コロナ禍でリモートワークが進む中、地方移住を検討する人も多いのではないでしょうか。東京圏からの移住者に対しては国が支援をしていますが、自治体も各自の支援策を展開しています。
そこで、東京圏以外からの移住者も活用できる全国の地方自治体の魅力的な取り組みをご紹介、地方移住を検討しているが地域を決め切れていない人や、今はまだ地方移住に具体的な興味を抱いていない人にも参考になる情報をお届けします。今回は、『南相馬市(福島県)』です。
今回ご紹介する南相馬市の移住支援事業の詳しいお話やまちの魅力について、南相馬市経済部移住定住課 吉田亜衣氏にお話を伺いました。
1.南相馬市ってどんなまち?
南相馬市データ(参照以外は南相馬市HPの情報)
1-1.伝統が根付く一方でロボット産業や若手起業家も集まる
南相馬市は、福島県浜通り北部に位置し、温暖で降雪も少ない過ごしやすい地域です。
生活環境も整っており、市内で十分に必要なものが調達できるため、暮らしやすいまちでもあります。
東京からは常磐線特急列車で3時間30分、東北地方唯一の政令指定都市である仙台市までは車で1時間程で行くことができ、利便性も高いです。
たとえば、未来への期待がふくらむロボット産業が集積していたり、地域課題の解決に向けて地域に根ざした生業(なりわい)づくりを目指す若手起業家が積極的に動いたりしているのが特徴的です。
(以下、吉田氏)
ここは、ロボットの実際の使用環境を拠点内で再現しながら研究開発、実証試験、性能評価、操縦訓練ができる、世界に類を見ない一大研究開発拠点となっています。
物流、インフラ点検、大規模災害などに活用が期待される無人航空機、災害対応ロボット、自動運転ロボット、水中探査ロボットといった陸・海・空のフィールドロボットの試験や開発が行われています。
南相馬地域一円の産業基盤でもある金属・機械関連製造業では、優れた技術を有する事業者が多く、近年では福島ロボットテストフィールドを核として集積するロボット関連事業者との連携も見られます。
南相馬市内で実証実験を実施した場合に経費を助成する「南相馬市ロボット実証実験支援助成金」もあるので、ぜひ活用していただきたいです。
1-2.稲作が盛んで子育て支援も手厚い
福島県は13万7300ヘクタールの広大な農業地面積を誇り、農家数も6万2,673戸と多くおいしいものに恵まれた地域ですよね(参照:令和3年 農林水産省・面積調査、令和2年国勢調査)。
南相馬市の特産物は何ですか?
誕生祝い品の支給から、保育料の無料化、18歳までの医療費無料化と、”切れ目ない支援”が魅力的です。
幼児期からのフォニックス学習やプログラミング学習など特徴ある学校教育も展開しています。
- 紙おむつ
- おしりふき
- 粉ミルク
- 市産米「天のつぶ」30kg(5kg×6袋)
市外に避難している方は、購入した領収書等により後日市に請求していただいて清算、という形になります。
お米はその年に取れた新米が11月以降に自宅に届きます。
支給要件を教えてください。
- 出生の日から市内に住所を有すること
- 児童の父又は母が、児童の出生日に市内に住所を有すること
また、出生から半年以内に申請していただかなければならないのでご注意ください。
2.南相馬市に移住したくなる移住支援制度
南相馬市では移住者に対する下記のサポート体制が整っています。それぞれについて、詳しく伺ってみましょう。
- 南相馬市移住支援金交付事業
- 福島県12市町村移住支援金
- 地域対応活用住宅(市営住宅)の提供
2-1.南相馬市移住支援金交付事業
東京23区に5年以上在住するか通勤している人が、南相馬市へ移住し就職する場合などに対象となる移住支援金ですよね。
福島県が運営する就職マッチングサイト「Fターンサイト」に掲載された「移住支援金対象法人」に就職した方や対象要件に該当する方が申請できます。(対象要件は南相馬市の公式ページからご確認ください)
移住支援金(2人以上の世帯は100万円、単身の場合は60万円)を支給します。
なお、起業した場合でも移住支援金の支給対象となる場合があります。
市内への移住・定住の促進や、中小企業等における人手不足解消のために南相馬市移住支援金交付事業を実施しています。
2-2. 新設支援金は最大200万円の給付
上記の12市町村の復興・再生の更なる加速化を図ることを目的としています。
「南相馬市移住支援金交付事業」よりも対象要件の幅が広く、交付額が大きい(世帯の場合は最大200万円、単身は最大120万円)ため、こちらを活用される方が多くなっています(対象要件については福島県の公式ページを参照してください)。
2-3.移住者向け住宅で地域活性化と災害復興を図る
民間賃貸住宅の不足等により住居の確保ができないUIJターン者等に住居を提供することで、地域の活性化と東日本大震災及び原子力災害からの復興を図ることを目的としています。
主に空き家が生じている市営住宅団地において実施しており、2023年10月6日現在、20軒中6軒が利用中です。
市外に住所があり、南相馬市へ移住を検討している方が、南相馬市での生活体験や地域内での交流、移住を検討する際の滞在施設として提供しています。
全部で2棟あり、2〜30泊まで宿泊料無料でご利用いただけます(利用要件などについては市の公式ページで確認してください)。
県外から県内への移住を検討している方や県内での起業を検討している方を対象に、福島ぐらしを体験するための滞在住宅として県営住宅の空き住戸が一定期間提供されています。
費用は月額1万円で原則3か月まで利用できます。
福島県への移住を検討している方は、ぜひ活用してみてください。
3.南相馬市は起業・就業にも手厚くサポート
南相馬市は起業や就業支援も手厚くサポートしています。
それぞれについて、詳しく伺ってみましょう。
3-1.「みなみそうま就職ナビ」サイト
市内事業者の魅力や求人情報を分かりやすく発信しています。
新規高校卒業者の地元定着を図るとともに、進学などで転出した人たちのUIターン就職を促すことを目的としています。
3-2.UIターン就職支援助成金(市外就職希望者就職活動支援事業助成金)
3-3.奨学金返還支援事業補助金
- 市内事業所等に就職し、かつ定住する方で奨学金の貸与を受けている方が対象で奨学金返還支援として年間18万円を上限に交付します。(上限はおよそ300万円です。)
- さらに、医療、福祉産業に属する市内事業所等で保育士、看護師、介護福祉士、社会福祉士として働き、かつ定住後6か月経過した場合に40万円を交付します。(1回限り)
南相馬市では、地域を支える産業に就職し、市内に定住する方を増やすため一定の条件のもとで奨学金返還のための補助金を交付しています。
3-4.旧避難指示区域内店舗営業運営費補助金
しかしながら、商圏人口が激減した当該地域において再開した事業者からは、経営が難しいとの声が寄せられる現状がありました。
そこで、再開事業者の経営の安定を図るとともに、新たな事業者が積極的に起業していただくために、運営経費の一部を補助することとなりました。
2019年度から補助を開始し、2021年度には57の事業者に対して補助金が交付されました。(※補助金の詳細については市の公式ページを参照してください。)
4.南相馬市は学生への支援も充実
看護師学校や准看護師学校、大学などの授業料、生活費、入学資金に対する貸付です。
いずれも貸付期間に相当する期間、南相馬市内の医療機関等で看護師などの業務に従事した場合は返還が免除されます。
【授業料】
- 保健師、助産師又は看護師、その他の医療職の養成施設に在学している方
月額4万5000円以内 - 准看護師の養成施設に在学している方
月額3万4000円以内
【生活費相当の資金】
月額5万5000円以内
【入学資金】
40万円以内
2020年度からは貸付金返還債務免除とする勤務先を市内の福祉事業所(介護及び障がい福祉事業所)にも拡大し、市内の医療分野・福祉分野における看護師等不足解消を目指しています。
5.実際に南相馬市に移住した人の声
実際に南相馬市に移住した人々はどのような感想を抱いているのでしょうか。
ここでは、移住した人の声をご紹介します。
(南相馬市移住定住サイト「みなみそうまからはじめよう」に掲載されている内容を、南相馬市の許可を得て再編集しています。インタビューのフルバージョンはぜひ、上記サイトからご確認ください)
6.まとめ
また、子育てに関する支援制度が充実していることはもちろん、子どもの遊び場も市内に19か所あり、屋内外ともに遊びやすい施設が多くあります。
海も山もあり、自然環境も充実しているので子育て世代にとっても良い環境ではないでしょうか。
南相馬市への移住を検討される場合は、まずはお気軽に、訪問や移住体験に訪れてみてください。
お待ちしております。
▼南相馬市移住定住サイト:https://www.city.minamisoma.lg.jp/attraction/index.html
現役の転職コンサルタント集団。大手人材会社に在籍しているメンバーが多いため、執筆内容に制約がかからないように『匿名性』とし、裏事情やノウハウを包み隠さずにご紹介しています。
移住前は都内のシステム開発会社で勤務し、南相馬市とは一切の接点がなかったという山内さん。
南相馬市で「ITを使った企業で地域を盛り上げよう」と活動する地域おこし協力隊と、会社が提携することになり同市に移住しました。
リモートワークの勤務形態は変わらない一方、東京では1人暮らしの部屋から一歩も出ない暮らしだったのが、南相馬市でシェアハウスで生活するようになり、近所に友達もたくさんできて外出する機会が増えたことで、健康的になったそう。
「距離的に近い人間関係は、大学時代を思い出します。
それに空が広くて気持ちいい。全体的に視野が広くなりましたね」
南相馬市ではジムや体育館が100円で3時間利用できるため、よく運動していると言います。
「東京でジムに通うことを考えたら破格です。休日の楽しみは近隣のダムを廻ったり銭湯につかりに行ったりしています」
都会よりは不便だと身構えていたものの、「車があればどこでも行けるし特に困ることはありません」。
移住後に250㏄の中型バイクに乗る趣味もできたとのこと。
「都会にいたら駐車場だけで結構高くつくのでバイクが持てなかったんです」
今後は、地元高校生に対するIT教育にもチャレンジしたいという山内さん。
「どのまちだからいいってことはきっとなくて、人と良好な関係をつくれる場所ならどこでもいいんじゃないかな。幸い、南相馬の人たちが僕を受け入れてくれて、何不自由なく暮らせてるので、僕にとってはすごくいい場所です」