採用基準の設定方法|最適な人材を採用するポイントを解説!

採用活動において、

「優秀な人材を採用したい」
「どんな採用基準を設ければ良いのだろう」

と考えていませんか?

採用基準は企業が求めている人材によって変化するため、状況に応じて柔軟に設定する必要があります。

また応募者を公正に評価し、スピーディーに選考を進めるためにも、適切な採用基準を設定することが重要です。

そこでこの記事では、優秀な人材を獲得するために重要な採用基準について詳しくお話していきます。

  1. 採用基準は優秀な人材を得るために重要
  2. 採用基準を設定するまでの3step
  3. 評価項目を定める際の重要ポイント
  4. コンピテンシー採用を導入する
  5. 選考が上手くいかないときに見直すポイント
  6. 【要注意】就職差別となるような選考基準を設けない

全て読めば、採用基準のポイントから設定方法まで分かり、効率の良い採用活動が実現するでしょう。

1.採用基準は優秀な人材を得るために重要

採用基準とは、会社に適した人材を採用する上で応募者を評価する指標のことです。

面接では複数の人が応募者に合否を出しますが、人によって判断基準が異なると公平な決断が下せず選考の質の低下につながります。

また、採用基準が明確にあると迅速に合否を判断できるため、採用したい優秀な人材にいち早く内定を出すことができるでしょう。

採用基準は企業が求めている人材によって変化し、状況に応じて柔軟に設定する必要があります。

2.採用基準を設定するまでの3step

ここからは採用基準を設定する3つの手順を紹介していきます。

順に説明していきます。

2-1.自社に必要な人材を明確にする

採用活動を行うにあたり、自社にどんな人材が必要なのかを明確にしましょう。

企業によって欲しい人材は異なり、それによって採用基準も変わってきます。

そのため、以下のように今の会社の課題を解決できる人材を探しましょう。

  • 業績が落ち込んでいるため、前職で高い功績を残した人が必要
  • マネジメント能力の高い人が必要であるため、前職で管理職についていた人を採用する

自社に必要な人材の条件を考える場合、社内で現在活躍している人材の特徴から逆算する方法(コンピテンシー採用)もあります。

コンピテンシー採用については4章で詳しく説明してます。4章へスキップ≫≫

2-2.評価項目を定める

自社に必要な人材が明確になったら、評価項目を定めましょう。

以下のように様々な評価項目がありますが、求める人物像に応じてその都度優先順位を変えましょう。

  • スキル・経験値
  • コミュニケーション能力
  • 志向性
  • 論理的思考性
  • ストレス耐性
  • 問題解決能力
  • マネジメント能力
  • カルチャーマッチ
  • 志望度

2-3.項目ごとに評価基準を決める

最後に項目ごとの評価基準を定めます。

A~Eの5段階評価のように明確な評価基準を設け、合格ラインを定めることで、採否の判断をスムーズに行うことができます。

評価項目は具体的な質問に置き換え、どのような質問が返ってきたら合格なのかを明らかにしておきましょう。

面接で使える質問については、以下の記事で詳しく説明しているので参考にしてみてください。

3.評価項目を定める際の重要ポイント

評価項目は、会社との相性と、業務に必要な能力が備わっているかの2つのポイントから定めていきます。

それぞれ解説していきます。

3-1.価値観・人間性が自社と合っているか

価値観・人間性が自社と合っているか確認することは重要です。

どれ程高いスキルを持っていたとしても、価値観や人間性が異なり会社と馴染めなければ、応募者は本来の能力を発揮できず、また職場全体の雰囲気も悪化する恐れがあります。

価値観や人間性は、以下のような観点から質問してみてください。

  • カルチャーマッチ:企業文化や考え方に応募者が共感しているか
  • 志向性:応募者がどのようなキャリアパスを歩んでいきたいか
  • ストレス耐性:どんな時にストレスを感じ、どう対処しているのか

3-2.スキル・経験値は十分か職種ごとに検討する

スキル・経験値が備わっているかどうか検討します。

職種ごとに評価基準は異なるため、現場の声を聞きながら必要な能力を明確にしましょう。

主な職種における、よく用いられる評価基準の例を以下に示しました。

職種 評価基準
営業職 専門知識、理解力、行動力、計画力、企画力、交渉力
マーケター 企画力、調整力、分析力
エンジニア プログラミングスキル、データベースの操作スキル、数学知識、統計学知識
機械学習・ディープラーニングの知識、クラウドインフラの知識
コンサルタント ビジネス課題解決力、ITソリューション提案力、プロジェクト遂行力
事務職 中級以上のPCスキル、作業効率の高さ、計数感覚

またどのような企業・職種においても、仕事を円滑に進められるコミュニケーション能力は必須であるため、面接を通して確認しましょう。

加えて、今までで一番やりがいを感じたプロジェクトについて聞いたり、以下のような観点から質問したりすることもおすすめです。

  • 問題解決能力:失敗を客観的に評価できているか、対策を立て次につなげることができているか
  • マネジメント能力:戦略を踏まえた目標設定、業務の進捗管理、部下の適性把握などができるか

補足:新卒と中途では採用基準の優先順位が異なる

新卒の多くの方は社会人経験がないため「価値観・人間性」「主体性」など基礎力を見極めることが重要です。

一方、中途採用の場合は即戦力となることを期待するため、「経験年数に見合ったスキルがあるか」「応募に至る経緯に一貫性があるか」などを見極めることが優先されるでしょう。

実際に以下のグラフでは、第二新卒は熱意・ポテンシャルが重視されるのに対し、中途採用では仕事への理解度が優先されていることが分かります。

出典:中途採用業務の実績調査

4.コンピテンシー採用を導入する

コンピテンシー採用は近年採用活動や人事制度に用いられるようになり、人事部門において重要な要素となっています。

そこでこの章では、コンピテンシー採用について詳しくお話ししていきます。

それでは見ていきましょう。

4-1.そもそもコンピテンシーとは?

出典:Forword March

コンピテンシーとは「業務成績の高い優秀な人材(ハイパフォーマー)の思考傾向や行動特性」のことです。

コンピテンシー採用を導入することで、ハイパフォーマーの表面的な成果ではなく、成果を出すまでの行動について客観的かつ具体的に評価することができます。

4-2.コンピテンシー採用導入までの4step

では実際、どのようにしてコンピテンシーを採用活動に利用していくのか説明していきます。

順に見ていきましょう。

(1)ハイパフォーマーを選定し、行動特性を調査する

まずは目標となるハイパフォーマーを選定し行動を把握します。

ここでポイントとなるのがハイパフォーマーの思考傾向を捉えることです。

成果につながる行動を深堀していき、「なぜその行動に至ったのか」を分析しましょう。

行動特性の調査では、複数のハイパフォーマーと面談の機会をつくり丁寧にヒアリングすることが大切です。

(2)コンピテンシーディクショナリーを作成する

ハイパフォーマーの行動特性を調査したら、コンピテンシーディクショナリーを作成しましょう。

コンピテンシーディクショナリーとは「会社に必要なコンピテンシー項目を洗い出し、体系化したもの」のことです。

コンピテンシーディクショナリーは以下6つの領域に分類されています。

コンピテンシー 定義
達成・行動
  • 達成思考
  • 序・品質・正確性への関心
  • イニシアチブ
  • 情報収集
援助・対人支援
  • 対人理解
  • 顧客支援志向
インパクト・対人影響力
  • インパクト・影響力
  • 組織感覚
  • 関係構築
管理領域
  • 他社育成
  • 指導
  • チームワークと協力
  • チームリーダーシップ
知的領域
  • 分析的志向
  • 概念的志向
  • 技術的・専門職的・管理的専門性
個人の効果性
  • 自己管理
  • 自信
  • 柔軟性
  • 組織コミットメント

出典:日本におけるコンピテンシー

しかし、上記のコンピテンシーディクショナリーはあくまで1つの指標であるため、職種や業種に合わせて会社独自のものを作成しましょう。

「業績が高い」「仕事の効率が良い」「ミスが少ない」など、ハイパフォーマーそれぞれの特性ごとにコンピテンシー項目を分類すると活用しやすいです。

(3)経営層や配属部署とすり合わせる

コンピテンシーディクショナリーを作成したら、経営層と内容をすり合わせ会社の事業戦略やビジョンと相違がないか確認しましょう。

また、コンピテンシーディクショナリーにある項目すべてが各部署に必要であるとは限りません。

営業部、事務などそれぞれの配属先に必要なコンピテンシーを選び、コンピテンシー項目を確定させましょう。

(4)コンピテンシー項目を具体的な行動に落とし込む

コンピテンシー項目が確定したら、具体的な行動に落とし込み採用基準とします。

面接では「なぜそのような行動をとったのか」を聞き、質問を深堀していくと応募者の思考傾向をつかみやすいです。

応募者の思考傾向と作成したコンピテンシー項目を照らし合わせることで、応募者が入社後に活躍できるかどうかを判断しやすくなるでしょう。

5.選考が上手くいかないときに見直すポイント

採用基準に問題点があると選考が上手くいかないため、以下のような場合は採用基準を見直しましょう。

  • 採用基準が高すぎ、選考通過率が低い
  • 現場が欲しい人材が採用されない
  • 採用してもミスマッチにより離職率が高い
  • 採用基準が曖昧で選考結果に個人差が出ている

問題点を踏まえ、採用基準の設定で改善すべきポイントをお話していきます。

それぞれ説明していくので、当てはまるものを実践してみましょう。

5-1.転職市場を考慮して採用基準を設定する

採用基準は転職市場を考慮して設定しましょう。

というのも、人材獲得競争の激しい業界で採用基準を高く設定しすぎてしまうと、なかなか採用に至ることができないからです。

そのため、求人倍率・求人件数を調査したり、競合他社の動向を把握したりして市況に見合った採用基準に調整する必要があります。

ちなみに、2021年3月の業種別有効求人倍率は以下のようになっています。

出典:厚生労働省

5-2.現場と経営層が求める人材を一致させておく

現場と経営層が求める人材を一致させておくことも重要です。

一次・二次面接で現場の社員が採用したいと考えても、三次面接以降で経営層が不採用と決断してしまうと、実際に必要な人材を雇うことができません。

そのため、現場の状況や要望を経営層に明確に伝えることや、経営層と十分なすり合わせを行い合意を取っておくことなど、面接前の連携が必要です。

このように、求める人材をはっきりさせ、選考基準を統一することで、現場で必要なスキルに加えて、企業にマッチした人材を採用することができるでしょう。

5-3.募集背景から見直し、自社に必要な人材を明確にする

中途採用の場合は募集背景からの見直しも行い、今の職場の課題を解決できる人材を探すことで、採用基準が定まってきます。

中途採用の例

募集背景:高い営業成績を上げていたAさんが退職するため、後任を採用したい
採用基準:目標達成意欲が強く、企画力・分析力に長けた営業経験者

上記の場合、営業職に人手が足りなくなったためAさんのような人材を求めて募集をかけています。

しかし求める人物像をそのまま採用基準としてしまうと、条件が厳しすぎ理想の人材がなかなか現れないといった状況を招いてしまうでしょう。

そのため、まずは営業経験のある「目標達成意欲」が強い人材を採用し、企画力・分析力は業務を通じて培っていくことを前提として選考を行うことも1つの手です。

改善例:採用基準の優先順位

  1. 営業経験者
  2. 目標達成意欲が強い
  3. 企画力・分析力に長けている

また、新しい職場に早く馴染める「協調性」のある人材を採用することを優先してみるのも良いでしょう。

5-4.選考の段階ごとに採用基準を定める

選考の段階ごとに判断する項目を定めましょう。

というのも、一度の選考で応募者が企業と合っているか判断することは難しく、また段階ごとに見極める点は異なるからです。

また面接では、面接官の役職によっても応募者を評価する視点が変わるため、それぞれの段階におけるポイントを押さえましょう。

  • 書類選考
    資格や職務経歴を見て応募者を絞る。
  • 適性検査
    基礎知識やカルチャーマッチを確認する。
  • 一次面接
    応募者の人柄やビジネスマナーなどをチェックする。人事部門が担当することが多い。
  • 二次面接
    実践的なスキルを確認する。部署責任者が担当することが多い。
  • 最終面接
    企業全体に貢献できるかを見る。役員・社長(新卒)や現場責任者・部長(中途)が担当する。

6.【要注意】就職差別となるような選考基準を設けない

選考において、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定してはいけません。

そのため、面接では仕事と関係のない質問はせず、就職差別につながるような質問をしないように注意しましょう。

厚生労働省によると、面接官は「基本的人権を尊重すること」「純粋な適正・能力のみを評価基準とすること」を意識し、以下のような質問は配慮すべきとされています。

a. 本人に責任のない事項の把握

本人の努力では解決できない事柄が採否の判断材料となることを防ぐため、以下のような質問はしないようにしましょう。

  • 本籍・出生地に関すること
    「出身地はどこですか?」「 生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか?」
  • 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
    「ご両親の職業を教えてください。」「ご両親は共働きですか?」
  • 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
    「自宅付近の略図を書いてください」「自宅は一戸建てですか?」
  • 生活環境・家庭環境などに関すること
    「お住まいはどのような環境ですか?」「片親となっているのはなぜですか?」

b. 本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握

信教の自由、思想・信条の自由などは憲法で保障されており、採用選考に持ち込むことで基本的人権を侵してしまう可能性があります。

直接質問する場合に加え、質問の形を変えて間接的に思想・信条を確認しようとすることも控えるべきです。

  • 宗教に関すること
    「信仰している宗教はありますか?」
  • 支持政党に関すること
    「政治や政党に興味はありますか?」
  • 人生観、生活信条に関すること
    「将来どのような人になりたいですか?」
  • 尊敬する人物に関すること
    「尊敬している人を教えてください」
  • 思想に関すること
    「現代社会についてどう考えていますか?」
  • 労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
    「学校以外で加入している団体を教えてください」
  • 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
    「家では何新聞を読んでいますか?」

特に、出身地や尊敬する人物はアイスブレイクでも聞いてしまいがちであるため注意しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

採用基準は企業が求めている人材によって変化するため、状況に応じて柔軟に設定する必要があります。

まずは企業に必要な人材を明確にし、評価項目を丁寧に洗い出していきましょう。

この記事が採用活動のお役に立てることを願っています。