「漢方薬剤師になるには、どうしたらよい?」
「どうすればなれるのだろう…?」
と考えていませんか。
漢方薬剤師になるために、必須の資格はありません。
ただ、漢方薬剤師として仕事をする上では、漢方薬に関する深い知識が求められるため、漢方薬・生薬認定薬剤師や漢方アドバイザーの資格を取得する、漢方に関する勉強会に参加することがおすすめです。
そこでこの記事では、元薬剤師で転職コンサルタントの私が、漢方薬剤師になるための方法や、必要なスキルについてお伝えします。
最後まで読めば、漢方薬剤師になるために必要な全てが分かります。
目次
1. 漢方薬剤師とは、カウンセリングを通じて漢方薬や生薬を調剤する薬剤師のこと
漢方薬剤師とは、患者さんへのカウンセリングを通じて、漢方薬や生薬に特化した調剤をおこなう薬剤師のことです。
漢方薬剤師と一般的な調剤薬局薬剤師には、以下のような違いがあります。
漢方薬剤師 | 調剤薬局薬剤師 | |
扱う薬 | 漢方や生薬 | 西洋薬 |
扱う薬の作られ方 | 動植物や鉱物などの天然素材を組み合わせて作られている | 人工的に開発されたもの |
効能 | 1種類の処方でも複数の症状に対して効果がある | 特定の症状や疾患に対し高い効能が期待される |
処方する薬の決め方 | 患者さんへのカウンセリングによって薬剤師が決定 | 医師からの処方箋に基づく |
取り扱う漢方薬の種類 | エキス剤・生薬煎じ薬 | エキス剤(パターン化されたもの) |
漢方薬を使った治療をより効果的にするためには、患者さんへのきめ細やかなカウンセリングが欠かせません。漢方薬剤師は、健康相談を受けながら患者さんの症状や状態を見極め、最適な処方を提案する重要な役割を担っています。
日本国内で承認された漢方薬は294処方、その中で医療保険の適用対象のものは148処方と、漢方薬局では数多くの漢方薬を取り扱っています。その中から最適なものを選ぶために、1人の患者さんへのヒアリングに2時間近くかかってしまうこともあるほどです。
このように、患者さんへ最適な処方をおこなうべく、漢方薬剤師は専門的かつ多くの漢方薬の知識が求められることはもちろん、コミュニケーション力も求められる仕事と言えます。
2.漢方薬剤師になるには大きく3つの方法がある
漢方薬剤師になるには、大きく分けて以下の3つの方法があります。
患者さんへ最適な漢方を処方するためにも、しっかりと漢方薬の知識を学び、漢方薬剤師としてのスキルを高めておくことは重要です。
順番に見ていきましょう。
2-1.漢方薬に関連する資格を取得する
漢方薬剤師になるために、薬剤師国家資格以外の必須資格はありません。しかし前述の通り、漢方薬剤師は漢方薬や生薬に関する多くの知識を求められます。
このため、漢方薬に関連する資格取得を目指すことで、漢方薬剤師として必要な知識を習得することができるため、大変おすすめです。
漢方薬剤師には「漢方薬・生薬認定薬剤師」「漢方アドバイザー」の2種類の資格があります。
漢方薬・生薬認定薬剤師
「漢方薬・生薬認定薬剤師」は、公益財団法人日本薬剤師研修センターによって認定される、認定薬剤師資格です。取得することで、漢方薬や生薬に関する専門的知識を修得し、能力と適性を備えた薬剤師であることが証明されます。
資格を取得するには、以下を満たす必要があります。
- 薬剤師免許(日本)を所持
- 「漢方薬・生薬研修会」を修了
- 試問に合格
※内容:漢方薬と生薬に関する基礎知識/漢方薬の歴史、薬用植物栽培について、漢方処方の注意事項など
資格取得後は、3年ごとに認定証の更新が必要であり、研修や漢方薬・生薬研修会の再受講によって更新に必要な単位を取得します。
漢方薬・生薬認定薬剤師資格に関する詳細は、日本薬剤師研修センターのホームページをご確認ください。
漢方アドバイザー
「漢方アドバイザー」は、日本チェーンドラッグストア協会によって認定される資格です。
薬剤師資格を保有していない人でも養成講座を受けることができ、認定試験の合格者は漢方アドバイザー会員として登録がされます。
資格取得に必要な要件は、以下の通りです。
- 10ヶ月間の通信教育を受講
- 通信教育修了後に行われる認定試験に合格
漢方アドバイザーに関する詳細は、漢方アドバイザー養成講座の詳細ページをご確認ください。
※漢方アドバイザーは、現在新規会員の募集を停止しています。
2-2.漢方薬局や製薬メーカーが開催する勉強会に参加する
漢方薬局や製薬メーカーが開催する勉強会への参加も、漢方薬剤師を目指す人におすすめの方法です。
漢方薬局が開催している勉強会の多くは、初心者向けに開講されています。深い知識を学びたい方は、製薬メーカーや大学で開催される勉強会に参加すると良いでしょう。
勉強会を探すには、漢方薬を取り扱う会社や、日本漢方生薬製剤協会などの漢方薬に関する団体のホームページをチェックしてみることがおすすめです。
2-3.漢方薬・生薬メインに処方をする薬局に勤務する
漢方薬・生薬をメインに処方する薬局に勤務することも、漢方薬剤師になる方法の一つです。
一般的な調剤薬局では取り扱う漢方薬が限定されているため、膨大な漢方薬の知識を身に付けるには時間がかかってしまいます。このため、漢方薬を豊富に取り扱う薬局に勤務することで、働きながら必要な知識を身に付けることができるのです。
実際に仕事をすることで、実践を通じて漢方薬剤師としてのキャリアを積むこともできるでしょう。
薬剤師専用の転職サイトに相談することもおすすめ
漢方薬局などの漢方薬を扱う薬局で働きたい場合、『薬キャリエージェント』や『ファルマスタッフ』などの薬剤師専用の転職サイトのコンサルタントに相談することもおすすめです。
薬剤師専用のサイトを利用することで、自身の希望に合わせた求人を紹介してもらえたり、薬剤師転職に特化したフォローを受けられたりと、転職活動成功に近づきやすくなります。
また、『薬剤師500人が選ぶ転職サイトおすすめ比較!口コミ評判&求人数ランキング』では、当サイトが独自に取得したアンケートから、利用者満足度の高い転職サイトを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
3.漢方薬剤師に必要なスキルや経験
この章では、漢方薬剤師に必要なスキルや経験についてお伝えします。漢方薬剤師特有の知識も必要となるため、ぜひチェックしておきましょう。
順番にご紹介します。
3-1.コミュニケーション能力
一つ目に必要とされるものは、コミュニケーション能力です。
漢方薬剤師は、患者さんから症状や悩みをヒヤリングし、それに合う漢方を処方します。このため、最適な漢方薬を処方するまでの過程において、コミュニケーション力や会話を引き出す力が求められます。
患者さんの状態を正しく聞き取り、理解し、安心して話してもらえるような空気づくりをし、信頼を得ることが重要です。
また、患者さんからのヒヤリングは1時間以上かかることもあるため、話すことが好きな人であれば尚良いでしょう。
3-2.医療用漢方に関する専門的な知識
必要とされるスキルや経験の二つ目は、医療用漢方に関する専門的な知識です。
漢方薬剤師は、医療用漢方に関する専門的な知識が求められる仕事です。このため、医療用漢方の成分に関する効果効能や、どのような患者さんに最適なのかを説明できるだけの知識が必要となります。
まずは身近な医療用漢方薬の知識を身に付けていくことがおすすめです。多くの製薬メーカーから販売されている漢方薬に注目し、パッケージに記載されている内容から情報を得てみると良いでしょう。
3-3.中医学の知識
漢方薬剤師が求められるスキルや知識として、中医学の知識が挙げられます。
中国伝来の漢方は、その論理や概念は中医学がベースとなっているため、「整体観」「弁証論治」「五臓六腑」「八綱分類」「気・血・水」などの西洋医学にはない概念を理解しておく必要があるのです。
中国特有の医学であるため、これまでに薬剤師として学んできた知識とは異なる点が多く、習得に時間がかかるかもしれません。
しかし、だからこそ漢方薬剤師の需要や価値は高く、他の薬剤師との差別化となるのです。
4.漢方薬剤師になるメリット・デメリット
この章では、漢方薬剤師になるメリット・デメリットを紹介します。一般の薬剤師とは異なる点が多い漢方薬剤師には、以下のようなメリット・デメリットが存在します。
メリット | デメリット |
早速見ていきましょう。
漢方薬剤師になるメリット3選
漢方薬剤師になるメリットは「患者さんと近い距離で仕事ができる」「専門性の高い知識が身につく」「描けるキャリアプランが増える」の3点です。
メリット1.患者さんと近い距離で仕事ができる
漢方薬剤師の大きなメリットとして、患者さんと近い距離で仕事ができることが挙げられます。
一般の薬剤師よりも漢方薬剤師は患者さんとの距離が近いことが特徴です。医師の指示に従って処方をおこなう一般の薬剤師とは異なり、漢方薬剤師は、患者さんに対して自らの判断で漢方薬を処方するからです。
患者さんと近い距離で仕事をすることは、より一層の責任が伴いますが、その分大きなやりがいを感じることができるでしょう。
メリット2.専門性の高い知識が身につく
漢方薬剤師になることで、専門性の高い知識が身に付く点は大きなメリットです。
漢方薬は種類が多く、患者さん一人ひとりの症状や体質に合った処方が必要不可欠です。このため、一般の薬剤師は手を出しづらい領域でもあります。
だからこそ、漢方薬剤師としての資格を取得し経験を積むことによって、他の薬剤師とは異なる専門性の高い知識を身に付けられるでしょう。
昨今はセルフメディケーションに対する関心も高まっているため、漢方薬の専門性の高さは今後のに活かせる知識であると言えます。
メリット3.描けるキャリアプランが増える
漢方薬剤師になることで、描けるキャリアプランが増えることは大きなメリットと言えます。
漢方薬剤師としての知識やスキルを磨いておくことで、一般の薬剤師としてのキャリアに加え、漢方薬剤師としてのキャリアも積めるようになるからです。
特に薬剤師の需要は将来的に飽和してくると言われており、薬剤師として生き残るためには、他の薬剤師との差別化は必須であると言えます。
社会的な需要も大きい仕事であるため、高い専門性を身に付けておくことに加えて、先にご紹介した漢方薬剤師の資格を取得しておくとキャリアプランがさらに描きやすくなるでしょう。
漢方薬剤師になるデメリット3選
漢方薬剤師になることは多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
主なデメリットは「求人が少なく、求人も見つけにくい」「他の薬剤師よりも収入が低い傾向がある」「漢方に特化した勉強会が少ない」ことです。ぜひ目を通して見てください。
デメリット1.求人が少なく、見つけにくい
そもそも求人が少なく見つけにくい点は、漢方薬剤師になるうえで大きなデメリットと言えます。
漢方薬を取り扱う薬局は増えてきてはいるものの、一般の調剤薬局とくらべるとその数は少ないです。このため、漢方薬剤師の求人は少なく、それに伴い採用枠も少ないのが現状と言えます。
このため、絶対に漢方薬局で働きたいという方は、先にお話した勉強会に積極的に参加し、漢方薬局で働いている人とつながりを作っておくと良いでしょう。
漢方薬局は個人経営の店舗が多く、独自のつながりで薬剤師を探すことも多いため、薬剤師が必要になった際に声をかけてもらえる可能性があります。
デメリット2.他の薬剤師よりも収入が低い傾向がある
漢方薬剤師のデメリットとして、他の薬剤師よりも収入が低い傾向があることが挙げられます。
漢方薬局は競争率が高いため、高い専門性や特別な知識を身に付けているにも関わらず、給与は薬剤師の平均よりも低めに設定されている場合が多いです。
このため、漢方薬局で働く場合は、収入が下がることを覚悟のうえで転職した方がよいでしょう。また、漢方薬剤師として収入を上げたい場合、店長や役職者を目指す必要があります。
デメリット3.漢方に特化した勉強会が少ない
漢方薬剤師になるうえで、漢方に特化した勉強会が少ないことは大きなデメリットです。
近年、漢方薬のニーズが高まってきてはいるものの、世間的には引き続き西洋医学が中心であり、実態として漢方薬に特化した勉強会は少ないのです。
また、勉強会が開催されていても、開催地が都心のみ、自分のレベルに合っていない、受講料が高額など、最適な勉強会を見つけにくい場合もあります。
このため、勉強会は見つけにくいという前提を持ち、情報をこまめにチェックすると良いでしょう。
さいごに
漢方薬剤師になる方法や必要なスキル、メリットデメリットについて解説しました。
漢方薬剤師はセルフメディケーションの観点で今後求められる職種ではありますが、開催されている勉強会の少なさや求人が見つけにくい点はデメリットであると言えます。
このため、漢方薬剤師についての情報を増やしたい、働きながら知識をつけたいという方は、『薬キャリエージェント』や『ファルマスタッフ』などの薬剤師専用の転職サイトにぜひ相談してみてください。
この記事が漢方薬剤師になるための一助となり、希望のキャリアを実現されることを祈っています。
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