「国土交通省に転職したい」「採用されるのは難しい?」とお考えですね。
国土交通省では、キャリア(総合職)として中途の募集がありますが、採用ハードルは高めと言えます。
中途採用の募集要項を見てみると、キャリアの「事務系」や「技術系」での採用がメインとなっています。
また、「本省」区分の合格倍率は、7倍以上です。
転職を成功させるには、入念な情報収集を行い、「どういった人材を求めているのか」をしっかり把握し、入念に対策を練る必要があります。
そこでこの記事では、キャリアコンサルタントとして数多くの転職をアドバイスしてきた私が、国土交通省への転職にあたり知っておくべき知識を解説します。
すべて読めば、国土交通省への転職の第一歩を踏み出せるでしょう。
1.国土交通省のリアルな働き方
年収 【3.0/ 5 】 |
福利厚生 【 3.8 / 5 】 |
職員の平均年収は673万円!人事院規則で決まった号棒の中で毎年少しずつ給与が上がる。 | 住宅補助は最大で月額27,000円支給される。仕事と育児・介護の両立支援制度の充実が魅力。 |
評価制度 【 2.7 / 5 】 |
やりがい・成長 【 3.3 / 5 】 |
給与は年功序列。努力して高い評価を得たとしても、給与にはあまり反映されない。 | 世の中へのインパクトが大きい仕事であり、「国民のため」という目的があるため働きがいを感じる人が多い。 |
雰囲気・働きやすさ 【3.0 / 5 】 |
将来性 【3.3/ 5 】 |
基本的に保守的でトップダウンの傾向が強いが、異動の多い総合職は上司が部下に丁寧に教える風土がある。 | 2030年に向けた政策課題を整理し、シナリオやプランを作成しており、将来性に期待できる。 |
※openwork / Lighthouse / 転職会議の評価をもとに算出
国土交通省で求められる人物像
- 公務に対する強い関心と、全体の奉仕者として働く熱意がある
- 日本の経済の成長を促し、支えたいという情熱を持っている
- 国の将来をデザインし、その将来像を自らの手で着実かつ具体的に形にしようという意思がある
- 困難な課題を解決できる論理的な思考力、判断力、表現力などの能力がある
- 交通政策の推進に関連する分野での業務に、強い関心と専門的知識を有している
本章では国土交通省のリアルな働き方について詳しく解説します。
1-1.年収
国土交通省の平均年収は、「国家公務員の給与(令和3年版)」をもとに計算すると673万円で、世間一般の大企業よりも低い印象です。
また、口コミによる転職時の平均年収は、平均年齢が若いこともあり職員平均を下回っています。
人事院のホームページで公開されている「国家公務員のモデル年収」は以下の通りです。
※詳しいモデル年収は人事院ホームページで公開されています
国家公務員のモデル年収
- 係員(25歳)月収19.4万円×12+「期末・勤勉手当」=年収318万円
- 係長(35歳)月収27.4万円×12+「期末・勤勉手当」=年収454万円
- 地方機関課長(50歳)月収41.3万円×12+「期末・勤勉手当」=年収673万円
- 本府省課長補佐(35歳)月収44.1万円×12+「期末・勤勉手当」=年収731万円
- 本府省課長(50歳)月収74.9万円×12+「期末・勤勉手当」=年収1,266万円
毎年定期昇給があり、上司の評価によって昇給幅が変わるものの、その幅は大きくないという声が多数です。
基本的には年功序列のため、大幅な年収アップのためには昇任することが必須となります。
1-2.福利厚生
国土交通省は、職員が安心して職務に専念できるよう勤務条件の充実を図っています。
- 諸手当
…扶養手当、通勤手当、住居手当、超過勤務手当、単身赴任手当等 - 有給休暇
…年次有給休暇(年間20日間)、特別休暇(夏期、年末、結婚、出産、病気等) - 共済制度
…職員は全員、国土交通省共済組合に加入することになる
…職員は、医療費や出産費等の給付を受けることができる - 仕事と育児・介護の両立支援制度
…(妊娠・出産)業務軽減、産前休暇、産後休暇、配偶者出産休暇
…(育児)育児参加のための休暇、育児休業、育児短時間勤務
…(介護)介護休暇、短期介護休暇、フレックスタイム制
出典:国土交通省
このような取り組みにより、職員が健康で安定的に勤務できる職場作りを目指しているようです。
1-3.評価制度
国土交通省の人事評価の基本的枠組みは以下の通りです。
- 評価基準・設定された目標に照らし、絶対評価により行われる
- 定期評価として能力評価及び業績評価が行われ、特別評価として能力評価が行われる
また、定期評価と特別評価の詳細は以下の通りとなっています。
定期評価(能力評価・業績評価)と特別評価
- 能力評価は、10月1日から翌年9月30日までの期間を評価期間として、職務遂行するに当たり発揮した能力を評価するものとして年1回実施
- 業績評価は、10月1日から翌年3月31日までの期間及び4月1日から9月30日までの期間を評価期間として年2回実施
- 特別評価は、条件付採用期間及び条件付昇任期間中の職員に対し、条件付採用期間及び条件付昇任期間を評価期間として、能力評価を実施
出典:人事院
上記の人事評価は、給与や任用(昇任、降任及び転任)に反映されます。
1-4. やりがい・成長
日本全国をフィールドとして、政策の制度設計など影響力の大きい仕事に携われることがやりがいに繋がっているようです。
本省だけでなく出先機関で働く機会も多く、最前線での仕事をすることもできる
仕事の幅の広さが魅力だという声も多くあります。
また、2年ごとに全く経験したことのない仕事を一から覚え、3か月後に慣れるというサイクルが普通であるため、成長を実感しやすいという声も目立ちました。
部署・時期によっては残業が月100時間を超えるほど激務ですが、残業手当が満額で出ないことが状態化してるほか、頑張った分はほとんど給与に反映されないという意見もありました。
さらに、良くも悪くも年功序列での昇級なので、モチベーションを維持しにくいという声も多く、より良いポストへの異動を意識して仕事をする人も多いようです。
1-5. 雰囲気・働きやすさ
国土交通省は、全体としては前例を重視する保守的な風土で、縦割り組織なので風通しはよくないという声が多数でした。
また、部署によって雰囲気は大きく異なるため一概には言えませんが、基本的にトップダウンの傾向が強い印象です。例えば、部署によっては「上司にお仕えする」という声もあるなど、上下のラインで建設的な議論が行われることは少ないという意見もありました。
総合職は1〜2年のスパンで異動を繰り返すため、上司が部下に教える風土があり、部署内でのサポートも得やすい印象でした。
1-6.将来性
国土交通省では、2018年に、概ね30代の中堅・若手職員が中心となって、2030年頃のあるべき日本社会の姿を構想し、具体的な政策提言をとりまとめるプロジェクトとして、「国土交通省 政策ベンチャー 2030」を立ち上げました。
このプロジェクトでは、未来の兆しを掴みつつ、2030年頃のあるべき日本社会の姿を構想し、その実現に向けた政策ニーズを探る作業を行い、政策課題を整理しています。
政策課題については、以下の7つを「未来シナリオ」として掲げています。
未来シナリオ
- 「消耗戦による衰退」から「戦略的な撤退」へ
- 国際観光による外国人との交流促進」から「定住外国人増加への備え」へ
- 「“絶対安全”信仰」から「脱“絶対安全”」へ
- 「デジタルな孤立」から「デジタルによる連帯」へ
- 「(不完全な)見えざる手」から「技術による全体最適」へ
- 「組織による肩書き」から「個人としての信用」へ
- 「後追いの政策」から「アジャイル開発する政策」へ
出典:国土交通省
また、「未来シナリオ」に取り組む際の「アクションプラン」として下記7つを挙げています。
アクションプラン
- 戦略的な撤退による地方行政経営の健全化
- 定住外国人の日本社会への包摂のための受入環境整備
- 「都市交通ビッグバン」への対応
- 新技術のポテンシャルを最大限に発揮
- 世界と戦える「質の高い集積」の形成
- 公共と個のファジー化
- 挑戦の成功を盲信せず、謙虚に「学習」
出典:国土交通省
日本は現在、世界に類を見ない超高齢化・人口減少時代を迎えるなど、大きな変化の中にあります。そのような状況下において、国土交通省では、日本社会のあるべき姿について展望を探り、着実に政策に取り組んでいるので、将来性は期待できると言えます。
2.国土交通省の採用情報
国土交通省では、年に一度、キャリア(総合職)として「事務系」「技術系」ともに中途の募集があります。
本章では、国土交通省の採用・求人に関する情報をまとめました。
出典:国土交通省
2-1.中途採用での募集職種
国土交通省では、2023年10月採用枠について、キャリア(総合職)として「技術系」で“係長級”と“課長補佐級”の中途の募集がありました。また、「事務系」については、採用ページで「準備中」となっています。
職種 | 主な業務内容 |
総合職事務系 | 国土交通省の担当分野における政策立案、調査、研究などを行う |
総合職技術系 | 技術的な知識を活用して、国土交通省の担当分野において、政策立案、調査、研究を行う |
出典:国土交通省
上記は総合職の募集なので、国家公務員採用総合試験に相当する「経験者採用試験」を受験する必要があります。
現在、中途採用ページで公表されている試験日程は以下の通りです。
「技術系・経験者採用試験」の試験日程
- 受付期間:2021年12月14日(火)~2023年10月7日(金)18時
- 最終合格発表: 2023年10月14日(月)(予定)
出典:国土交通省
なお、ノンキャリアの場合には「国家公務員採用一般職試験」などを受験する必要があります。
2-2.求められる人材
国土交通省では、以下の条件に該当する人材を採用したいと考えているようです。
- 公務に対する強い関心と、全体の奉仕者として働く熱意がある
- 日本の経済の成長を促し、支えたいという情熱を持っている
- 国の将来をデザインし、その将来像を自らの手で着実かつ具体的に形にしようという意思がある
- 困難な課題を解決できる論理的な思考力、判断力、表現力などの能力がある
- 交通政策の推進に関連する分野での業務に、強い関心と専門的知識を有している
また、国土交通省では、「国民の命と暮らしを守る」を使命として掲げ、以下の5つの目標を設定しています。
国土交通省5つの目標
- 自立した個人の生き生きとした暮らしの実現
…人々が自由かつ自発的に活動し、それぞれのライフスタイル、ライフステージを生き生きと安心して暮らす社会の実現 - 競争力のある経済社会の維持・発展
…国際的な競争力を有し、持続的に安定成長する経済社会の実現 - 安全の確保
…絶対の安全はあり得ないことにも留意した、災害による被害の最小化、交通の安全確保、海上の秩序と治安の維持 - 美しく良好な環境の保全と創造
…地球環境の解決に向けた貢献、良好な環境の保全・創出、国民が誇りを持てる美しい日本の形成 - 多様性のある地域の形成
…地域の特性を活かした個性豊かな発展、地域間の相互補完を含めた自立的な発展
出典:国土交通省
選考面接では、上記の求められる人物像や、5つの目標を軸に「国土交通省の政策に貢献できる人物であること」をアピールするのが有効です。
例:
・普段から国内外の経済・社会問題や環境問題に対する情報にアンテナを伸ばし、自分なりの考えを持っておく
・これまでの職歴の中で交通政策の推進のために貢献できた経験をピックアップし、具体的に言語化しておく
3.国土交通省の官庁情報
国土交通省は、2001年に旧4省庁(運輸省,建設省,国土庁,北海道開発庁)を統合して設置された行政機関です。
出典:国土交通省
3-1.事業内容
国土交通省は、国土の総合的かつ体系的な利用・開発・保全を目的として、以下のような分野で「社会資本の整合的な整備、交通政策の推進、気象業務の発展、海上の安全および治安の確保」を担っています。
出典:国土交通省
また、国土交通省は、『国土形成計画(全国計画)』において、国土の基本構想として以下4つを挙げています。
基本構想 | 主なポイント |
対流促進型国土の形成 | 地域間でヒト・モノ・カネ・情報の双方向の活発な流れをダイナミックに湧き起こし、イノベーションの創出を促す国土の形成を図る |
東京一極集中の是正と東京圏の位置付け | ・雇用や暮らしなどの面で魅力ある地方の創生を図る ・東京圏の過密緩和や防災リスクの軽減を図る |
「コンパクト+ネットワーク」 | ・生活に必要なサービスを一定地域に集約することを図る ・規模の小さい一地域だけでは提供困難なサービスは、中核地域などと連携してカバーすることを図る |
地域別整備の方向 | 「コンパクト+ネットワーク」の具体化は、地域自らが主体となり地域の特性を踏まえて取り組むこと |
これらの基本構想に基づいて、国土交通省は中長期的な観点から国土開発を推進しています。
3-2.官庁概要
国土交通省の官庁概要を以下にまとめました。
所在地 | 東京都千代田区霞が関2-1-3 中央合同庁舎第3号館 |
代表者 | 国土交通大臣 斉藤 鉄夫 |
設置 | 2001年1月(前身:建設省、運輸省、北海道開発庁、国土庁) |
予算 | 一般会計 5兆8,981億円(2021年度) (2020年度第3次補正予算を含め9兆1,893億円) |
職員 | 2,224人 |
任務 | 国土の総合的かつ体系的な利用、開発及び保全など |
さいごに
国土交通省での働き方や転職について紹介しました。
国土交通省への転職は、やりがい・自己成長・将来性などの面でメリットが大きいですが、年功序列で昇給していくことや、全体の奉仕者として働く熱意がある人物が求められている点に注意しておきましょう。
転職成功のポイントは、徹底した事前準備にあります。
より転職成功率を高めたいという方は、転職エージェントを利用して、選考対策を行うことをおすすめします。
あなたが最高の転職をできることを陰ながら祈っております。
現役の転職コンサルタント集団。大手人材会社に在籍しているメンバーが多いため、執筆内容に制約がかからないように『匿名性』とし、裏事情やノウハウを包み隠さずにご紹介しています。