「ブランクがあっても薬剤師として復帰できる?」
「復帰しても、仕事についていけるか不安…」
と考えていませんか。
結論、薬剤師は他の職種とくらべて復帰がしやすく、多くの薬剤師さんがブランクから復職しています。
ただ、ブランクが長くなるほど復職が難しくなりがちであるため、スムーズな復帰を果たすためにも、事前に薬に関する最新の情報や法改正を学んでおくことに加え、復職に適した職場選びをすることが大切です。
この記事では、転職のプロとして多くの薬剤師の復職をサポートしてきた私が、薬剤師が復職する際の勉強法や、おすすめの職場を紹介します。
- 薬剤師はブランクがあっても復帰できるが、長くなるほど難しい傾向にある
- ブランクが長くなるほど復帰が難しくなる5つの理由
- ブランクがある薬剤師がスムーズに復帰するためにやっておきたい勉強法4選
- ブランクがある薬剤師におすすめの職場3選
- ブランクがある薬剤師の職場選びのポイント
この記事を読めば、ブランクを埋めるためにやるべきことがわかり、自信を持って復職ができるでしょう。
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目次
1. 薬剤師はブランクがあっても復帰できるが、長くなるほど難しい傾向にある
薬剤師は資格職であるため、他の職種とくらべると、前職の退職からブランクがあっても復帰がしやすい職種です。ただ、ブランク期間が長くなるほど復職が難しくなりがちであることも事実です。
近年の医師・薬剤師の有効求人倍率は、平成31年2月時点では4.75倍でしたが、令和2年3月時点で3.34倍、令和3年1月時点で2.11倍と年々下降しており、明らかに売り手市場だった数年前とくらべて就職が難しくなっています。(出典:e-Stat)
また、ブランクが長くなればなるほど、在職時の知識を忘れてしまうことや、法律や調剤報酬が改定されているなど、ブランク期間中の業界の流れや動きのキャッチアップは大変になるでしょう。
このため、復職に向けてご自身で勉強をすることはもちろん、研修が充実している職場を選ぶなど、仕事探しにおいて感覚を早く取り戻すことに焦点を当てながら動くことが重要です。
【注意】薬局は薬局数に対して薬剤数が多く復職しにくいことも
女性薬剤師がブランク明けで復帰する際に多く挙げられる職場は調剤薬局ですが、転職活動時に、薬局への復職がしにくいと感じることもあるかもしれません。
これは、処方箋受取率の増加に伴って、薬局数と薬局に従事する薬剤師数が年々増加傾向であるためで、平成30年時点で、薬局数に対して必要な薬剤師数が満たされているからです。(参考:厚生労働省|薬剤師に関する基礎資料)
ただ、職場や地域によっては人手不足の薬局はありますし、逆に薬剤師数が多いことで、1人当たりの処方箋枚数が少なく、余裕をもって仕事ができる職場も一部存在します。
このため、希望する転職先の職場環境を、事前にしっかりと確認しておくことがおすすめです。
まずパート・アルバイトとして復職することもおすすめ
10年以上のブランクがあるなど、「仕事についていけるか不安…」という方は、まずパートやアルバイトとして働くこともおすすめです。
復職直後は、長時間労働自体が体の負担となることもあるため、まずはパートなどで短時間勤務をし、慣れてきた頃に正社員としての勤務を検討することも良いでしょう。
尚、復職する際に派遣を選ぶことはおすすめしません。派遣はパートやアルバイトとくらべて時給が高い分、即戦力での活躍を求められるからです。
2.ブランクが長くなるほど復帰が難しくなる5つの理由
復職しやすいと言われている薬剤師ですが、ブランクが長くなるほど復帰がしにくくなるのも事実です。その理由として、以下の5つが挙げられます。
- 2-1.現役時代の知識を忘れてしまう
- 2-2.ブランクの間に登場した新薬を学ばなくてはならない
- 2-3.法改定に追いつくのに苦労する
- 2-4.薬の用法用量を思い出す必要がある
- 2-5.併用禁忌薬が改定されている
順番に見ていきましょう。
2-1.現役時代の知識を忘れてしまう
理由の1つ目は、ブランクが長くなるほど、現役時代の知識を忘れてしまうことです。
薬の名前に聞き覚えはあっても、具体的な副作用や、必要な注意点など、細かい点は抜けてしまいがちであり、業務に支障が出やすくなってしまいます。このため、ブランク期間が長ければ長いほど、復職前の勉強が重要となるのです。
また、就職後にすぐに仕事から離れてしまった場合など、ブランク前の実務経験が少ないほど、復帰のためのハードルは上がってしまいます。復帰のためには、多くの知識を初めから覚え直すつもりでいた方が良いかもしれません。
2-2.ブランクの間に登場した新薬を学ばなくてはならない
理由の2つ目として、ブランク期間中に登場した新薬を学ばなくてはならないことが挙げられます。
国内では、毎年約100種類前後の医薬品が新薬として承認されています。ブランク期間の長さに比例して、新薬の数も増えるため、これをまとめて覚えることは大変なことです。
少なくとも、復職先で採用されている薬については把握しておく必要があります。特に、これまでと作用機序が異なる薬が発売されていることもあるため、ブランクが長いほどこれらの作用を含めてまとめて覚えることに苦労する可能性があるでしょう。
2-3.法改定に追いつくのに苦労する
理由の3つ目として、法改正に追い付くのに苦労する点が挙げられます。
調剤報酬は、2年に1回改訂されていますが、改定内容によっては薬剤師の業務内容も大きく変わります。
2016年の調剤報酬の改定例:お薬手帳持参による患者負担額の変化
- 改定前:お薬手帳を持参すると患者の負担金が高くなる
- 改定後:お薬手帳を持参した場合に一定の条件を満たすと、患者の負担金が安くなる
上記のような、真逆の改定が実施されることもあり、多くの薬剤師さんが対応に追われました。
他にも、調剤報酬の加算が取れる要件が変わることも多いため、復職を希望する薬剤師さんは、ブランクの期間中に以前の調剤報酬からどのように変わっているのかをしっかりと把握しておく必要があります。
2-4.薬の用法用量を思い出す必要がある
理由の4つ目としては、薬の用法用量を思い出す必要があることです。
疾患によって用法用量が異なる薬は現役の薬剤師でも間違えやすく、かつブランク期間が長くなるほど忘れてしまう項目と言えます。
基本的に処方箋に記載されている内容を元に考えれば問題はありませんが、まれに医師の勘違いなどで記載ミスもあるため、しっかりとチェックする必要があるのです。
見落としてしまうと患者の健康被害につながる可能性もあるため、復職の際には事前に勉強をするなどの対策が必要と言えるでしょう。
2-5.併用禁忌薬が改定されている
最後の理由として、併用禁忌薬が改定されていることが挙げられます。
薬剤師としては、併用禁忌薬や、併用注意の薬についても覚えておく必要がありますが、これらの項目が改定や追加、削除がされることは多いです。
知識がなければ併用薬にまで意識が回らず、見逃してしまう薬剤師もいますが、それにより患者に健康被害が発生すると、大きな問題になってしまいます。
ブランク期間が長くなるほど、覚えるべき項目が増え大変ではありますが、復職したいのであれば、ご自身が働く職場で採用されている薬の併用禁忌、併用注意の項目は事前に把握しておきましょう。
3.ブランクがある薬剤師がスムーズに復帰するためにやっておきたい勉強法4選
ブランクがある薬剤師がスムーズに職場復帰するためには、事前の勉強が欠かせません。この章では、ブランクのある薬剤師が職場復帰する前にやっておきたい勉強法をお伝えします。
ぜひご覧ください。
3-1.インターネットを活用する
一番取りかかりやすい勉強法として、インターネットを活用することが挙げられます。具体的には、以下の3サイトがおすすめです。
「くすりのしおり」は、くすりの適正使用協議会が公開している薬の情報サイトで、患者さんと医療関係者の双方に向けて作成されている点が特徴です。
処方薬の説明に関する基本的な内容が、簡潔でわかりやすく解説されているため、サイトを見ながら服薬指導のイメージをしておくこともおすすめです。
また、「PMDAの添付文書検索ページ」や「JAPICの添付文書検索ページ」などの、業務で見ることが多いページも、事前に目を通しておきましょう。
添付文書読んで新薬に関する情報収集をしながら、企業の医療関係者向けページも確認しておくと理解が深まるでしょう。
3-2.e-ラーニングを活用する
eラーニングを活用することもおすすめの勉強法の一つです。おすすめのeラーニングは、以下の3つです。
これらのeラーニングでは、各種疾患や治療、在宅医療、実務マネジメントなど、薬剤師として基本的な内容の講座を受講することができます。
聞いているだけでも、学生時代や前職で学んだ内容を思い出すのに役立つでしょう。また、研修認定薬剤師の取得にも対応しており、会社によっては費用を負担してくれるケースもあります。
パソコンがなくてもスマートフォンから手軽に受講できるため、育児などの隙間時間などを使って勉強したい人にもおすすめの勉強法です。
3-3.勉強会に参加する
勉強会に参加することも、おすすめです。
日本薬剤師研修センターのホームページには多くの勉強会情報が掲載されていますので、気になるものに参加してみると良いでしょう。
また、その他の勉強会として、地域の薬剤師会が主催するものや、医療メーカー、ドラッグストア、病院など、多くの企業や病院で勉強会が開催されています。
最近ではオンラインで受講できるものや、復職後に職場で受けられる勉強会もあるため、日頃からチェックしておくことがおすすめです。
3-4.雑誌や本で勉強する
最後のおすすめ勉強法は、雑誌や本で勉強することです。以下に紹介する「日経ドラッグインフォメーション」「薬の相互作用としくみ」の2冊を押さえておくと良いでしょう。
日経ドラッグインフォメーション
「日経ドラッグインフォメーション」は薬局薬剤師向けの情報誌で、多くの薬剤師にとっておなじみの雑誌と言えるでしょう。
医療業界や薬剤関連の最新情報が掲載されており、業界の動きの把握や、診療報酬改定や新薬、最新の治療法などについて学びやすい1冊です。
薬の相互作用としくみ
「薬の相互作用としくみ」は、この1冊で薬の相互作用について十分に学ぶことができます。
相互作用を起こす薬の組み合わせが一覧となっていることに加え、その仕組みや患者への対応方法まで書かれており、患者へ説明する際の具体的なイメージが湧きやすいでしょう。
復職後の実務で併用禁忌薬を誤って渡さないよう、事前に目を通しておくことがおすすめです。
4.ブランクがある薬剤師におすすめの職場3選
この章では、ブランクがある薬剤師さんにおすすめの職場を紹介します。復職希望者を多く受け入れている職場や、復職後に働きやすいという観点で選出しました。
早速見ていきましょう。
4-1.調剤薬局
調剤薬局は、ブランクがある薬剤師さんにおすすめする職場です。薬剤師の職場として数が多く、求人数が多いため、ご自身に合った職場を選びやすい点が大きな特徴と言えます。
社会人となって一度は調剤に携わったことがある人なら、転職は成功しやすいですが、復職後すぐに活躍できるかどうかは事前の勉強量とスキル次第です。
このため、ブランク期間が長く復職自体を不安を感じる方は、職場の忙しさの程度を事前に確認し、薬剤師の人数が多いなどそれほど忙しくない職場を選ぶようにすると、安心して仕事がしやすくなるでしょう。
4-2.ドラッグストア
ドラッグストアは、未経験OK、ブランクOKの求人が多く、かつ調剤薬局に次いで求人数が多いため、復職がしやすい職場の一つです。
特に大手ドラッグストアチェーンなどは研修制度が充実している会社も多く、働きながら知識をつけていきたいという方にもおすすめと言えます。
しかし、ドラッグストアで働く場合、調剤以外のOTC医薬品をはじめとする日用品の知識を身に付けるなど、多岐に渡る業務に対応しなくてはなりません。
このため、調剤業務のみを行いたい方は、調剤薬局併設型かつ部署として独立しているドラッグストアを選ぶようにしましょう。
また、ドラッグストアは年中無休で遅くまで営業しているお店もあるため、家庭と両立したい方は、シフトの希望は通りやすいのか、休みはしっかり取れるのかを事前に確認することがおすすめです。
4-3.慢性期や特定の疾患に特化した病院
慢性期病院や特定の疾患に特化した病院も、ブランクからの復職におすすめする職場です。
これらの病院は、即戦力やスピード感を求められる急性期病院などと比べて、落ち着いて仕事をしやすい、調剤する薬の種類がある程度決まっているなどの特徴があります。
このためスムーズに職場復帰しやすい点は大きなメリットであるものの、調剤薬局やドラッグストアと比べると求人数は少なめであり、そもそも求人を見つけにくいかもしれません。
また、入職後の研修制度のほとんどが新卒者のみ対象である場合も多く、ご自身でブランク期間中の知識のキャッチアップをする努力が必要です。
5.ブランクがある薬剤師の職場選びのポイント
ブランクがある薬剤師が職場復帰する際の職場選びには、ポイントがあります。以下5ポイントを押さることで、スムーズな職場復帰がしやすくなるでしょう。
ぜひ参考にしてみてください。
5-1.前職と同じ分野や職種を選ぶ
最初のポイントは、前職と同じ分野や職種を選ぶことです。
ブランクがある薬剤師の場合、復職時にキャッチアップする情報が多いため、勤務先が前職と同じ分野や職種であることで、前職での感覚が戻りやすく、かつ情報収集もしやすくなります。
元々調剤薬局で働いていた人がドラッグストアなどの別の分野で復職をすると、以前の経験が活かせないだけでなく、仕事の感覚を取り戻すことにも時間がかかるでしょう。
このため、以前の職場が薬局であれば、薬局を選ぶことに加え、診療科も同じ職場を選ぶなど、前職の職場と近い環境を選ぶほど、よりスムーズに復職しやすくなります。
5-2.頼れるベテラン薬剤師がいる
頼れるベテラン薬剤師がいることも、ブランクから復帰する薬剤師の職場選びのポイントです。
ブランク明け直後は、多くの薬剤師さんが新薬に関する知識、使い方が分からず苦労しやすい時期です。新しい薬の使い方が分からなかったり、処方意図が読めなかったりと、疑問点も多く出てくるでしょう。
このため、疑問を感じたときにすぐに相談ができるベテラン薬剤師がいると安心です。薬剤師の仕事は、臨機応変な対応や素早い作業が求められる職場も多いため、ベテランが多い職場を選ぶことで、ストレスが少ない状態で仕事をしやすくなります。
5-3.ママ薬剤師が実際に働いている
ママ薬剤師が実際に働いている職場を選ぶことも、ポイントの一つです。
子育てをしながら復職をしたいと考えている薬剤師さんは、同じように子供を持っているママ薬剤師が働いているかどうかを事前に確認しておきましょう。
ママ薬剤師を受け入れている職場であれば、子供が熱を出した際の急な早退や休日の取得などに対して、全体的に寛容な職場が多いという特徴があります。
また、子供がいる人同士でコミュニケーションも取りやすいため、「子供がいながら仕事をしていて周りに迷惑ではないか」というストレスを感じにくいといえます。
5-4. 1人当たりの処方箋枚数が少ない
1人当たりの処方箋枚数が少ない職場も、ブランクから復職する際におすすめの職場と言えます。
調剤薬局などは、職場によって1人当たりの処方箋枚数に差が大きく、1人が対応する処方箋枚数が多ければ多いほど、忙しいうえにプレッシャーを感じやすくなってしまいます。
また、人数が最低限しかいない職場の場合、教えてもらう時間が確保できない、即戦力として期待されてしまい辛い思いをするなどもあり得るでしょう。
不安を抱えながら仕事をすると、焦ってしまいミスに繋がりやすくなります。このため、処方箋枚数とスタッフの人数を確認し、1人当たりの処方箋枚数を少ない職場を選ぶことがおすすめです。
5-5.教育制度が整っている
教育制度が整っている職場を選ぶことも、復職したい薬剤師の職場選びのポイントの一つです。
中途入社の薬剤師の場合、新卒薬剤師とは異なり、研修が用意されてないことがほとんどですが、中規模~全国チェーンの大規模薬局や、一部のドラッグストアでは、研修を用意しているところもあります。
ブランクがある場合、入社前にご自身での勉強は必須と言えますが、このような職場を選ぶことで、即戦力としてよりスムーズに復帰がしやすくなるでしょう。
薬剤師専用の転職サイトに相談することもおすすめ
これらの職場選びのポイントは、求人情報だけでは分からないことも多いため、『薬キャリエージェント』や『ファルマスタッフ』などの薬剤師専用の転職サイトのコンサルタントに相談することもおすすめです。
薬剤師専用のサイトを利用することで、自身の状況に合わせた求人を紹介してもらえたり、薬剤師転職に特化したフォローを受けられたりと、転職活動成功に近づきやすくなります。
また、『薬剤師500人が選ぶ転職サイトおすすめ比較!口コミ評判&求人数ランキング』では、当サイトが独自に取得したアンケートから、利用者満足度の高い転職サイトを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
さいごに
ブランクがある薬剤師が復職する際のおすすめ勉強法や、職場選びのポイントについて解説しました。
薬剤師は復職しやすい業種ですが、ブランクが長くなるほど復帰が難しくなるのも事実です。
復職時の転職活動に少しでも不安を感じているのであれば、『薬キャリエージェント』や『ファルマスタッフ』などの薬剤師専用の転職サイトにぜひ相談してみてください。
この記事を通じて、あなたが最高の復職をされることを祈っています。
現役の転職コンサルタント集団。大手人材会社に在籍しているメンバーが多いため、執筆内容に制約がかからないように『匿名性』とし、裏事情やノウハウを包み隠さずにご紹介しています。