組み込みエンジニアに転職するには?将来性や求められるスキルを解説

組み込み エンジニア 転職

組み込みエンジニアに転職するには何から始めればいいの?

組み込みエンジニアの需要や将来性は?

などと不安を感じていませんか。

組み込みエンジニアは若手人材の需要が高く、将来性のある仕事です。転職するには、求められるスキルや経験を十分身につける必要があります

本記事では、キャリアアドバイザーとして多くのIT人材へ転職支援を行ってきた私が、組み込みエンジニアの転職市場の現状転職に必要なスキルについてご紹介します。

  1. 組み込みエンジニアの転職市場は活発!
  2. 組み込みエンジニアの転職に最低限必要なスキルと知識3つ
  3. 組み込みエンジニアの転職で評価が高くなる要素6選
  4. 組み込みエンジニアに転職するメリット3つ
  5. 組み込みエンジニアに転職するデメリット2つ
  6. 組み込みエンジニアに転職した場合の年収目安
  7. 組み込みエンジニアになるための転職理由の例文
  8. 組み込みエンジニアに効率よく転職する方法3選
  9. まとめ

この記事を読めば、組み込みエンジニアの転職市場の動向や必要なスキルを知り、転職に向けて具体的な行動を起こせるようになります。

それでは見ていきましょう。

1.組み込みエンジニアの転職市場は活発!

組み込みエンジニアの転職市場は活発です。

リクルートによると、2018年12月末日時点における「組込・制御ソフトウェア開発エンジニア」の転職求人倍率は4.00倍という高倍率でした(参考:リクルートキャリア:2018年12月の転職求人倍率を発表。12月は1.65倍(前年同月差 ▲0.27)

求人倍率は1.00を超えると求職者よりも求人数が多いことを意味します。つまり、1人あたり4社の求人がある売り手市場ということです。

2018年時点の求人倍率のため少々データは古いものの、市況を見る限りエンジニア需要は上昇を続けており、求人数もさほど落ち込んでいません。

特に組み込み産業のなかで注目が集まっているDX・AI分野では、人材確保が最優先課題となっています。IPA(情報処理推進機構)が組込みシステム・IoT[※1]産業に関連する企業に対して行った調査(2020年度)によれば、組み込み系関連企業がDX[※2]やAI技術を活用する際の課題として「人材の確保」がともに1位でした。(参考:IPA:2020年度組込み/IoT産業の動向把握等に関する調査,2020.

※1 IoT(Internet of Things;モノのインターネット):従来インターネットに接続されていなかったモノをインターネットと接続することで、これまでの社会になかった新しい価値やサービスを生み出そうとするコンセプト。
※2 DX(Digital Transformation):デジタル技術によって従来の暮らしや産業構造を変革し、よりよいものへとアップデートしようとすること。

組み込み産業において、人材確保の課題はいまだに大きいです。組み込みエンジニアへの転職はまだまだチャンスが多いといえるでしょう。

さらに詳しく知るため、組み込みエンジニア転職市場の現状について、以下の4つの観点から見ていきましょう。

1-1.若手人材の需要が高い

組み込みエンジニアの転職市場では、20代の需要が高まっています

理由は、既に現場で働くエンジニアには30〜50代の割合が比較的多くやや高齢化しており、次世代を担うエンジニアが少ないためです。

組み込みエンジニアの年齢構成の割合は以下の通りです。

組み込みエンジニアは30代から50代の人が多く、やや高齢化傾向にあるため若手人材の需要が高い

[出典]IPA:IT人材白書2016を参考に編集部作成

ここ最近はWeb系エンジニアに若手が流れているため、組み込みエンジニアの20代人材は割合として少なく、若手の需要が高くなっています。

組み込みエンジニアに若手が増えづらい背景として、主に2つあります。

1つ目は言語です。

組み込みシステムの開発では、C系言語やアセンブリ言語が主流です。しかし、最近はWebサービスやスマホアプリが普及し、若手エンジニアが最初に学ぶ言語としてJavaScript、Python、Ruby、Swiftなどを選ぶ傾向にあります。C系言語を学ぶ若手エンジニアが少ないことが、組み込みエンジニアの若手人材不足にも影響を及ぼしています。

2つ目はハードウェアの理解が必要なことです。

組み込みエンジニアはハードウェアの回路図面などをもとにシステムを設計する場面もあります。ソフトウェアだけでなくハードウェアの知識も必要なため、学習することが多く十分な知識を持つ人材が少ないのです。

つまり、C系言語を習得しハードウェアの理解があれば、20〜30代の転職は大きな可能性が広がっています。十分なスキルを身につければ、あらゆる企業から引く手あまたの人材となれるでしょう。

1-2.40代以上は並列処理スキルがあれば転職に有利

20〜30代の需要が高いとお伝えしましたが、40代以上も並行処理スキルがあれば組み込みエンジニアへの転職は可能です。

並行処理スキルとは、CPU内部にあるコアの数を増やしたマルチコア(複数のコア)で、複数の処理を同時におこなうマルチスレッド(複数の処理の実行)を実現するスキルのこと。マルチコアには、デュアルコア(2コア)やクアッドコア(4コア)、ヘキサコア(6コア)、オクタコア(8コア)などがあり、コア数が多いほど同時にたくさんの処理の実行が可能です。

近年は、組み込みOSでもマルチタスクが標準となりつつあり、複数の処理を同時に実行する「並列処理(マルチコア・マルチスレッド)」の需要が高まっています

しかし、現場の40代以上の組み込みエンジニアは、マルチタスクプログラムのスキルはあっても、並列処理に関する経験が足りない場合が多いのです。並行処理スキルを身につければ、40代以上でも必要な人材として重宝されます。

1-3.最新技術と親和性が高く将来性がある

組み込みエンジニアの仕事は最新技術と親和性が高く、将来性がある職種です。特に、IoTの分野では、組み込みシステムが欠かせません

IoTといえば、スマホやスマートデバイス(Alexaなど)に音声で指示をするだけで、家の中の電化製品を操作できるスマートホームのイメージが大きいのではないでしょうか。電化製品などのシステムも組み込みエンジニアの領分です。今後はIoTの普及に伴い、インターネットに接続するモノの幅がますます広がるため、組み込みエンジニアは長期的に高い需要が見込まれるでしょう。

現在ほどIoTが盛んではなかった2015年の時点でも、組み込みエンジニアのうちIoTに関わる業務を行う技術者は47.2%と約半数を占めていました(参考:IPA:IT人材白書2016

市場が拡大した今日、IoT関連業務の量はますます増加していると考えられ、それに伴ってIoTに携わるエンジニアも多くなっているでしょう。

実際に組み込みエンジニアが関わる具体的なIoT関連業務とは、どのようなものがあるのでしょうか。

以下に、代表的なIoT関連業務と、それぞれの業務に関与した経験を持つ組み込みエンジニアの割合をまとめました。

組込みエンジニアが担うIoT関連業務とその割合

IoT関連業務関わったことがある組み込みエンジニアの割合(449名中)割合
機器(センサー、GPSなど)からの自動データ取得活用26.9%
ヒト(SNS、モバイルなど)により発生するデータの取得活用13.8%
技術全般に対する判断や評価11.4%
クラウド上でのデータ蓄積・分析用アプリ8.7%
データ分析時のAI・機械学習6.0%
機器、ヒトにより発生するデータの分析・活用(ビッグデータ活用)4.0%
上記以外5.6%

〔出典〕IPA:IT人材白書2016

AI・機械学習やビッグデータなど、最新技術に携わる業務の多さがわかります。

これらの最新技術は今後ますます発展し、暮らしの一部として普及・浸透していくことが予想されるため、親和性の高い組み込みエンジニアの職種も将来性が高いと言えるでしょう。​​

1-4.未経験OKの求人がある

組み込みエンジニアの求人には、「未経験OK」「未経験歓迎」のものがあります。

組み込みエンジニアは若手人材が不足していることから、未経験でも積極的に採用・教育しようとする企業が少なくありません

実際に転職サイトで「組み込みエンジニア 未経験」と検索すると、以下の結果となりました(2023年10月時点)。

「組み込みエンジニア 未経験」で検索した際の求人数

サイト名求人数
リクナビNEXT144件
エン転職141件
マイナビ転職44件
doda25件

また、『リクルートエージェント(IT)』『マイナビIT AGENT』などIT業界に特化したエージェントでも、未経験で転職できる組み込みエンジニアの求人を取り扱っています

エージェントなら非公開求人もあるため、求人数がさらに多い可能性もあります。おすすめのサービスは当記事で解説しているので、気になる方はそちらをご覧ください。

◆未経験から組み込みエンジニアを目指す人におすすめな転職サービスの紹介

組み込みエンジニアは未経験からでも目指すことができ、転職しやすい職種です。ただし、未経験OKの求人でも、何の知識やスキルもなしに転職活動に臨んでも成功する可能性は低いかもしれません。組み込みエンジニアの転職に最低限必要なことは身につけておくと安心です。

そこで、続いて組み込みエンジニアへの転職に必要最低限のスキルと知識を紹介します。

2.組み込みエンジニアの転職に最低限必要なスキルと知識3つ

組み込みエンジニアは、スキルや知識を身につければ、若手はもちろん40代以上や未経験からでも転職できる可能性のある職種です。

そこで、ここでは組み込みエンジニアの転職に最低限必要とされるスキルと知識を3つ見ていきましょう。

2-1.プログラミングスキル(C系言語・Java・アセンブリ)

組み込みエンジニアにプログラミングスキルは必須です。主に以下の開発言語を用います。

  • C言語
  • C#
  • C++
  • アセンブリ

特に習得しておきたいのはC言語です。

近年は組み込みエンジニアの転職市場において、C言語が使えて、かつ電子系の学部出身であれば、業務経験がなくても採用されるケースが増えています。このとき、特にC言語でコードを記述し、プログラムの問題点を見つけて修正・解決できるスキルが必要です。

また転職では、C言語を十分に使いこなせるプログラミングスキルが重視されます。

組み込みエンジニアを目指すなら、C言語を集中的に学びましょう

2-2.組み込み系OSの知識

OSというとスマートフォンやパソコンの「iOS」「Android」「Windows」などをイメージする人が多いでしょう。

組み込み分野では、そのような汎用OSとは別に組み込み系OS(エンベデッドOS)があります。組み込みエンジニアを目指すなら組み込み系OSの知識も必要です

組み込み系OSとは、産業機器や家電製品などに組み込まれている小さなコンピューター(マイクロコンピューター)を中心とした、組み込みシステムを制御するオペレーティングシステムです。

主に「TRON」(トロン)という日本発の組み込み系OSがよく使われます。TRONは「The Real-time Operating system Nucleus」の略で、「リアルタイム(実時間)で機器を作動させるOSの中心部分」という意味です。

TRON系OSは「組込みシステムに組み込んだOSのAPI」で約60%のシェアを占め、利用実績で24年連続トップとなっています(参考:トロンフォーラム:組込みシステムに組み込んだOSのAPIで TRON系OSが60%のシェアを達成し24年連続の利用実績トップ,2020年4月2日.

シェア拡大の背景には世界的な認知度の向上があり、2018年にTRONがアメリカの電気電子学会(IEEE)によるリアルタイムOSの国際標準として成立(参考:トロンフォーラム:μT-Kernel 2.0がベースのIEEE 2050-2018がIEEE標準として正式に成立,2018年9月11日.。さらに OSが異なっても共通のプロトコルを用いて通信を成立できるTCP/IPの利用事例が増えています。

こうした経緯から、TRONは世界中であらゆる組み込み系システム開発に利用されているのです。

上記のように、組み込みエンジニアを目指すならTRONの知識は必須といえます。TRONについての知識を学び、組み込み系OSへの理解を深めておきましょう。

2-3.ハードウェアの知識

組み込みエンジニアはソフトウェアだけでなく、ソフトウェアを組み込む対象となるハードウェアの知識が必須です。

IoTが普及するにつれ、幅広いハードウェアの知識が求められます。主なハードウェアは以下の通りです。

  • 電子回路
  • CPU(マイクロコンピューター:電気回路を制御する半導体チップ)
  • 周辺IC
  • 電子デバイス(電子機器)

まず、組み込みエンジニアになりたいなら、電子回路図を読めることが不可欠です。業務では回路図をもとにプログラミングするためです。

たとえば、コンピューターに必要な最低限の基幹部品を1枚の回路基盤に搭載したシングルボードコンピューター「ラズベリーパイ」の回路図というものがあります。

ゼロから独学で回路図をマスターすることには向かないものの、実際の回路図がどのようなものかイメージをつかむことに役立つので、一度見てみましょう。

回路図の読み方を学び、機能ごとに1つずつ調べていけば、回路図に関するおおよその知識を身につけられます。

続いて、CPUに対する理解を深めましょう。組み込みエンジニアが作ったソフトウェアを動作させてくれるのがCPU(マイクロコンピューター、マイコン)です。

組み込みで使うCPUには、「RL」「TX」「C2000」などがあります。自分が使うCPUのマニュアルをよく読んでおきましょう

さらに、メーカーからは高性能で新しいCPUがどんどん開発されるため、常にアンテナを張っておくことが大切です。

CPUを学んだら、周辺ICの知識を身につけます。周辺ICには「モータードライバ」(モーターを回すためのデバイス)「EEPROM」(不揮発性のメモリ)などがあります。ICメーカーがデバイスごとに詳細をまとめた「データシート」というマニュアルを公開しているので、データシートで特性や使い方を理解できます

組み込みで利用される電子デバイスは、「センサ」「スイッチ」「モーター」「カメラ」など多くの種類があります。電子デバイスにも詳細情報がまとめられたデータシートがあるので、何が書かれているのか理解できるようになりましょう

3.組み込みエンジニアの転職で評価が高くなる要素6選

組み込みエンジニアの必須スキルを身につけることで、ようやくスタートラインに立つことができます。

しかし、スキルがあれば必ず採用されるかといえば、そうではありません。ただ、転職の成功確率を上げるためにできることはたくさんあります

ここからは、組み込みエンジニアの転職で評価が高くなる要素6選をご紹介します。

3-1.基本設計からデバッグまでの一貫した開発経験

基本設計からデバッグまで一貫した開発経験があると、フルスタックエンジニアとして選考時に高く評価されます

フルスタックエンジニアは、エンジニア業務においてすべての工程を手掛けられるエンジニアを意味します。

1人で何役ものエンジニア業務をこなすことができるため、企業にとっては開発スピードを向上できるうえ、人件費を削減できる貴重な存在です。

さらに、ソフトウェア開発を行うという点において、組み込みエンジニアリングにも開発経験が活かせるというメリットがあります。たとえ組み込みの専門知識はなくとも、開発全体の知識や経験は重要な評価対象です。

3-2.ファームウェアやアプリケーションなどの開発経験

ファームウェア、ドライバ、ミドルウェア、アプリケーションなどの開発経験があると、組み込みエンジニアとして一通りのスキルは持っているとみなされて高く評価されるでしょう。

これらの開発はハードウェアの構成をもとにしており、組み込みエンジニアの業務と近いためです。

以下はそれぞれの用語の意味と代表例をまとめたものです。自身に関連する開発経験がないか振り返ってみましょう。

用語意味代表例
ファームウェアコンピューターや機器に内蔵されるソフトウェアの一種。
本体内部の回路や装置などの基本的な制御を司る機能を持つもの
・BIOS.
・通信機器(ルーター)
・携帯電話
・複合機
ドライバ
(デバイスドライバ)
パソコンに接続される周辺デバイスを操作するためのソフトウェア
ミドルウェア各業務処理を行うアプリケーションと、コンピューターの基本的な制御を行うOSの間に存在するソフトウェア・通信プロトコル(TCP/IP, USB, BlueToothなど)
・ユーザーインターフェース
・ファイルシステム
・画像認識/音声認識
・数学ライブラリ
・日本語処理
アプリケーションOS上で動作するソフトウェア・生産管理システム(基幹系アプリケーション)
・メールソフト(情報系アプリケーション)

自分が開発に携わったハードウェアの仕様を理解して転職時にアピールすると、類似の分野で高い評価を得られます。開発経験がある場合は、開発の詳細を把握しておくことが大切です。

3-3.リアルタイムOSを用いた開発経験

組み込みシステム開発において、以下の主要なリアルタイムOS(RTOS:Real Time Operating System)を扱った経験があると高く評価されます。

  • ITRON(アイトロン)
  • VxWorks(ブイエックスワークス)

ITRONは、TRONプロジェクトにおいて設計された組み込みシステム用のリアルタイムOSです。

1987年に初めてITRON1が公開されて以来、ITRON2、μITRON2、ITRON3、μITRON3、μITRON4とバージョンアップを重ねています。なお、現在は組み込み機器の高度化や複雑化へ対応するため、次世代ITRONとしてT-Kernelシリーズへの移行が推進されています。T-Kernelも併せて知っておくといいでしょう。

VxWorksは、WIND RIVER社から提供されているリアルタイムOSです。1980年始めに登場して以来、組み込みシステム用のリアルタイムOSの業界標準として利用されてきました。

高度な安全性が要求される航空宇宙・防衛システムの分野で広く使われています。また、特にリアルタイム制御を必要とするロボット制御の分野にも強みがあります。

上記のようなリアルタイムOSを用いた開発経験があれば、積極的にアピールしましょう

3-4.並列処理スキル

近年は、従来のマルチタスク処理とは異なる「並列処理スキル」を持つ人材の需要が高まっており、転職時に高く評価される要素となっています。具体的には、マルチコアやマルチスレッド処理に対応できるスキルが求められます。

ハードウェアの中でも特にCPUが進化したことで、制御対象となるデバイスが複数の命令を同時に実行できるようになりました。これを”マルチコア・マルチスレッド機能”と言います。

しかし、その機能を発揮するにはソフト側が対応している必要があります。デバイスの高い性能を引き出すために、並列処理スキルを持つ人材が求められています

3-5.組み込み系資格

組み込みエンジニアに役立つ資格として、ETEC、OCRES、JSTQB、エンベデッドシステムスペシャリスト試験などを取得していると転職時に評価されます。

以下は、主な組み込み系資格をまとめています。

転職時の高評価につながる組み込み関連資格の一覧
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資格概要合格率・難易度受験方式・日程料金
ETEC(イーテック)・組込み技術者試験制度(Embedded Technology Engineer Certification)
・2006年(平成18年)末に一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が
開発した組込み技術者向け試験制度
・試験の種類は「クラス1」、「クラス2」の2つがある
・試験は合否判定ではなくレベル判定
・合格判定なしCBT方式、全国の試験会場
で通年受験可能
・クラス1(KS-100) 1試験 22,000円(税込)
・クラス2(KS-200) 1試験 16,500円(税込)
OCRES(オークレス)・OMG認定組込み技術者資格試験プログラム
(OMG-Certified Real-time and Embedded Specialist Program)
・組み込みシステムの開発者を対象に、世界130ヶ国以上で実施されている国際的な資格試験
・試験はすべて英語
・レベルは「ファンダメンタル」「インターメディエイト」「アドバンスト」の3つ。
上位レベルの資格に認定されるには、下位レベルの資格を取得する必要がある
・合格率は非掲載
・難易度はレベルに比例して上昇
・英語力が必要という点からも難易度は高い
通年全コース ¥32,750
JSTQB認定テスト技術者資格・Japan Software Testing Qualifications Board
・世界的に通用する国際資格
・試験の種類は「テストマネージャ(TM)」「テストアナリスト(TA)」の2つつがある
・レベルは「Advanced Level試験(AL)」、「Foundation Level試験(FL)」の2つがある
・FLの合格率:69.0%(2021年8月試験)
・AL(TM)の合格率:33.44(2021年8月試験)
・AL(TA)の合格率:13.5%(2021年2月試験)
2月、8月・Advanced Level:22,000円(税込)
・Foundation Level:22,000円(税込)
エンベデッドシステム
スペシャリスト試験(ES)
・IPAが主催している国家試験の中で、組み込みエンジニアに特化した資格・合格率16.4%(2020年10月)秋期 : 10月第3日曜5,700円(税込)

ただし、上記の資格は未経験から組み込みエンジニアを目指す人には難易度が高いです将来的な取得を目指し、キャリアアップ時に活用するといいでしょう。

3-6.英語力

英語のデータシートを読めるスキルがあれば現場で重宝されるため、高く評価されます。

組み込みで海外メーカーの電子デバイスや周辺ICなどを扱う場合、データシートは基本的に英語です。英語のデータシートを読んで理解し、正しく扱えなければ、海外メーカーの製品を使えません。

話せる必要はなく、英語のデータシートにどんなことが書いてあるのかを理解できるレベルで十分です。日本語のデータシートの読み方に慣れたら、英語のデータシートを調べながら読み、内容を把握できるようにしておくといいでしょう

4.組み込みエンジニアに転職するメリット3つ

組み込みエンジニアに転職するメリットを明確にイメージできていると、転職の動機をしっかりと持つことができモチベーションにつながります。ここでは組み込みエンジニアに転職するメリットを詳しく見ていきましょう。

ここでは、以下の3つのメリットについて説明します。

4-1.社会貢献性が高いためやりがいを実感しやすい

組み込みエンジニアは、社会貢献性が高くやりがいを実感しやすい仕事です。

組み込みシステムは日常のさまざまな場所で活用されています。家の中では家電などの電化製品、街中では自動車や公共の電子機器、医療現場では医療機器など、あらゆるところで社会を支えているのです。

組み込みエンジニアは、人々の生活と社会を支える貢献性の高い職種といえます。

また、自分が開発に携わった製品を生活の中で見かけることもあるでしょう。実際に使われているところを目にし、社会や人々の生活に貢献している実感を持てることは大きなやりがいになります。

4-2.最新技術に携われる

組み込みエンジニアに転職するメリットとして、AIやIoT、ウェアラブル機器、ビッグデータなどの最新技術に組み込みの面から携われることがあります。

近年は、IT技術の発展が進み、さまざまな先進技術が実用化され、商品開発へ応用されるようになってきています。AIやIoT技術を使ったスマートスピーカーは、世の中に普及し多くの家庭で使われています

また、スマートウォッチなどの身につけられる(ウェアラブル)機器も人気があり、企業や官公庁、金融・交通等の公共インフラの現場では、ビッグデータをいかに活用するかに注目が集まっています。

これらの最新技術を製品に落とし込むには、組み込みエンジニアの存在が欠かせません最新技術に携わりながら仕事をしたいという方には、大変魅力のある職種でしょう。

4-3.産業の拡大とともに長期的な活躍が見込める

DXやIoTなど先進技術市場は今後ますます拡大すると見込まれるため、長期的な活躍が見込めることも組み込みエンジニアのメリットです。

IoT・DXなど先進技術マーケットは、これからも高まる需要に応え続けるべく発展していくでしょう。そのため、成長産業と関わりの深い組み込みエンジニアの職種も将来的に安定して需要があり、あらゆる活躍のチャンスが広がっているといえます。

5.組み込みエンジニアに転職するデメリット2つ

組み込みエンジニアに転職するデメリットをあらかじめ知っておくことで、転職後にギャップを感じて後悔することを防げます

どのようなデメリットがあるのかを知り、働き方の検討企業選びの参考にしましょう。

ここでは、以下の2つのデメリットについて説明します。

5-1.不具合発生時は他のエンジニア以上に大変

組み込みエンジニアの業務は、不具合発生時の対応が非常に大変です。

組み込みシステムは常時稼働のものが多く不具合発生時にすぐに修正できるわけではありません。関係各所との調整をしなければならず、不具合を解消するまでに大きな手間と時間がかかります。

家庭用機器に搭載する組み込みシステムの場合は、リコール(回収・修理)の問題が起こらないよう慎重な開発と品質管理が求められます。また、企業向けあるいは官公庁や金融・交通等の公共インフラ向けの組み込みシステムの場合、可能な限り稼働している状況を維持しながら品質管理をしなければなりません。

5-2.他のエンジニアより時間外労働が多め

組み込みシステムはデバイスなど別の製品に搭載するものなので、その製品の製造予定に合わせて開発する必要があります。スケジュールによってはシビアな期間での開発となることもあり、時間外労働が避けられないケースも少なくありません

以下は、エンジニアの残業時間を比較したものです。

エンジニアの残業時間を職種別に見ると、組み込みエンジニアの残業時間は有意に多い

[出典]doda:90職種別の残業時間ランキング, 2023年10月31日を参考に編集部作成

組み込みエンジニアの残業時間は「28.3時間」となっています。一方、IT/通信系のエンジニアの残業時間はいずれも20時間強、社内SEに至っては「18.3時間」です。

他のエンジニアと比較しても、残業や休日出勤が多い仕事といえます。

6.組み込みエンジニアに転職した場合の年収目安

組み込みエンジニアの平均年収は480.8万円です(参考:doda:組込みエンジニア

令和2年における日本の平均年収は433万円のため、組み込みエンジニアの平均年収は高めの水準と言えます(参考:国税庁:令和2年分 民間給与実態統計調査

また、組み込みエンジニアは他のエンジニア職と比較しても年収が高めの職種です。

以下は他のエンジニアの年収目安と比較したものです。

職種年収目安
組み込みエンジニア480.8万円
サーバーエンジニア467.5万円
社内SE450.7万円
アプリケーションエンジニア440.4万円
Webエンジニア422.2万円

[出典]doda:あの職種とはどんな仕事?doda職種図鑑(全100職種)を参考に編集部作成

さらに年収分布をみていきましょう。

組み込みエンジニアの年収別の割合は以下の通りです。

組み込みエンジニアの年収分布を見ると400万円以上500万円未満の層が最も多く、全体の25%を占めている

[出典]doda:組込みエンジニアの2023年10月現在のデータをもとに編集部作成

最も多いのは400〜500万円未満(25%)、続いて300〜400万円未満(23%)、500〜600万円未満(18%)となっています。

組み込みエンジニアはスキルや経験が収入に反映されやすい職種です。

組み込みエンジニアへの転職で年収アップを実現したい方は、積極的にスキルアップを目指したり実務経験を積んだりするようにしましょう

7.組み込みエンジニアになるための転職理由の例文

組み込みエンジニアになるために転職活動をするうえで、不安に感じやすいのが「転職理由」です。「志望動機にどんな転職理由を書けばいいのだろう?」と悩んでしまう人もいるでしょう。

そこで、ここでは転職理由の例文をご紹介します。

転職理由の例文① 

「私は現在、光学機器メーカーで監視カメラを販売する営業職として勤務しています。ものづくりの現場の声や顧客のニーズを直接伺ううちに、IoT機器の開発や設計工程に興味を抱きました。特に、組み込みシステム開発に携わるエンジニアを強く志望するに至りました。ところが現職では開発部門への異動は許されておりません。そこで、IoT分野に強い貴社で組み込みシステムの開発に携わりたいと思い、転職を決意しました。」

転職理由の例文②

「現職は製造ラインを担当しておりますが、業務がマニュアル化されており成長に限界を感じておりました。自身のキャリアを考慮した際、以前から興味のあったものづくりの現場で自ら開発に携わりながら成長したいという思いが強くなりました。

技術を体得し世の中に広く貢献できるような働き方をかなえたいと考え、あらゆる電子機器の開発に携われる組み込みエンジニアへの転職を決意いたしました。」

未経験から組み込みエンジニアへの転職でも、説得力のある転職理由は書けます。ぜひ例文を参考にしながら、自分なりの転職理由を考えてみてください。

8.組み込みエンジニアに効率よく転職する方法3選

組み込みエンジニアへの転職を検討している人のなかには、「できるだけ早く効率的に転職したい」「確実にスキルを身につけて転職を成功させたい」と考える人もいるでしょう。

すぐに行動を起こし始めたいという人は、効率よく転職する方法を知っておきましょう。

以下では、組み込みエンジニアに効率よく転職する方法3選をご説明します。

8-1.未経験の求人に応募する

組み込みエンジニアには「未経験OK」「未経験歓迎」の求人も多く存在するため、未経験向けの求人に積極的に応募しましょう身につけたスキルや知識を強みに転職活動を進めれば、高い確率で内定を得られます

「未経験OK」の求人に応募するときには、以下の点を確認しておくと安心です。

  • 社内研修やOJTなど教育制度は充実しているか
  • 組み込みエンジニアとして知識やスキル、経験を得られる業務内容か
  • 組み込みエンジニアとしてのキャリアの見通しが立てられるか

未経験だからといって遠慮して妥協すると、後悔する可能性があります

組み込みエンジニアとして採用してもらえるなら教育制度に多少不安があっても仕方ない

のちのキャリアは組み込みエンジニアとして転職した後に考えればいい

といった考えは捨ててください。

組み込みエンジニアとして先の見通しを持ち、ベストなスタートを切るためにも、志望する企業はしっかりと見極めましょう

企業選びには転職エージェントを活用することをおすすめします

転職エージェントは非公開求人も多数保有しているため、求人サイトと比較して未経験の求人数が多い可能性があるからです。

また、教育制度や業務内容など求人票からはわかりにくい情報も、エージェントから詳しく聞けるので失敗しにくいです。

以下はIT系に強い転職エージェントです。ぜひチェックしてください。

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※求人数:2023年10月更新

以下の記事ではIT業界に強みがある転職エージェントをより詳しくまとめています。各転職エージェントについて詳しく知りたい方は参考にしてみてください。

◆【関連記事】IT業界に強い転職エージェントの詳しい紹介をチェック!

8-2.組み込み系に強いプログラミングスクールに通学する

組み込みエンジニアに効率よく転職するなら、スクールの活用がおすすめです。

組み込み系に強いプログラミングスクールに通学することで、スキル習得と転職活動をスムーズに進められます

組み込み系に強いプログラミングスクールとコースには以下があります。

組み込み系に強いプログラミングスクールとコース
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8-3.【補足】別分野のエンジニアとして経験を積んだ後に組み込みエンジニアに転職する

いきなり組み込みエンジニアを目指すのではなく、組み込みエンジニアとしての長期的なキャリアを考慮したうえで先にエンジニアの経験を積むのも、効率のよい方法です。

採用率や生涯年収アップの観点から言えば、少し遠回りしてでも、中長期的な目線でエンジニアリングのキャリアアップを図ることがおすすめなのです。

エンジニアとして経験を積んだ後に組み込みエンジニアに転職すると、それまで身につけたスキルや経験をもとにした活躍を見込んでもらえ、採用される可能性が高まります。

また、組み込み系に関する直接的な知識がなくても、基本設計からデバッグまで一貫した開発経験があれば評価の対象となります。

別分野のエンジニアとして経験があると、組み込みエンジニアにストレートに転職するのに比べて転職による年収アップを実現しやすいです。

さらに転職時点ですでに一貫した開発経験があれば、組み込みエンジニアとしてより高いポジションで働けるといった利点があります。

実際に組み込みエンジニアに転職した人の転職前の職種(上位5つ)は以下になります。

順位転職前の職種割合
1組み込みエンジニア29%
2アプリケーションエンジニア13%
3評価/実験/デバッグ7%
4回路設計5%
5機械設計/金型設計/光学設計5%

〔出典〕doda:組み込みエンジニア

いずれもエンジニアリングに関わる職種です。

アプリケーションエンジニアから組み込みエンジニアへの転職は、活躍する現場は違うものの同じC言語を扱うこともあり、実績を評価されやすいです。

アプリケーションエンジニアの領域にも「業務系アプリケーション」「Webアプリケーション」「スマートフォン向けアプリケーション」などがありますが、特に業務系アプリケーションに携わるエンジニアは親和性が高いのでおすすめです。

3〜5位はどれもものづくり系エンジニアの職種となっています。同じ業種からの転職なら、知識や経験を効果的に活かせるでしょう。

エンジニアの職種未経験から組み込みエンジニアとして就職すると、実質的にはテストエンジニアとして働くことになるケースも多いです。エンジニア経験があればそのような状況を避け、早いペースで組み込みエンジニアとして活躍できます。

9.まとめ

今回は、組み込みエンジニアへの転職について以下のように紹介しました。

組み込みエンジニアへの転職事情・成功の秘訣まとめ

転職市場

・若手人材の需要が高い
・40代以上は並列処理スキルがあれば転職可能
・最新技術と親和性が高く将来性がある
・未経験OKの求人がある

最低限必要なスキル

・プログラミングスキル(C系言語・Java・アセンブリ)
・組み込み系OSの知識
・ハードウェアの知識

転職で評価が高くなる要素

・基本設計からデバッグまで一貫した開発経験
・ファームウェアやアプリケーションなどの開発経験
・リアルタイムOSを用いた開発経験
・並列処理スキル
・組み込み系資格
・英語力

効率よく転職する方法

・未経験の求人に応募する
・組み込み系に強いプログラミングスクールに通学する
・エンジニアとして経験を積んだ後に組み込みエンジニアに転職する

組み込みエンジニアは社会貢献性が高く、成長産業に携わりながら長期的に働ける仕事で、道はあらゆる人に開かれています

スキルや知識を着実に身につけて、しっかりと転職準備を進めましょう。

ぜひ今回の記事を参考に、あなたのキャリアに活かしてくださいね。