の7つに分類されます。

統計データや介護職の方の声をもとに、それぞれ解説していきます。

3-1.人間関係が上手くいかなくて辛い

「人間関係が上手くいかなくて辛い」という悩みは、介護職を辞めたいと感じる理由の一つです。

事実、介護職を辞めた理由の第一位は「職場の人間関係に問題があったため」でした。

前職の仕事をやめた理由ランキング

出典:介護労働実態調査

職場の人間関係がうまくいっていないと、以下のような問題を引き起こします。

人間関係の悪さが引き起こす問題

  • 職員同士の連携がうまく取れず、利用者に迷惑をかけてしまう
  • 職場で孤立してしまい、出勤するのがつらくなる
  • 職員の定着率が悪くなり、人手不足が解消されない

実際、当サイトが介護職員を対象に取得したアンケートでは、以下のような意見がありました。

口コミ・評判

匿名(女性)
有料老人ホーム勤務

現在、職場の雰囲気が悪くて悩んでいます。自分自身、些細な事で怒られるし、新人として入ってきた介護士の子に対する当たりが強いです。もちろん怒ることで、新人に仕事を覚えてもらうことが必要であることはわかりますが、変に仕事を押し付けたり、上司のミスも合わせて新人になすりつけている部分もあるように感じます。

私が入職した時はここまでひどくはなかったですが、今はこれにより若手間でも士気が下がっています。「なあなあでもいれば給料もらえるし」という声すら聞こえて、我々介護士は利用者さんがいるから給料が入るのに、利用者さんに呼ばれても行かない人とかざらにいます。

このような環境において、本当に利用者の方やご家族のために仕事ができているのか、ということに不安を感じざるを得ません

出典:アンケート

人間関係の問題は、「先輩から無視されるなどのいじめを受ける」「利用者の家族から陰口を言われる」など多岐にわたります。

3-2.人手が足りず余裕がない

「職場が常に人手不足で余裕がない」という悩みは、介護業界の中でも大きな問題となっています。

事実、施設で働く介護職員の7割以上が「人手不足による仕事の負担増」を悩みとして挙げています。

人手不足

参考:介護労働実態調査

人材不足解消のために介護職員の処遇改善などが行われていますが、介護の現場は依然として人手不足が続いています。

職員一人あたりの負担が大きくなる中で、「いっそのこと辞めてしまって、余裕のある職場で働きたい」と思うようになる介護職の方も多いようです。

口コミ・評判

匿名 さん
職員数は減る一方、なのに常に満床目指して新しい入居者が来る。1年目の私ですら「これおかしくない?」と思うほどです。そんな方針のせいでさらに職員減ります。悪循環。
2019/12/27

出典:Yahoo!知恵袋

3-3.身体的な負担が大きい

体を酷使する介護職は、身体的な負担が大きいため、「体力的に限界」と退職を考える方も多いようです。

特に、介護の主な業務である「移乗介助」では腰を酷使するため、腰痛を抱えている介護職員も少なくありません。

以下のグラフでは、介護職員のおよそ9割が腰痛を抱えていることが分かります。

介護施設職員の腰痛

参考:社会福祉施設の介護職職員における腰痛の実態調査

また別の調査では、腰痛を抱える職員の14.6%は「立てないくらいの痛みを抱えている」という結果も報告されています。(参考:介護職者の腰痛事情)

補足:介護職は夜勤の負担も大きい

人手不足の影響から、夜勤時に十分な仮眠や休憩が取れないと悩む介護職の方も多いようです。

夜勤シフト従事者を対象にした調査では、およそ3割以上が「深夜勤務時に仮眠や休憩を取れない」と回答していました。(参考:介護労働実態調査)

口コミ・評判

匿名(施設勤務)

最初のころはなかったのですが、私が仕事に慣れてくると徐々に夜勤に入る人数が減り、1人で複数人の利用者様を担当しなくてはならなくなりました。

従業員が足りないことが原因かもしれませんが人を増やしてほしいと言っても、聞いてくれず毎日夜勤に向かう道中で吐きそうになっています。とにかく1人あたりの業務量が多いように感じます。そのため、休みもなかなか取れず、日勤でもみんな深夜まで残っていて、若手で早く帰ろうとすると白い目で見られます。

どうすることも出来ず、とりあえず働いていますが、流石に限界です。

出典:アンケート

3-4.給料が低くて生活が苦しい

給料が低くて生活が苦しいという悩みも、介護職を辞めたいと思うようになる理由の一つです。

実際に、介護職で働く方のおよそ6割以上が「基本給の引き上げ」を希望していることがわかっています。

また、給与に対する満足度を調査した結果、「いまの給与に満足している人」の割合は、他の職種の半分以下であることがわかりました。

給与の満足度

参考:介護労働実態調査

給与は他の職種よりも低水準

介護職員(正規雇用)の平均基本給は、18万1,220円です。平均手当7万1,330円を加えると、平均月収は25万2,550円になります。

その一方、すべての職種を対象とした調査における平均月収は、30万7,000円でした。(参考:賃金構造基本統計調査)

このことから、他の職種に比べて給料が低い職種であると言えるでしょう。

賞与や残業代である程度加算されるケースはあるものの、基本給が低いため生活が苦しいと感じる方も多いようです。

当サイトの独自アンケートでも、以下のようなコメントがありました。

口コミ・評判

匿名
3人の子どもの育児が終わり、主人の収入だけでは正直苦しく、子育てからの社会復帰をすることにしました。資格もあったので近所の施設で働かせてもらうことになりましたが、ブランクがあるということで月の手取りは15万円ほどです。大きくなったとはいえ、子供の面倒や家事をしなくてはならないので夜勤は滅多にできません。夜勤をしないと給料がもらえないことは知っていましたがさすがに苦しいです。

出典:アンケート

3-5.施設の運営方針が合わない

施設の考え方や方針が、自分の考えと合わず、我慢しながら働いているという方も多いようです。

実際、介護福祉士資格保有者を対象にした調査では、前職を辞めた理由第2位として「法人・事業所の理念や運営の在り方に不満があった」が挙げられています。(参考:厚生労働省)

介護職員が施設の運営方針に不満を抱えやすいケース

  • 事業計画や経営状況の説明がない
  • 十分な給与を支払わないなど、現場の介護職員のことをないがしろにしている
  • 利用者のことよりも、法人の利益を優先しているように思える
  • 風通しが悪く、現場の職員が意見を言えない

施設全体の方針や考え方に納得ができない気持ちを抑えながら、働き続けると、やがてやりがいを感じられなくなったり、モチベーションが下がってしまったりすることもあるでしょう。

組織のあり方を根本的に変えることは難しく、最終的に「転職をする」という決断を下す方も多いようです。

口コミ・評判

匿名 さん
コメントが入ります。今特養に勤務しているのですが施設長に人員不足を訴えても「人は足りてるから」と取り合ってもらえません。配置基準はギリギリ満たしているようですが、1日の勤務で早出がいないのは当たり前で加えて日勤や遅出もいない日もあり休憩がまわせず週2回の入浴もなんとかギリギリという状態です。こんな状態なので施設の離職率はここ1年で8割ほどです。
2016/8/9

出典:Yahoo!知恵袋

3-6.利用者からのハラスメント

利用者や利用者の家族からのハラスメントに悩み、退職を考える介護職員の方もいます。

ハラスメントの例

  • 身体的暴力(たたかれる、コップをなげつけられる)
  • 精神的暴力(威圧的な態度で文句を言い続ける、理不尽な要求をする)
  • セクシャルハラスメント

事実、介護職員の7割以上が「利用者やその家族からのセクハラ・暴力等を受けたことがある」と答えています。(参考:介護クラフトユニオン『ハラスメント実態調査』

また、ハラスメントを受けた経験のある方の中には、身体面に影響が出たり、退職を考えたりする方もいるようです。

ハラスメントを受けたことにより、けがや病気になった職員は1~2割、仕事を辞めたいと思ったことのある職員は、2~4割となっています。

参考:厚生労働省『介護現場におけるハラスメント対策マニュアル 』

3-7.自分の性格が介護職に向いてないと感じる

ミスを繰り返したり、先輩からの叱責を受けたりした結果、「自分は介護職に向いていない」と自信を失ってしまう方もいます。

以下のような性格の方は、介護職に向いていないと言われやすいです。

  • 神経質な性格
    …介護職はさまざまな汚れを伴う仕事もある。潔癖で神経質な性格をしている人には不向き
  • 短気な性格
    …高齢者は何度も同じことを伝えなければ理解してもらえない。気長にしっかりと寄り添う姿勢が必須
  • 要領が悪い
    …少人数の施設ではテキパキとした対応が求められる。要領が悪く、何度も些細なミスを繰り返すような人の場合は、なかなかうまく仕事をこなせないこともある。

補足:向き不向きは職場環境次第

向き不向きを判断する際は、職場環境にも目を向けてみてください。介護の仕事がうまくこなせるかどうかは、職場環境次第で大きく左右されるからです。

例えば、人間関係が良好な職場であれば、何かミスがあったとしても、チーム間で連携対応できたり、的確に指導してくれたりするでしょう。

一方、人間関係が悪く殺伐とした職場の場合、些細なミスを過剰に叱責されたり、指導もなく放置されたりすることもあります。

「自分は介護職に向いてない」といきなり判断せず、まずは環境に問題がないかも考えてみましょう。

4.離職率が低い介護施設の見極め方

離職率が高い職場は、以下の7つのポイントから入職前に見極めることができます。

求人情報や面接の段階でしっかりと確認しておきましょう。

4-1.常に求人募集が出ている施設は要注意

常に求人募集が出ている施設は人の入れ替わりが激しいと考えられるため注意しましょう。

職員の定着率が低い施設では労働条件や職場に問題があり、それを改善しないまま放置している可能性があります。

求人を募集する理由が、事業拡大や職員の産休によるものなどポジティブな理由であるのかどうかを面接時に確認してみると良いでしょう。

4-2.労働条件が明確に提示されていることを確かめる

労働条件が明確に提示されていることを確かめましょう。

求人票や面接の段階で確認するほか、雇用契約書に以下の項目が記載されているかどうかをチェックしてください。

  • 労働時間・残業の有無・休日に関する事項
  • 給与に関する事項
  • 退職に関する事項

上記のいずれかの項目が記載されていない場合は、署名せずに理由を施設側に問い合わせましょう。

問い合わせても明確にならない場合は、内定を辞退するということも可能ですので、慎重に検討してください。

4-3.職員や施設全体の雰囲気は明るいか

職員の態度が悪かったり施設に活気がなかったりと、雰囲気が暗い施設には注意が必要です。

以下の特徴を持つ施設では、職員のストレスが大きかったり人手不足であったりする可能性があります。

  • 訪問者への挨拶がない
  • 職員に笑顔がない
  • 職員同士、利用者との会話が少ない
  • 掃除が行き届いていない

選考の段階で施設全体の雰囲気を注意深く観察しましょう。

4-4.施設長や上司になる人は信頼できそうか

施設長や管理職が信頼できそうな人物であるかどうかも重要なポイントです。

というのも、直属の上司にあたる人が自分の職場環境に与える影響は大きいからです。

施設長や上司が新しく入った人材の受け入れに理解があるかどうか、チームワークを大切にしているかどうかなど、仕事に対する考え方を面接で聞いてみると良いでしょう。

4-5.他の求人と比べて極端に給料が高くないか

他の求人と比べて極端に給料が高い場合は気を付けましょう。

というのも、職員が足りないために給料を高く設定し、人材を集める必要に迫られていると考えられるからです。

採用してもまた職員が辞めていしまう可能性を見越して、多めに人を集めようとしている可能性があります。

4-6.新設されたばかりの施設は避ける

新設されたばかりの施設は離職率が高い傾向にあるため、施設ができてから5年以上経過している職場がおすすめです。

以下のグラフでは、5年以上経過している施設と比べて、設立から3年未満の施設の離職率は約2倍高いことが分かります。

経験豊富な同僚がおり、落ち着いた職場である方が離職率が低いと考えられます。

施設の経過年数と離職率の関係

参考:公益財団法人 介護労働安定センター

4-7.なるべく職員が多い施設を選ぶ

人手不足を避けるため、なるべく職員が多い施設を選ぶようにしましょう。

というのも、1章で述べたように職員が多い施設の方が離職率が低い傾向にあるからです。

施設の規模と離職率の関係

参考:公益財団法人 介護労働安定センター

従業員が19人以下の施設では離職率が19%と平均離職率よりも高いため注意しましょう。

5.長く働ける介護施設に転職したい方はプロの手を借りる

今の職場からより良い条件の職場に転職したいと考えている方は、転職サイトを活用することをおすすめします。

というのも、条件の良い職場の求人を見つけることは難しく、働きながら転職活動を進めていくのは負担が大きいからです。

転職サイトのスタッフは介護職の知識が豊富であり、一人では見つけられない非公開求人も紹介してくれるため、転職活動を有利に進めたい方は利用を検討してみましょう。

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さいごに

介護職の離職率についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。

離職率は他職種と比べても高くありませんが、働く中で様々な悩みを抱えて離職する方がいるのも事実です。

この記事でお伝えした、離職率の低い企業を見つけるポイントを参考に、自分が長く楽しく働くことができる施設を探してみましょう。