「退職後の年金ってどうすれば良いのか」「退職後無職だから年金を払う余裕が無い」など、退職が決まっても年金に関する悩みって尽きませんよね。
本ページでは、仕事にブランクがあり当該期間年金の納付を免除された経験を持つ筆者が、自身の経験を元に退職後の年金の概要・手続きから免除の方法までを下記の流れでご紹介いたします。
このページを読んで頂ければ、退職後の年金に関して必要な知識を全て習得して頂けます。
また、制度を最大限活用頂く事で、自己都合退職であっても全額免除を受けることも可能です。
1. 退職後の年金:3つのパターン
日本において、年金加入は義務です。
つまり、あなたが会社を辞めてからも年金には加入し続けなければなりません。
1-1. 年金の加入者には3つのパターンがある
年金の加入者は下記のように3つに分けられます。
名称 | どんな人? | 保険料 | 対象 |
第1号被保険者 | 国民年金のみに加入している人。 自営業や学生など。 |
16,610円 (令和3年) |
20歳以上60歳未満 |
第2号被保険者 | 国民年金に加え、厚生年金や共済年金に加入している人。 会社員や公務員など。 |
給料によって変動 | 70歳未満 |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている、年収130万円未満の配偶者。 会社員の妻など。 |
負担なし | 20歳以上60歳未満 |
あなたが会社を退職して、次の就職先までブランクがある、もしくはしばらく働くつもりが無い場合、上の表で第1号被保険者もしくは第3号被保険者にならなければなりません。
1-2. 年金に加入していない時期があってはならない
会社を辞めた翌日付けでの手続きが必要です。
下記のケースのように、扶養に入らないのであれば、翌日付けで手続きをし、常にいずれかの被保険者である事が求められます。
1-3. 被扶養者になる条件は2つ
結婚などで退職し専業主婦になる方や、親元で資格等の勉強をするために退職した方は第3号被保険者となりますが、そのための条件は2点あります。
- 被保険者に主として生計を維持されていること
- 年間収入130万円未満(60歳以上又は障がい者の場合は、年間収入180万円未満)である事
年間収入とは、過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことを指します。
そのため、給与所得がある場合は月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合は、日額3,611円以下でなければなりません。
また、加えて以下の2点を満たさなければなりません。
- 同居の場合に収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満である事
- 別居の場合に収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満である事
2. 退職時年金の手続き:3つのパターン
各パターンにおける手続きをまとめました。
2-1. 第1号被保険者となる場合の手続き
退職後、就職せずにフリーターや学生となる場合、自営業を始める場合これに当てはまります。
厚生年金の脱退の手続きは会社が行ってくれますが、厚生年金から国民年金への種別変更手続きは被保険者が行わなければなりません。
下記の通り、手続きを行いましょう。
手続きの場所 | 各市町村役所の国民年金窓口 |
手続きの期間 | 退職から14日以内 |
必要なもの |
|
2-2. 第2号被保険者となる場合の手続き
退職後、別の企業へ就職する場合はこちらに当てはまります。
第2号被保険者となる場合、転職先である会社が手続きを行ってくれます。
手続きの場所 | 転職先の企業 |
手続きの期間 | 入社時 |
必要なもの |
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2-3. 第3号被保険者となる場合の手続き
退職後、配偶者の被扶養者となる場合等はこちらに該当します。
第3号被保険者となる場合は扶養者である、第2号被保険者の方の会社で手続きを行ってもらえます。
必要書類を第2号被保険者の方が事業主へ提出し、事業主が日本年金機構へ提出します。
下記のように書類を提出して下さい。
書類提出先 | 第2号被保険者の企業 |
提出期間 | 被扶養者が退職後すぐに |
提出物 | 健康保険 被扶養者(異動)届 ※必要書類の添付 |
まず、健康保険 被扶養者(異動)届は下記のようなものです。
出典:日本年金機構ホームページ
上記の書類は日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
また下記のように必要書類を添付する必要があります。
①収入要件確認のための書類
所得が基準値よりも低い事を証明する書類です。
ケースによって必要書類が異なるのですが、退職したことで扶養に入る場合以下のいずれかの書類が必要なケースが多いです。
- 退職証明書
- 雇用保険被保険者離職票の写し
②続柄確認のための書類(被保険者と別姓の被扶養者の場合)
- 被扶養者の戸籍謄本など
③同居確認のための書類(被扶養者として認定されるために同居が要件である場合)
- 被保険者の世帯全員の住民票など
④内縁関係を確認するための書類
- 内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本
- 被保険者の世帯全員の住民票(コピー不可・個人番号の記載がないもの)など
扶養となる場合は、まずは退職前から手続きや必要書類について、扶養者の事業主に確認をしておくのが好ましいでしょう。
理由は下記の2点です。
- 被扶養者となる方が退職後、退職事業者から年金機構に5日以内に書類を送る必要があり、迅速な手続きを求められる。
- 書類の内容や添付書類が複雑でわかりにくい。
3. 年金の手続きでの注意すべき2つの事例と解決策
本章では年金の手続きにあたって、陥りがちな2つの事例に関して解決策をご紹介いたします。
3-1. 年金の手続きを忘れた場合
手続きを忘れてしまった場合、まずはお住まいの市町村役所の国民年金窓口で相談しましょう。
忘れてしまって、特に問題が無いからと放置する事はしてはいけません。
理由は2点あります。
理由①手続きをせずに支払っていなかった保険料を、ある一定の時期にまとめて請求される
そもそも日本において、20〜60歳までの年金の未加入は認められておらず、手続きをしなくてもあなたが退職した翌日から国民年金に強制的に種別変更をされています。
つまり、加入をしていない日を作るのは不可能で、手続きを延ばす事は支払いを延ばす事につながり、後々ご自身に負担をかける結果となってしまいます。
理由②もしもの時に補償が受けられない恐れがある
きちんと手続きをしていない事で、あなたにもしもの事があった場合に給付してくれる以下の年金
・ 障害基礎年金
・ 遺族基礎年金
を受けられない恐れがあります。
以上2点の理由から手続きは忘れずにきちんと行う事が大切です。
3-2. 年金手帳を無くした場合
年金手帳は基本的に会社が保管しているものなので、退職時に返却してもらいましょう。
もしもあなたが管理していて、万が一無くした場合は、事業所の所在地を管轄する年金事務所に相談しましょう。
再発行を受けられます。
4. 退職(失業)特例免除の活用法
一般的に知られている国民年金の免除制度には前年の所得が◯◯万円以下といった基準があります。
つまり、前年きっちり働いて退職された方は適用されにくいものです。
そこで、活用頂きたいのが退職(失業)特例免除です。
4-1. 退職(失業)特例免除のメリット
この退職特例免除には4つのメリットがあります。
メリット①退職理由を問われない
自己都合、会社都合等の退職の種類を問いません。そのため、倒産やリストラなどの不可避な原因でなくとも免除が受けられます。
メリット②保険料を支払わずに、1/2の保険料を支払ったものとしてくれる。
免除申請により、保険料は全額免除になります。しかしながら、満額の納付と比較して1/2を納付したのと同じ扱いをしてもらえます。
しかし、満額を払い続けていた人と比較すると、若干将来受け取れる年金額は目減りします。
また、将来老齢基礎年金を受給するためには、保険料の納付を25年行う事が必要ですが、この免除期間も納付したとカウントしてもらえます。
メリット③本人の所得は考慮せずに審査してもらえる。
審査において、配偶者と世帯主の所得のみで考慮され、あなたの所得は審査の対象外となります。
つまり、あなたがどんなに前職で稼いでいたとしても、配偶者や世帯主の所得が低ければ、十分免除の対象になり得ます。
メリット④遡って支払いをする事もできる。
免除を受けた保険料に関して、10年分を上限に後から遡って支払いをする事も可能です。
つまり、一時的に無職になる場合、当該期間免除を受けておいて、後ほど収入が安定したタイミングで保険料を追納すれば、支払いをずっと行っていたのと同じ状態になります。
さらに、納した国民年金保険料は、年末調整や確定申告で所得税控除を受けられます。
4-2. 退職(失業)特例免除の手続き
手続きは下記の通り行います。
手続きの場所 | 各市町村役所の国民年金窓口 |
必要なもの |
|
国民年金保険料 免除申請書は以下のようなもので、日本年金機構のホームページからダウンロードするか、各市町村の国民年金窓口で入手できます。
出典:日本年金機構ホームページ
5. さいごに
退職後の年金に関して、ご紹介してきましたがいかがでしたか。
年金への加入は非常に重要な事なので、きちんと手続きを踏む事が重要です。また支払いが難しい方のための免除制度も整っているので、ご自身のお財布とご相談の上、ご活用いただければと思います。
あなたの退職後の人生が素晴らしいものである事を心から願っています。
※また、退職後の転職活動は心身ともに負担になることが多いですから、無理をしない範囲で退職前から準備を進めていくことをおすすめします。その際は、『転職のプロが教える安心して転職に臨むための準備のすべて』を参考にしながら、少しずつご自身のペースで次のキャリアをお考えください。
※退職後の転職先が未定の方へ
退職後の転職活動は心身ともに負担になることが多いですから、無理をしない範囲で今のうちから準備を進めていくことをおすすめします。その際は、『転職のプロが教える安心して転職に臨むための準備のすべて』を参考にしながら、少しずつご自身のペースで次のキャリアをお考えください。
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