「あすから出社するな!」と言われたら|退職届を書く前に弁護士に相談を

企業に所属して仕事をする上で会社とのトラブルは避けたいですが、もしも当事者になってしまったら・・・。個人では判断の難しい事案について、労働問題に詳しい弁護士法人サリュの山田洋斗弁護士、國田修平弁護士に教えていただきます。

山田洋斗弁護士

山田洋斗弁護士

千葉県弁護士会所属。日本プロ野球選手会公認選手代理人。主な取扱分野は、交通事故、労働問題、相続問題、離婚・男女問題。千葉県出身。明治大学法科大学院卒。趣味は野球と読書、好きな言葉は「共感、共鳴、共闘」

國田修平弁護士

國田修平弁護士

福岡県弁護士会所属。法律相談センター運営委員会、労働法制委員会など公職に就きつつ、労働問題や交通事故、消費や被害、医療被害から犯罪・刑事事件まで幅広く取り扱う。愛媛県新居浜市出身。應義塾大学大学院法務研究科卒。好きな言葉は、「耐えて春」。

今回のテーマは、【自己都合退職に見せかけた不当解雇】です。

勤務態度を理由に残業代や給与を未払いする会社から、「辞めろ」と言われ退職届を出してしまったある男性のケースです。先に結論を言うと、自己都合退職を促された場合には、絶対に自己判断で退職届を出してはいけません!

なぜでしょうか。詳しく伺ってみましょう。

後半にも「知っててトクする労働に関する法律情報」がありますので、ぜひ最後までお読みください。

(聞き手:北川聖恵、フリーランスライター。毎日新聞記者、海外の出版社での編集を経てフリーに。『日経クロストレンド』『日経クロスウーマン』『VERY』を始めとした多様な媒体でビジネス、教育など幅広い分野でのインタビュー記事を手掛ける)

1.実際にあった労働にまつわるこわ~い話:不当解雇

ケーススタディ1

休憩時間の長さを理由に自己都合退職を勧められてしまったら・・・

【背景】
証拠がないのに「勤務時間内の休憩が長すぎる」として、本来受け取れるはずの残業代や給与を会社が支払わなかった。

さらに、「もう会社に来るな」と言われたり、自己都合退職を勧められたりしたため、しばらく欠勤したのちに退職届を提出して受理された。

【争点】

  • 自己都合退職ではなく「解雇」であることを認めてもらい、それを無効にしたい
  • 未払い分の残業代と給与を支払ってほしい

知っておきたい法律用語(詳しくは本文中に説明)

  • 労働審判手続
  • 解雇通知書
  • 自己都合退職、会社都合退職
  • 保全処分
  • 地位確認

1-1.休憩時間は証拠のないブラックボックス

北川
北川
今回のケーススタディは、実際に読者が経験したケースです。

「喫煙を含む休憩時間の長さ」が会社側から問題視されていたということです。

なるほど。

 

相談者としては、会社側の指摘に納得していないということですね。

山田洋斗弁護士(以下、山田弁護士)
山田洋斗弁護士
(以下、山田弁護士)
北川
北川
はい。

 

「長いときには2時間も休憩していた」と指摘されたのですが、相談者としては実態に即しておらず全く納得していませんでした。

 

しかし会社としては、勤務時間が短かったという理由で残業の未払いだけでなく、給与の減額も行っていました。

以前から何度も注意があったのでしょうか。
山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
いえ、在籍期間は長期にわたるのですが、
これまで注意されてきたことなどはなかったそうです。
では、会社側は休憩時間の実態は把握していたのでしょうか。
山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
いえ、タイムカードは出社と帰社のタイミングでしか記録されていなかったため、実際の休憩時間は分かりませんでした

 

ですから、結局は水掛け論になってしまったそうです。

なるほど。

 

ただ、こういった記録方法の会社がほとんどだと思うので、休憩時間や残業時間というのは証拠のない世界となってしまい、実は争点になりやすいのです。

山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
そうなのですか。
リモートワークの導入でますます休憩時間の把握は困難になりますから、労働者の立場としても気にしておきたいポイントですね。

 

休憩時間や残業代について、労働者側がいわれのない帰責事由を回避するために、取りうる手段はありますか?

 

可能であれば休憩時間にもタイムカードに記録する、などでしょうか?

おっしゃる通り、タイムカードなど休憩時間と就労時間を明確に区別できる証拠を確保することが重要です。

 

本人のメモでも、一応の証拠にはなりますが、会社を通していないものは証拠としての価値が低いので、タイムカード、出勤簿など会社に提出することを前提にしている書類に休憩時間が記載されているといいです。

 

リモートワークの場合ですと、休憩時間に入ったことを報告したグループチャット(上司が閲覧できるもの)のデータ、スクリーンショットなども、有効です。

山田弁護士
山田弁護士

北川
北川
いわれのない疑いをかけられないためには、面倒でも記録を残すことが大切ですね。

休憩時間の記録も忘れずに!

1-2.自己都合退職では失業保険の受給が遅くなる

北川
北川
今回のケースでは、「自己都合退職ではなく解雇とし、それを無効にしたい」「未払いの残業代減額された分の給与を支払ってほしい」という2つの争点がありました。

 

相談者は結局、労働審判手続きを経て解決金として100万円を手にしたということでした。

 

それぞれの争点において、一般的にはどのような手続きがなされるのでしょうか。

今回は、労働審判手続での審理となったということですが、妥当な手続きだったと思います。

 

「労働審判手続」とは、以下のような法律手続です。

山田弁護士
山田弁護士

<労働審判手続>

解雇や給料の不払など個々の労働者と事業主との間の労働関係のトラブルを、その実情に即して迅速、適正かつ実効的に解決するための調停手続のこと。通常、労働審判官(裁判官)と労働審判員2人、原告および原告代理人、被告および被告代理人が出席して、提出資料に基づき話し合いによる解決を目指す。

原則として3回で終結し、調停による和解に至らない場合は審判が下される。

審判に不服がある場合は訴訟手続きに移行する。

【労働審判手続のイメージ】

解雇や未払い金などの労働にまつわるトラブルが発生した場合、弁護士などによって地方裁判所に労働審判の申立てを行います(引用:裁判所

労働審判は労働審判官1人、労働審判員2人立ち合いのもと、原告と被告が出席します。原則3回で終結しますが、「調停」に至らなければ「審判」が下され、不服の場合は訴訟手続きに移行します(引用:裁判所

通常は、原則3回目の期日で終結します。
山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
今回の相談者も3回目で終結したのですが、およそ3~4カ月かかったそうです。
通常もそれくらいの期間を要します。
山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
収入が断たれた後に数カ月もかかり、生活費などの工面に苦労したそうです。

 

通常、雇用保険に加入していれば退職後は失業保険を受け取ることになりますが、受給までに時間がかかったとのことでした。

そうですね。
自己都合退職(労働者自身の都合により退職すること、いわゆる自己都合退職)の場合、会社都合退職(解雇や退職勧奨など会社側の都合により労働者との雇用契約を終了すること)よりも、受給までに時間がかかります。
山田弁護士
山田弁護士

失業保険の申請には「雇用保険被保険者証」が必要

北川
北川
そうなのですね。

 

失業保険以外にも、係争中の収入に対する救済措置などはありますか?

 

そもそも悪質な事業主の場合は雇用保険に加入しておらず失業保険を受け取れない、といったパターンもあると思います。

徹底的に争うことが前提とはなりますが、解雇が不当であり社員としての地位があることを求める訴えを起こし(地位確認)、解雇期間中の給与を支払ってもらう「保全処分」が認められる場合もあります。
國田修平弁護士
國田修平弁護士
北川
北川
保全処分が認められるために、労働者側ができることはありますか?
会社から解雇の意向を伝えられたり、自己都合退職を促されたりした時点で、速やかに「今後も働く意思がある」ことを示す必要があります。

 

時間が経てば経つほど「無断欠勤をしている」とみなされて、新たな解雇理由を作り上げられてしまう恐れがあるからです。

國田弁護士
國田弁護士
北川
北川
なるほど。口頭だけでは不十分でしょうか。
ええ。結局、水掛け論になってしまいますので、内容証明などの文面にして”証拠”を作成しなければなりません。
國田弁護士
國田弁護士
北川
北川
早い段階で弁護士事務所の無料相談などを活用して、
専門家に相談することが必要ですね。

困った時にはすぐに専門家に相談を。無料相談を実施する弁護士事務所がおすすめ

1-3.不本意な辞職を求められた場合は「解雇通知書」をもらうべし

北川
北川
今回のケースでは、すでに退職した後の相談でしたが、「このタイミングで相談するべきだった」というポイントはありますか?
会社から欠勤や退職を促された時点で、速やかに相談するべきだったと思います。

退職後に「自己都合退職ではなく、不当解雇ということにしてほしい」というのは難しいでしょうね。

 

退職前であれば國田弁護士が話したように、解雇の無効性を主張する地位確認が認められた可能性があります。

山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
会社側から自己都合退職を強く求められた場合に、つい言われるがまま退職届を書いてしまったそうです。

 

そういうケースは多いと思います。

おっしゃる通りですが、本心ではない退職届は絶対に書いてはいけません

 

「もう来るな」と言われたり、辞職を促されたりした場合はまず、解雇理由を示した証明書をもらうようにしてください。

 

「解雇通知書」などが当てはまります。

 

企業側には解雇通知書を求められれれば、速やかに提出する義務が労働基準法で定められています。

 

また、正式な書面でなくても録音でもかまいませんので、会社側から何を根拠に解雇を言い渡されたのかが明らかになる証拠を準備してください。

山田弁護士
山田弁護士

辞職を求められたら「解雇通知書」を請求すべし

北川
北川
会社には提出の義務があるということを知っていれば、臆せず請求できますね。

 

それでも難しい場合は、先に弁護士などの専門家に相談するほうがよいですね。

はい。

 

そもそも解雇理由の立証責任は会社側にあります。

 

さらに、その理由に対して弁明の機会が与えられるべきとされています。

 

そのため、きちんと理由を説明してもらえなかったり、こちら側から説明する機会がないまま辞職を促されたりした場合は会社側に非がありますので、ぜひ速やかに相談していただくことをお勧めします。

 

弊社でも無料相談を行っていますので、気軽にお問い合わせください。

 

ちなみにですが、弁明の機会を与えられた場合も、会話の録音をしておくほうがよいでしょう。

國田弁護士
國田弁護士

ポイント!

  • 本心でない「退職届」を書く前に「解雇通知書」をもらうべし!
  • 辞職を促されたらすぐに弁護士などの専門家に相談すべし!

2.知ってるとトクする!労働にまつわる法律知識

ここでは、知っておいたほうがよい「労働にまつわる法律知識」をご紹介します。

2-1.民間の退職代行を利用するときの落とし穴

得られるはずだった権利やお金を受け取れない可能性も!

「退職代行を使いたい」と思ったときは、まずは弁護士などの専門家に相談!

北川
北川
本心から「会社を辞めたい」と思ったときに、退職代行を利用する人も増えています。

 

民間の業者もたくさんありますが、弁護士事務所がおこなう正規の退職代行手続きではなく、民間業者を利用する際に注意するべきポイントはありますか?

実際にあったケースなのですが、希望に反した配置転換(異動)を理由に退職代行業者を利用して辞めた後に、「あの配置転換は有効だったのか」と弁護士に相談してきた人がいます。

 

辞める前であれば有効性の有無を判断でき、無効であれば異動せずに働き続けられたかもしれません。

山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
覆水盆に返らずですね。
どうして辞めたいのか、その理由によっては法的に解決できるものがあります。

 

ほかにも未払いの残業代や賃金がある可能性もあるので、退職代行を使いたいと思った場合はまず、無料相談を活用して弁護士に相談した方がいいと思います。

山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
実際に依頼する場合はどれくらいの費用がかかりますか。
事務所によってさまざまですが、5万円程度が相場ですね。

 

ちなみに、サリュでは4万円で引き受けています。

 

ただ、相談したからといって必ず依頼しなければいけないということはないので、ご自身の受け取るべき権利や金銭の確認のためにも、ぜひ無料相談を活用していただきたいです。

國田弁護士
國田弁護士

2-2.退職の意思表示は2週間前でOK

就業規則に書かれた「2カ月前」に縛られなくても大丈夫

退職の意思表示は2週間前までで大丈夫!

北川
北川
退職時のお悩みポイントとして、退職意思表示のタイミングがあります。

 

就業規則には、1~2カ月前の意思表示を求めるものが多いですが、「退職意向を伝えた後も月単位で働き続けなければならない」という状況にストレスを感じて、退職代行を検討する場合もあるようです。

長いところでは「半年前までに予告しなければならない」という会社もありました。

 

実は、民法では退職時の意思表示は2週間前までにすれば良いことになっています。

 

民法は就業規則に勝るため、就業規則が絶対だとは思わなくても大丈夫です。

 

とはいえ、この論点についてまだ最高裁判例がないため、「1カ月前まで」という比較的短期のものの場合は争点となりえますが、2カ月以上の場合はほぼ民法が適用されると考えていいでしょう。

國田弁護士
國田弁護士
北川
北川
2週間と半年では心理的負担は大きく違ってきますね。

ぜひ覚えておいてほしい論点です。

3.弁護士法人サリュはどんな事務所?

いざ「弁護士に相談したい」と思っても、たくさんある事務所のなかからどう選べいいのか悩んでしまいますよね。

今回ご協力いただいた、「弁護士法人サリュ」とはどんな法律事務所なのでしょうか。

代表西村 学弁護士
取扱業務労働問題、交通事故、債務整理、B型肝炎、マンション管理、相続問題、離婚・男女問題、債権回収、犯罪・刑事事件、医療問題、消費や被害、犯罪被害者支援、不動産トラブル、行政事件、企業法務・顧問弁護士
全国の事務所大宮、千葉、銀座、横浜、静岡、名古屋、大阪、神戸、萩・長門、福岡
所属弁護士西村 学、谷 清司、平岡 将人、籔之内 寛、馬屋原 達矢、梅澤 匠、松葉 想、栗山 裕平、都築 絢一、山田 洋斗、西内 勇介、中山 碩、國田 修平、森 剛士、河村 和貴、木村 高康、大谷 耀
リーガルスタッフ56人
無料相談窓口0120-181-398

弁護士法人サリュ

北川
北川
弁護士法人サリュのホームページでは、弁護士とリーガルスタッフの自己紹介文に必ず「過去の人生で苦労したこと」が記載されているのが特徴的ですね。
「あなたの大切な人生を諦めないでほしい」という弊社の理念が表れていると思います。

サリュは弁護士もリーガルスタッフも、「法律が絡むようなトラブルが起きて一度つまずいたとしても、相談者様がまた前を向いていけるお手伝いをしたい」と考えています。

 

そのため、業界の中ではかなり先駆けて無料相談を実施しております。

 

先ほどもお伝えしましたが、退職代行代も相場より低い価格で設定したり、残業未払いについては着手金は不要で成功報酬の2割のみをいただくなど、より多くの方にご利用いただける料金設定になっています。

山田弁護士
山田弁護士
北川
北川
リーガルスタッフの多さも魅力ですね。
特に労働問題では、資料の数が膨大になります。

 

マンパワーのある事務所はその点においても利点がありますね。

 

また、相談者様ごとに必ずスタッフが専属で担当させていただきますので、「すぐに連絡したいのに弁護士と連絡がとれない」といった不安を抱くことなく、より確実な戦略を立てることが可能です。

國田弁護士
國田弁護士
北川
北川
サポート体制が万全で安心感が大きいですね。

 

労働問題で不安のある方は、まずは気軽に電話相談をしてみてはいかがでしょうか。